PCから先のネットワークの仕組みのモヤモヤ。入門書を読む前に、もう一度、文系女子とTCP/IPを学ぼう
ある外資系デザイン事務所の日本法人。
人の入れ替わりの激しいこの会社に入ってきたのが芽衣子さんです。
国際色豊かなこの会社のオペレーターとして入ってきましたが、デザインの仕事だけじゃなくて、インターネット関連の仕事も期待されていたようです。
初日なのでまずは人事の人とのお話から始まります。
人事 「……ワークフローに関してはこんな感じです。特に問題ないよね」
芽衣子 「ええ」
人事 「で、面接でも聞いたけど、芽衣子さんってインターネットに詳しいんだよね」
芽衣子 「ええ、ニコ動とかmixiとかバリバリ使いこなしてますよ」
人事 「それ、テレビで聞いたことがあるわ。すごいじゃない、アナタ相当できるようね」
芽衣子 「任せてくださいよ。2ちゃんねるにだって詳しいですから」
芽衣子さんはデザインは苦手ですが、週末ずっと引きこもっていることもあるほど、Webを見るのは得意です。
人事 「よかった。芽衣子さんには社内のネットワークも担当してもらうからね。小さな会社だからアナタみたいなエキスパートならそんなに大変じゃないと思うけど」
芽衣子 「ブログの監視とかですかねえ。炎上って怖いですから」
人事 「それも最近新聞で読んだわ。うちも炎上するのかしらねえ」
人事の人は機嫌よく話し続けます。
人事 「みんなパソコンは仕事でいつも使ってるんだけど、同じことしかできないから、なんか変わったことがあるとすぐあたふたするの。面倒見てあげてね」
芽衣子 「任せてくださいよ。これでもうち光ファイバーでブロードバンドバリバリっすよ」
人事 「じゃあいままで担当してる正男君にいろいろ聞いてね。彼しかうちの会社でインターネットに詳しい人いないから、きっと仲良くなれると思うわ」
呼ばれて正男くんという名の大男が現れました。
正男 「えっと僕の後任になる芽衣子さん?」
芽衣子 「そうですけど」
正男 「取りあえず、ここのネットワークについてざっくり説明するけど、いい?」
芽衣子 「ええ、まあ」
正男さんは会社のネットワーク構成について説明し始めます。
正男 「インターネットには基本的には光回線でつながってて、バックアップのADSLがある感じ。社内LANにはクライアントが20台くらいと社内用のファイルサーバ、プリンタがあって、WebサーバとメールサーバとDNSサーバはホスティングで外部にあるの。あと、無線LANのアクセスポイントがあるから、それの面倒も見てね」
芽衣子 「あ……、はい」
正男 「ここまでで分からないことってある?」
芽衣子さんにはいっていることのほとんどが分かりません。ちょっと家に逃げ帰りたくなってきましたが、勇気を出していってみます。意外と度胸はあるのです。
芽衣子 「全体的にいっていることがよく分からないですけれど……。クライアントとかサーバとかっていったい何ですか? 光とかADSLは聞いたことがありますよ。うちも光で爆速ダウンロードですから」
正男さんは不思議そうな顔をします。
正男 「……インターネットに詳しいって聞いたんだけど、ネットワークのことってどれくらい分かるの?」
芽衣子 「2ちゃんねるは専用ブラウザ使ってますよ。あとニコニコ動画にもちょっと自信があります」
正男 「……いや、ルータとか触ったことある?」
芽衣子 「ルータってなんですか?」
正男 「LANとか作ったことある?」
芽衣子 「RUN? 走るのはちょっと苦手ですよ」
正男さんは不安げな顔になって尋ねてきます。
正男 「……ほんとにネットワーク詳しいの?」
芽衣子 「ニコ動とかYouTubeとか2ちゃんねるとかバリバリなのがインターネットに詳しいんじゃないんですか?」
正男 「……ある意味詳しいんだけど、それはちょっと会社でやることとは違うんだな」
ネットワーク担当ってケーブルが外れてるとつなぐとか、炎上したら削除するとかそういうものではないのでしょうか。芽衣子さんはびっくりです。
正男 「ちょっと全体的にネットワークとかTCP/IPの知識が足りないみたいなので、引き継ぎの間、僕がちょっと教えることします。まあ、ネットワークはいまのところ安定してるから、あんまりやることないし大丈夫だと思いますけどね」
芽衣子 「そ、そうですね、それがいいと思います」
芽衣子さんは逃げ道はないようですのでこのまま教えを請うことにします。これまでいろいろなピンチを乗り越えてきたのもあって、顔は平然としていますが内心ドキドキです。
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