前述の要件をCargo Maven2 Pluginを使って実現するため、Maven2のPOMファイルにプラグインを使うための設定を追加します。ただし、単純に自動デプロイするだけではなく、条件によってデプロイ先を変更できなくてはいけません。デプロイ先に合わせてPOMファイルを書き換えることもできますが、それは得策ではありません。そこで役立つのが「プロファイル」設定です。
「プロファイル」を使うことにより、POMファイルに設定情報のバリエーションを定義でき、「あるプロファイルを有効化したときは、これらの設定を使う」ということができるようになります。
Cargo Maven2 Pluginとプロファイルを設定したPOMファイルをリスト4に示します。「pom.xml」をXMLエディタで開き、直接編集します(太字が追加部分)。
リスト4 POMファイル |
<project xmlns="http://maven.apache.org/POM/4.0.0" |
【1】Cargo Maven2 Pluginの設定
<plugin>要素によりCargo Maven2 Pluginを利用する設定を行います。その中の(A)の部分でデプロイ先サーバの設定を行っています。赤字で「${cargo.tomcat.manager.url}」のように記述した個所は、有効にしたプロファイルによって入る値が変わるようになっています。
【2】プロファイルの設定
<profile>要素によりプロファイルの設定を行います。(B)(C)はそれぞれ2つのプロファイル(「IntegrationTest」と「PerformanceTest」)を定義しています。
例えば、IntegrationTestプロファイルは結合テスト用のプロファイルを設定しており、もしこのプロファイルを有効にした場合には、(A)の「${cargo.tomcat.manager.url}」の個所に「http://itest.example.com:8080/manager」が入ることを意味しています。
では早速、デプロイ実行してみましょう。q4eでは、以下の処理を行います。
[Profile]ビューは、[メニュー]の[ウィンドウ]→[ビューの表示]→[その他]から[Apache Maven]→[Profile]を選択すると表示されます(図7)。ビューにはPOMファイルに定義されているプロファイルの一覧が表示されますので、有効にしたいプロファイルをチェックします。
次に、Cargo Maven2 Pluginの実行です。[Maven2]メニューから[Execute Goal]を実行し、図8のゴール指定画面でゴール名「cargo:deploy」を指定します。
実行すると、WebアプリケーションsamplewebappがTomcatにデプロイされます。実際にデプロイされているかどうかはTomcatのWeb アプリケーションマネージャURLにブラウザからアクセスして確かめてみましょう。アプリケーション一覧にsamplewebappが追加されているはずです(図9)。これで、コンパイル・テスト・パッケージングだけではなくデプロイも、Maven2(q4e)で自動化できるようになりました!
一度デプロイしたものをサーバから削除したい場合には、図8の[Execute Goal]において、ゴール名に「cargo:undeploy」を指定して実行します。また、再デプロイしたい場合は「cargo:deployer-redeploy」を指定します。
q4eでは、有効にしたいプロファイルを[Profile]ビューで指定していますが、q4eを使わずにコマンドラインからMavenコマンドを実行する際にプロファイルを指定したい場合、「-P」オプションを使います。具体的には以下のように実行します。
C:\>mvn -P <プロファイル名> cargo:deploy |
このように、本稿では前後編と2回にわたって、ビルドプロセスを自動化するMavenとそれをEclipse上で利用するためのq4eプラグインを紹介しました。Mavenをうまく使っていただき、皆さんの現場でも自動化による生産性向上を図っていただきたいと思います。
また、今回はシンプルなWebアプリケーションを作成する例でしたが、Maven&q4eを使えば、「Apache Wicket」などのWebフレームワークを使ったプロジェクトもカンタンに始めることができます。
ちなみに、Wicket用のプロジェクトを作成する場合は、Maven2プロジェクト生成ウィザードのarchetype選択の際に、「wicket-archetype-quickstart」を指定します。具体的な方法については「q4eでWicketプロジェクトを開発するデモ動画」をご覧ください。
一般的にフレームワークを使った開発の場合、その準備作業において数多くの依存ライブラリのダウンロードや設定が必要になります。しかし、Maven&q4eを使えばそのようなダウンロードや設定が完了しているプロジェクトを一発で自動生成できます。そのうえ、ビルドプロセスも自動化できているわけですから、素晴らしいですね!
Mavenについては、継続的インテグレーションを実現する「Continuum」との連携など、今回紹介できなかった重要な機能がまだまだあります。
編集部注:継続的インテグレーションついての詳細を知りたい読者は、記事「継続的インテグレーション&テスト環境の構築」をご参照願います。
さらに、Mavenを知るためのお役立ちサイトを以下に紹介しておきますので、ご参考にしていただければ幸いです。
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