では、調子の悪さを自覚したとき、ITエンジニアはどうすればいいのか。
ITエンジニアという特殊な仕事のために脳が栄養不足になり、ダメージを受けた状態には、それを修復するという意味でサプリメントの摂取が効果的だという。「脳の回復を助けるものの1つが大豆ペプチド。そしてもう1つがDHA(ドコサヘキサエン酸)。人によってはイチョウの葉やセイヨウオトギリソウ(セントジョーンズワート)も効くことがあります。また、卵黄レシチンも重要です」
ITエンジニアには目の疲れを訴える人も多いが、それには「アスタキサンチン、ルチン、ブルーベリーエキス」が効くという。「目が急速に悪くなる人がとても多い。目の疲れが肩のこりにつながることもあります。この3種は視神経の疲れによく効きます」
女性にはホルモンのバランスを整えるという意味で、「イソフラボン、ローヤルゼリー」がお勧め。「ITエンジニアには多いと感じる」生理不順にも効くようだ。
ストレッチも有効だ。「ぜひやるべきです。首を左に20回、右側に20回、回す。これを1日に2〜3回やるだけでもかなり違う。あと、頭のつぼのマッサージもいいですよ。1日何回かやるだけで、積み重ねになり、1カ月たつと違ってきますよ」。首を回すだけなら、ちょっとした休憩時間などに、座ったままで簡単にできるだろう。頭のマッサージも、両手で頭を包み込むようにして気持ち良く感じる個所を押すだけと、手軽にできそうなものだ。
加えて重要なのは「もっと自然に接すること」だという。「家でもオンラインゲームに没頭してしまう人がいるけれど、絶対にやめた方がいい。やはり人間は、自然や人間を相手にしていないと感性の領域が狭くなってしまう」
このように健康上の脅威にさらされるITエンジニアに対して、酒井氏は「ポジティブメンタルヘルスの考え方をライフスタイルに採用すべきだ」とアドバイスする。「メンタルヘルスというとどうしても予防という意味に取られる。そうではなくて、自分をもっともっといい状態にすることを心掛け、ポジティブなことをどんどんやっていかないといけない」。つまり、心身の不調を予防するという考え方をするのではなく、現状を改善し続けていくよう常に心掛けて実行していないと、対策が追いつかないということだ。
酒井先生からひと言・疲れたITエンジニアに効くのは | ||||||||||||||
ITエンジニアに効くサプリメント
ITエンジニアに効くストレッチ、マッサージ
ITエンジニアに必要なのは
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記事の冒頭に挙げたアンケートでは、ITエンジニアに「健康で気になっている点の原因」を聞いている。結果は1位が「運動不足」、2位が「睡眠不足」というものだった。
ITエンジニアの大敵ともいうべきこの2つについて、酒井氏に聞いてみた。
酒井氏は、運動不足が即不健康につながるとは限らないと説明する。「ジムに行って運動している人が健康かといったら、そんなことはない。それよりはどれだけ体が柔らかいかとか、どれだけ周りの世界と調和しているかとか、いわばヨガや太極拳的な観点の方が重要ですよ」
また、「仕事をしている人には睡眠不足は多いが、それで必ず体が悪くなるわけではない」という。ITエンジニアに特徴的なのは、忙しくて睡眠時間が短くなると同時に不眠になりやすいところだそうだ。「仕事が忙しくて疲れ、睡眠時間も短くなっていたら、普通睡眠は深くなるはず。そこで深くならない人が多いのが、どうも問題です。原因はやはり頭を使いすぎているため、興奮や疲労の蓄積が残っているのでは」。よく眠るためには、「足の温浴やアロマなど、リラックスできるものは何でもやっていいと思います」ということだ。
酒井先生からひと言・ 質のいい睡眠が取れなくなったら要注意! | ||
よく眠るためには
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「人類史上初の職業」であるITエンジニア。ITエンジニアを取り巻く状況は厳しいものだが、現在の人間社会には欠くことのできない重要な仕事だ。
脳の狭い範囲を酷使していることを自覚し、サプリメントやストレッチ、自然に接することを意識してその疲れを取り除き、質のいい睡眠を心掛ける。そして「ポジティブメンタルヘルス」という考え方を持っておく。
いきなりすべてを実行するのは難しいかもしれないが、少しずつでも試してみること。それができれば、ITエンジニアを取り巻く健康上の危機も、かなりその姿を変化させるのではないだろうか。
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