ITコンサルタントのイメージをつかむITコンサルタントのイメージをつかむ(1/2 ページ)

» 2007年06月20日 00時00分 公開
[千葉大輔@IT]

 ITエンジニアのキャリアパスの1つである「ITコンサルタント」。2007年に@IT自分戦略研究所とJOB@ITが行った読者調査では、「今後担当したい職務」として14.2%の人がITコンサルタントを挙げている。

 このように次の、あるいはいずれ就きたいキャリアパスとして関心を持つ人が多い職種だが、ひと言で「ITコンサルタント」といっても、果たす役割や業務内容は会社、あるいはプロジェクトにおける立場によって多岐にわたる。一概に「これぞITコンサルタント」ということは難しい。

 そこで今回はコンサルティングファームに話を聞き、ITコンサルタントという仕事について実際はどんな仕事なのか、そこではどういった能力が求められるのか探った。

さまざまな業界の仕事に携われるのが魅力

 まず、最初に話を聞いたのはアクセンチュア シニア・マネジャー 藤山俊宏氏だ。藤山氏は技術力を自らの強みとして、金融業や製造業、官公庁など幅広い業界にわたり、上流工程、つまり顧客の要望を聞き出し、さまざまなシステム導入に関してシステム設計を行っている。

アクセンチュア シニア・マネジャー 藤山俊宏氏 アクセンチュア シニア・マネジャー 藤山俊宏氏

 藤山氏の考える「ITコンサルタント」像は「技術力を得意分野とし、顧客にソリューションを提供する」というものだ。この大枠の定義の中でさまざまな役割が課せられる。藤山氏の場合、主に技術的な観点からプロジェクトに参加することが多いという。

 ITコンサルタントに求められる要件にはどのようなものがあるのだろうか。藤山氏は「顧客のニーズに合ったシステムや技術を選ぶこと」と話す。ともすると、「新しい技術を使えばこんなことができる」といってしまいがちだが、必ずしもそれが顧客に必要かといえばそうではないかもしれない。既存のシステムを刷新してまで新しいシステムを導入する必要があるのか見極める必要がある。「私も技術の押し売りにならないように気を付けています」と藤山氏。また「顧客に共感を持つこと」も仕事をしていくうえで欠かせないという。

 藤山氏は自身の仕事のやりがいや魅力について、次のように話す。

「アクセンチュアでは比較的大規模なシステムの導入案件に携わることができます。自分たちがシステム全体を考え、提案し、実際にそれを作り上げることができるという点にやりがいを感じます。また私の場合、さまざまな業界の仕事に携わる機会があるので、それぞれの業界の違いを見ることができる点も勉強になります」

 現時点でプログラマやSEに就いているITエンジニアが、今後ITコンサルタントを目指すとき、どんなことをポイントに自分の能力を磨いていけばいいのだろうか。「通常業務、例えばプログラミングをするときに、顧客のシステムやビジネスにどういう役割を果たしているのかということを意識すること。また自分の担当している業務以外の何にでも好奇心や興味を抱くこと」と藤山氏は話す。

 自分の担当している業務以外というのは、何もいきなり「経営者の視点」や「IT戦略」といった上段のことに限らない。自分以外の人が担当するプログラムの部分やパッケージの知識、ユーザーが担当する業務などさまざまな部分に興味を持つことが必要だ。藤山氏も「自分が得意とする分野をコアにして、それにプラスする形でいろいろなことを吸収しなければならないと思います」と話す。

 藤山氏は普段チームで仕事をする中で、そのチームメンバー、例えば業務知識が豊富なメンバーやセキュリティ分野に強いメンバーなど、それぞれ自分自身のコアスキルを持つメンバーから得られることは多いという。藤山氏自身は今後インフラ系の知識を深めていきたいという。

 藤山氏にITコンサルタントとして、必要な素養を聞いてみた。すると、上記の好奇心に加え、「理由を突き詰めること」「本質を考えること」を挙げた。ITコンサルタントという職種は、顧客の要望を引き出してそれに対して、最適なソリューションを提供する仕事だ。常にその最適なソリューションについて考えをめぐらすことが求められる。「自分の仕事について何のためにやっている仕事なのかということと、顧客のシステムの中でどういう位置付けにあるのかといった部分について、意識的に自分の考えを持つことが重要です」

ITコンサルタントの価値をどこに見いだすのか

 次に話を聞いたのは、アビームコンサルティング テクノロジーインテグレーション事業部 プリンシパル 高橋誠司氏と金融統括事業部 マネージャー 谷口尚氏だ。

 高橋氏はITコンサルタントという仕事について、次のように話す。「顧客が『こういうシステムが欲しい』という点からプロジェクトを始めるのではなく、顧客の置かれているビジネスの環境や業界、ビジネスプロセスの内容、組織体制をちゃんと把握する。それに対してどういうITの使い方がよいのか含め、いわゆる上流工程や超上流工程という部分から始め、実際にシステムを作るまで支援するというスタイルを取っています」

 ここでポイントとなるのはやはり、顧客が自ら必要なシステムを提示するのではなく、ITコンサルタントが顧客から必要なシステムの要件を引き出すという点だ。谷口氏によると、実際のプロジェクトでも「何が問題となっているのか?」という点からスタートするという。

アビームコンサルティング テクノロジーインテグレーション事業部 プリンシパル 高橋誠司氏 アビームコンサルティング テクノロジーインテグレーション事業部 プリンシパル 高橋誠司氏

 前職ではシステムインテグレータのITエンジニアとして仕事をしていた谷口氏も、この点は「ITコンサルタントとSEのスタンスの違い」として痛感したという。

「前職では、要件というのはクライアントが決めるべきものでした。例えばシステムの提案をするのであれば、RFP(提案依頼書)はきちんとクライアントが作成すべきものという意識がどこかにありました。しかし、ITコンサルタントのプロジェクトへの関わり方はそうではありません。経営者が現状への危機感と、それに対する改革のイメージをもっていても、それをどうやって具体化していくか、それが正しいのかも分からない状況であることが少なくありません。実際のプロジェクト現場でも、『答えがない』ものを『答えをどのようにデザインしていくか』ということをクライアントと一緒に考え、智恵を紡ぎだすのが1番重要な仕事です」

 冒頭に示したように、ITエンジニアの中には自分の次のステップとしてITコンサルタントを希望している人が多い。しかし、プログラマからSE、プロジェクトマネージャというステップと、ITコンサルタントへのステップには異なる部分がある。高橋氏は「仕事の幅が違います。ITエンジニアとしてのキャリアはもちろん生きますが、スタイルを変えてより幅を広げて対応能力を上げいくことがわれわれのバリュー。そのとき、業界の知識や業務の知識を蓄えてそれを武器にしていくことが求められます」。

ITコンサルタントとして働くための3つの能力

 実際にITコンサルタントとして活躍するにはどんな能力が必要になるのだろうか。よくITコンサルタントは地頭がよいという話を聞くが、高橋氏によると「地頭のよさは重要だがそれだけではない」という。では、何が必要なのか。高橋氏は次の3つの項目を挙げた。

 まず1つ目は「SEの知識」。顧客のニーズを引き出した結果、顧客の業務に変化をもたらすためにシステムを使うケースは多い。そのため、ベースとなるエンジニアの力は必要となる。「システム導入を担当するケースでは、上流工程で相談を持ち掛けられたとき、その経験やスキルがあれば、先を見通してリスクをクライアントにお伝えできることがあります。先に手が打てるということを考えるとITの知識やスキルは非常に生きると考えられます」(谷口氏)

アビームコンサルティング 金融統括事業部 マネージャー 谷口尚氏 アビームコンサルティング 金融統括事業部 マネージャー 谷口尚氏

 2つ目は「顧客のビジネスを理解する能力」。ビジネスプロセスや経営環境を理解する能力、あるいはビジネスプロセスや経営環境について、ノウハウを持っていることが挙げられる。「コンサルティングファームの場合、組織として業務のノウハウを蓄積していけます。組織的な知見、それは技術というよりはビジネスの知見ですが、それらを蓄積してITに載せて提供することが私たちの価値だと思います」(高橋氏)

 3つ目は「コミュニケーション能力」。「お客さまの期待を把握すること。お客さまは要件を提示してくれるわけではないし、話の内容だけでなく顧客の置かれているビジネスの状況から本当の期待を感じ取る力、それに対し的確に応えていく力が必要です。また、チームとして顧客と協力することでどれだけ価値が出せるかということも併せて重要です」と高橋氏は話す。数カ月で終わるプロジェクトはそうない。そうした中で中長期的にわたって顧客のビジネスにかかわり、貢献するためには、顧客とチームとして一体になる必要がある。

 さて、ITエンジニアがITコンサルタントを目指す際に何を意識すればよいのだろうか。

 高橋氏は「ITエンジニアの方が取り組んでいる仕事は、いまその方の属している会社のビジネスモデルに従っているわけです。それを一歩目線を離して相対化して考える。例えば転職をしたときに、環境の違いから、なかなか自分のバリューを出しにくいということはあると思います。そんな時に前職までの自分の仕事と、いまの自分の仕事を相対的に見て、『なぜこの仕事をしているんだろう』『この仕事のバリューは何だろう』という『なぜ』『何』の部分を考え続けて仕事をする。これは基本だと思います。コンサルタントに転職しないとしても絶対必要です」と話す。

 一方、谷口氏は「ITエンジニアとして育っていくと、最初は仕様書のとおりにプログラミングするという決められた仕事であり、それがどれだけきちんと作れるかでその人の評価が決まると思います。しかし、ITコンサルタントはもう少し足場が緩い状態で、仕事をしていくケースが多くあります。『どうすればいいんだ』ということに対して、その正否はともかく考え抜くこと、そして何かしら答えを出すことを顧客からは求められています。そうした能動的な姿勢が強く求められる環境です」

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