このプロセスは文字どおり、契約マネジメント計画書に基づいて契約した作業内容が適切に行われているかを管理する活動のことです。プロジェクト・チームの活動に関しては、作業の進ちょく状況を確認する「実績報告」プロセス(第10章3項)、プロジェクト・チームが生成した成果物の品質を確認する「品質管理」プロセス(第8章3項)、作業内容が変更になった場合にその変更を適切に管理する「統合変更管理」プロセス(第4章6項)などについて、これまでの連載で解説してきました。契約管理プロセスは、これらのさまざまなマネジメント・プロセスを納入者を対象として行うと考えると分かりやすいと思います。
外部の業者に委託した作業が完了し、成果物が納品された場合、納品された成果物の受け入れを行い、問題がなければ契約が完了します。「契約終結」のプロセスでは、あらかじめ定められた(第4章7項「プロジェクト終結」プロセスで定義)契約終了手順に従って、終了の手続きを行います。具体的には、成果物の検証、事務手続き(支払いなど)、契約に関する記録などです。また、何らかの理由によって、契約の途中で契約を中止することもありますが、その場合もあらかじめ定義された手順にのっとって手続きを行います。
PMBOKの考え方に「教訓を残し、次回以降のプロジェクトで活用する」というものがあります。契約が完了したら、「契約監査」として、契約の振り返りを行い、ちゃんと記録に残します。
このプロセスは終結プロセス群と定義されていますが、必ずしもプロジェクトが終結する段階でのみ発生するわけではありません。契約が完了する都度発生するプロセスですので、計画段階や実行段階でもこのプロセスの活動を実施することがあります。
購入・取得計画プロセスで作成する調達マネジメント計画書において、選択する契約タイプを決定します。契約タイプを大別すると、定額契約(一括請負契約)、実費償還契約、タイムアンドマテリアル契約に分類されます。それぞれの契約タイプの特徴は下記のとおりです。
◎定額契約(一括請負契約) あらかじめ委託する作業内容を明確にしたうえで、その作業内容に対し、固定の価格を設定する契約形態。実際の作業で想定以上のコストが発生した場合、納入者が負担するため、購入者側のコスト超過のリスクは少ないといえる |
|
★定額契約(FP) あらかじめ支払額を固定で設定する契約形態。実際に発生したコストにかかわらず、支払われる金額は一定となる |
|
★定額インセンティブフィー契約(FPIF) あらかじめ目標コストを定め、実コストとの差異を納入者、購入者で分割する契約形態。コストを抑えれば双方で利益を得、コストが超過すれば双方で負担が発生する。ただし、FPIFの場合、購入者の支払額には上限が定められるため、ある一定金額以上を支払うことはなく、一定以上のコストは全額納入者が負担することになる |
|
◎タイムアンドマテリアル契約(T&M) 人的資源の調達などにおいてあらかじめ単価を決定し、発生した作業量に応じて支払額を決定する契約形態。購入者側のコスト超過のリスクは中間になる |
|
◎実費償還契約 委託した作業に対して、実際に発生したコストに納入者の利益を加えて価格を決定する契約形態。購入者は実際に発生したコストの全額を負担するので、コスト超過のリスクは最大となる |
|
★コストプラスインセンティブフィー契約(CPIF) あらかじめ目標コストと目標利益を決定しておき、実際に発生したコストに応じて利益の額を調整する。目標コストに対し実コストが大幅に超過した場合であっても、一定以上の利益は保証される |
|
★コストプラス固定フィー契約(CPFF) 実費償還契約において、実コストにかかわらず、フィーを一定額に固定しておく契約形態 |
|
★コストプラスフィー契約(CPF) 実費償還契約において、実コストに対してあらかじめ設定した比率で納入者のフィーが決定される契約形態。実コストが増加するとフィーも増加するのが特徴 |
次のページで、今回の範囲のおさらいをします。演習問題を解いて終わりましょう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.