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» 2008年08月20日 00時00分 公開

麗しの天才科学者、五十嵐悠紀の「科学って素敵!」【写真】天才プログラマに聞く10の質問(2)(2/3 ページ)

[荒井亜子,@IT]

5.――いまの自分が形成されるうえで最も影響があった出来事は何でしょうか?

五十嵐氏 コンピュータの道に進んだきっかけは、父だと思います。父が自動車会社のCADシステム設計に携わっていて、小学生のころから家にPCがありました。分からないことは父に聞けば何でも解決するくらい、父は何でもよく知っていて、いつも父の傍らでいろんな話を聞いていました。

 科学館、博物館などに積極的に連れて行ってもらいました。楽しみながら勉強できたのは父をはじめ家族のおかげだと思っています。自動車会社のお祭りに連れて行ってもらい、車の設計をするデザインプロセスを見せてもらったのをとてもよく覚えています。紙に鉛筆でデッサンをする過程、CADシステムを使ってデザインをする過程、粘土を使って実際の車の形状を作り、細かい部分をへらで整えていく過程、人体モデルを運転席に乗せて行う衝突実験など、ドキドキすることがいっぱいでした。

 祖父母が岡山・大阪に住んでいるため、年に2〜3回は家族で帰省します。その際に、金閣寺、銀閣寺、奈良の大仏など、教科書で出てくるような場所にたくさん連れて行ってもらいました。「教科書を丸暗記する勉強」ではなく、「触れたり体験したことで知らないことを知ることができた」のは、非常にいい経験だったと思います。私の場合、そうした経験が家族の思い出と共にあります。

 こうした経験があって、「勉強する」ということを意識しなくても、勉強すること・学ぶこと・知らないことを知ることがとても好きになれたと思います。

 いまは、子どもたちが親と一緒に「コンピュータって面白い!」「科学って素敵!」と思ってもらえるようなワークショップを行いたい気持ちが強いのですが、これは、家族が私に与えてくれたものだと思います。

6.――将来目指すキャリアは何ですか?

五十嵐氏 私はいままで「プログラマになりたい」と思ったことはありません。私にとってプログラミングは、「研究を表現するもの」だからです。世の中にない便利なものを作り出す、考え出す、という研究の中の一部分にプログラミングがあります。「自分の考えたアイデアがいかに使えるものであるか」「普遍的な法則に基づいているか」を検証するために、私の分野ではソフトウェア化する、すなわち、プログラミングをして動作するところを見せ、実証することが必要となってくるのです。プログラミングとはそのための行為だと思っています。

 アイデアはあるのにプログラミングができなければ、この分野の研究者にはなれない、ということではなく、パワーポイントのアニメーション機能を使ったり、Flash Playerを使ったり、いろいろなことを駆使して、自分のアイデアを他人に伝えられれば良いと思います。「他人にアイデアを伝える手段」が私にとっては「プログラミング」だというわけです。

 プログラミングは好きですが、それは自分のアイデアを実現していく過程が楽しいのであって、人からいわれたことを実装するためだけにプログラミングをするとか、人のコードを読みたい、という気持ちは私にはあまりありません。もちろん、人のコードを読むことは勉強になるので、必要があれば読みますが。

 自分の将来は、いまだによく分かっていません。小さいころは、かっこいいお医者さんに会えば、お医者さんになりたいと思ったり、女性弁護士が活躍するドラマを見ては、弁護士になりたいと思ったり、夢がたくさんありました。ピアノが大好きだったのでピアニストを目指したいと思ったこともあります。

 小さいころに比べるといまは夢がなくなってしまったな、と本当に思います。実現できることが限られてきたという方が正しいのかもしれません。ただ、研究は楽しいです。いまの世の中にないものを自らアイデアを出して作り出せる、ワークショップを行えば、子どもたちが目を輝かせて楽しんでくれる、こんな生活そのものが私の理想なのかもしれません。

 たくさんの子どもたちに囲まれ、教育にかかわりながら自由に研究ができる、という意味では大学の先生になれるといいな、と思ったりもします。

 人生においては収入よりも「好きなことができているかどうか」を重要視していきたいと考えています。生活のために必死になって働くのではなく、自分がやりたいこと、好きなことを楽しくやることができれば、それが一番ぜいたくであり、幸せだと思います(私は一家の大黒柱ではなく、家計を支える側の主婦なので、こういうことがいえるのかもしれませんが)。 

 コンピュータをもっとたくさんの人に好きになってほしいです。コンピュータだから、機械だから、と触るのを毛嫌いしてしまう人はもったいないと思います。例えば、おじいちゃんだからこそ携帯電話でメールをしてほしい。孫、ひ孫世代ともっと連絡が取り合えるかもしれません。私はよく祖父母に手紙を書きますが、やはり友人に携帯電話でメールを送る頻度と比べると少ないです。手軽に通信ができる時代が来たのだから、もっと幅広い世代の人がコンピュータや機械に慣れ親しんでくれればコミュニケーションの幅が広がるのではないかと思います。これまでコンピュータは専門家が専門分野の追及・技術の発展のために使ってきました。しかし、今後はより多くの人が使うようになるでしょう。コンピュータをもっと使いやすく、誰でも嫌悪感なく使えるような画期的なものにし、好きになってくれる子どもやお年寄りが増えるような試みをいろいろと挑戦していけたら、またそういうことに携われたらと思います。

7.――6のために考えている具体的なキャリアの構築方法、キャリアプランはありますか?

五十嵐氏 現在博士課程の学生ですが、博士号を取りたいという目標はあるものの、その後のキャリアプランはまだ漠然としか考えていません。いまは自分にできること、また、自分にしかできないことを探す時間だと思っています。「これはできない」とあきらめるのではなく、まずは何事も挑戦してみる、むしろ挑戦する時間がまだ自分にはあると考えて行動するようにしています。

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