富士通ラーニングメディアは7月30日、報道関係者向けの説明会を開催し、人材育成ビジネスの動向と同社の展望について説明した。
代表取締役社長 岡田恭彦氏は同社の研修サービスが定期講習会、定期新人研修ともに伸長していることに触れ、「米国のサブプライムローン問題の影響から、日本の経済もやや弱含みであるといわれているが、そうした中で教育研修費が伸びてくるというのは、経営者の人材育成に対する悩みの表れだと感じている」と説明した。特に、人材の流動性の高さから「3年で辞めてしまう人が多い」という問題がある一方で、「社員の定着率が高い企業も、それはそれで社員を甘やかしているからなのではないかと心配をしているようだ」と話した。実際に伸び率が高い研修内容は、「組み込み」(前年比60%増)、「ヒューマン・ビジネススキル」(32%増)、「IT運用」(31%増)、「プロジェクトマネジメント」(30%増)だという。「純粋に人材不足の組み込み技術者の育成はもちろん、単純なIT構築のスキルではなく、ヒューマンスキルや、広い意味でのマネジメントスキルの需要が伸びている」と岡田氏は解説した。
こうした状況で岡田氏は、「強い会社を作るためには、個人の成長を組織の成長につなげることが必要。そのために、組織的な学びの場の提供が求められる」と同社の人材育成に関するコンセプトを説明。単に教えられた知識ではなく、フロネシス(個別の状況や文脈において、適切な判断や行為ができる実践的知恵)を育成する場作りと、ナレッジの共有が行える組織作りが重要であるとした。
専務執行役員の楠武芳氏は、「(富士通ラーニングメディアを含めた)日本の研修会社や教育ベンダはいままで、『個人の成長』に軸足を置いた研修サービスを提供してきたが、強い個人が育成できたら、自動的に強い組織や企業ができるのか」という問題点を指摘。個人の知を「見える化」し、共有するソリューションを提供していくと説明した。
こうした「個人を成長させる」ことから「個人の知を共有して組織を成長させる」ことへ軸足を移した理由について、岡田氏は「いままでは、個人の研修の結果、その教育投資が組織の成長にどう影響したかが判断しづらいという課題があった。いかに組織の成長につなげるかという領域まで踏み込むことで、企業の人材育成を支援したい」と述べた。
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