転職における最初の「難関」が職務経歴書の作成だ。その仕上がりが転職の成功・失敗を分けるといっても過言ではない。この連載では毎回1つの職務経歴書を取り上げ、キャリアコンサルタントのアドバイスに従って改良する。優れた職務経歴書で、自分を企業に売り込め!
転職によって何を実現したいかは、人によって異なります。
これまでの経験を活用してレベルアップを図ろうという人から、今後はキャリアの方向を変えたいという人、さらにはまったく新しい業界に転職したいと考える人まで、目的はそれぞれかと思います。
職務経歴書を添削しながら、目的に沿った書類の作成方法を紹介する本連載。第3回に当たる今回は、システム運用からネットワーク・サーバ関連にキャリアを変更したITエンジニアのケースを題材に、特定分野をアピールするための職務経歴書作成のポイントを解説します。
関谷さん(仮名・27歳)は、中堅システムインテグレータ(SIer)に勤務する運用系のSE。昨年、私が転職のお手伝いをした山下さん(仮名)の紹介で、今回お会いすることになりました。
関谷さんの相談は、「転職活動をうまく進めるには、どうしたらいいのでしょう?」という、ややあいまいなものでした。私はまず、関谷さんのこれまでの転職活動の経緯を聞いてみました。
大学卒業後、新卒で現在の会社に入社して3年目の関谷さんは、3人のメンバーを率いるサブリーダーとして活躍していました。現在の会社は大手システム開発会社の子会社であり、関谷さんはユーザーである銀行に常駐し、サーバの構築から運用・保守・サポート、アプリケーションの修正と、インフラからアプリケーションまで広く業務を行っていました。
入社当時は新しく覚えることばかりで、日々の成長が実感できたそうです。ところが、ひと通りの業務を経験してしまった現在は、毎日すでに知っていることを繰り返し行うだけ。社内には特に将来の目標となるような先輩もいず、モチベーションが落ちてしまっていたそうです。
そんなとき、昨年転職をした元同僚の山下さんと話をする機会があったそうです。いろいろと情報交換をし、何よりも現在、生き生きと活躍している山下さんの姿に衝撃を受けた関谷さんは、自分も転職を意識し始めました。
まず関谷さんは、転職サイトを通じての情報収集を始めました。その結果、興味を持った企業を数社ピックアップ。応募書類である履歴書と職務経歴書の作成を済ませ、5社に書類を提出したのです。
応募から1週間が過ぎ、徐々に企業からの返事が戻ってきました。しかし、どれを見ても不採用の返事ばかり。結局5社すべてから、書類選考で落とされてしまったのです。
不安になった関谷さんは山下さんに相談し、山下さんのアドバイスに従って、私の所属する人材紹介会社を訪れたのでした。それが冒頭の「転職活動をうまく進めるには、どうしたらいいのでしょう?」という質問の背景だったのです。
なぜ、関谷さんの転職活動は「うまく」進まないのでしょう。
分かっているのは、書類選考の段階ですべての企業に落とされていることです。その要因として考えられる点は、下記の2つと予測されます。
1つ目の、応募企業の採用基準と本人のスキルにミスマッチがないかという点については、関谷さんにインタビューを続け、意向を確認しました。
関谷さんは短期目標として、「技術スキルを高めて得意分野を作り、将来はマネージャを目指したい」と考えていることが分かりました。
運用エンジニアである関谷さんには、前述したようにインフラ系の技術もアプリケーション開発経験もあります。今後はインフラ技術に特化したスキルを付けたいと考えていたため、サーバ・ネットワーク関連に強みを持つ中堅クラスのSIerに絞り込んで応募していたそうです。ヒアリングの結果、応募企業については問題がなさそうでした。
次は、応募書類の内容について問題がないかどうかです。図1が関谷さんの提出した職務経歴書です。
(Wordファイルのサンプル)
一見して、内容が薄いことに気付くと思います。また、関谷さんが希望しているインフラ系の職種に必要なアピールもできているとはいいがたいです。関谷さんが書類選考に通らなかった理由は、おそらくこの職務経歴書でしょう。
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