本連載は、これからプロジェクトマネージャへの転身を考えている方、現在PMBOKベースでマネジメントされているプロジェクトに参加しているメンバーの方などを対象にしています。『プロジェクトマネジメント知識体系ガイド第3版(日本語版)』(以下、PMBOKガイド)の解説を行いながら、プロジェクトマネジメントの基本を解説していきます。なお、各小見出しの横には、対応するPMBOKガイドの章を記載していますので、PMBOKガイドを学習する際の参考にご利用ください。記事の最後には演習問題を用意しました。復習にご利用ください。
この知識エリアの「調達」とは、外部の組織からプロジェクト活動に必要なリソースを手に入れることを意味します。ITプロジェクトの場合、PCやサーバなどの機材の調達もありますが、何といっても人の調達や、外部への業務委託などがメインになるのではないかと思います。表1に、調達マネジメントのプロセスを示します(表1)。この知識エリアの特徴は、立ち上げを除く4つのプロセス群に、まんべんなくプロセスが分散していることです。
なし
購入・取得計画
契約計画
納入者回答依頼
納入者選定
契約管理
契約終結
調達マネジメントにおける知識エリアの最初のプロセスでは、どの作業を外部から調達するのか(もしくはしないのか)を決定します。これを「内外製決定」(このプロセスのアウトプット)といいます。外部へ委託する作業の詳細は、「契約作業範囲記述書」(契約SOW)としてまとめます。さらに、どのような契約タイプを選択するか、実際に作業を委託する業者をどのように選定するのかなどのマネジメント方針を「調達マネジメント計画書」としてまとめておきます。
外部に委託する作業が決まったら、委託先の業者を決定するための準備に移ります。このプロセスの主要なアウトプットは、「調達文書」と「評価基準」です。
調達文書とは、納入業者の候補から提案書(PMBOK では、プロポーザルと表記しますが、ここでは提案書と表現します)や見積書などを入手するための文書のことで、一般には、RFP(提案依頼書)や見積依頼書などを指します。また、地方公共団体などが業務委託をする入札公告も調達文書に該当します。
評価基準は、提案書や見積もり書などを入手した後、納入業者の候補を選別するための基準で、この後の納入者選定プロセスで使用します。
このプロセスは、契約計画プロセスで作成したRFPなどを納入業者の候補に配布し、提案書などを入手するために行うものです。プロジェクトマネージャ(もしくは、プロジェクトマネジメント・チーム)は、入札説明会など納入業者の候補にRFPの内容を説明します。このプロセスのアウトプット(成果物)が提案書になります。
納入業者の候補から提出された提案書がそろったら、それらの内容を評価し、委託先の業者を決定します。外部から調達するものが市販されている物品の場合は、価格が評価の軸です。価格の安い業者を選択するのが一般的ですが、例えば、ユーザー企業がITベンダに対してシステム開発の委託をする場合、価格に加え、提案された内容を多角的に判断することが必要となります。その際に使用するのが、契約計画プロセスで作成した評価基準です。このプロセスでは、定義済みの評価基準に基づき、1つ1つの評価項目に得点を付けるなどして、納入業者を1つに絞っていきます。
委託先の業者が決まったら、契約内容の詳細を決定し、最終的には契約を締結します。このプロセスの主要なアウトプットは、「選定納入者」と「契約」「契約マネジメント計画書」です。プロジェクトマネージャは、契約締結後、その契約を管理する方法(具体的には、成果物/納品物の評価の仕方、作業の進ちょく状況を確認する方法)を決め、契約マネジメント計画書にまとめるのです。
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