IPA、IT人材を「3つの人材類型」と「6つの人材像」に定義ストラテジスト、システムアーキテクト……

» 2008年10月21日 00時00分 公開
[岑康貴,@IT]

 情報処理推進機構(IPA)は10月21日、「共通キャリア・スキルフレームワーク 第一版」を公開した。2007年7月20日に経済産業省とIPAが取りまとめた報告書「高度IT人材の育成をめざして」の中で示された案を具体化した。

 IPAは同文書の背景として、国際競争量の維持・強化のためには今後10年先を見据えたIT人材育成戦略の構築が急務であると説明。そのため、今後目指すべき高度IT人材像に即したキャリアと、求められるスキルを示したフレームワークの構築が必要であることから、同文書の公開を行ったという。

 同文書では、ITスキル標準(ITSS)、組み込みスキル標準(ETSS)、情報システムユーザースキル標準(UISS)の各スキル標準の参照モデルとして位置付けられ、情報処理技術者試験との対応関係を明確化。IPAでは、同文書が「今後必要とされるIT人材の人材像と、保有すべき能力や果たすべき役割の観点から整理した、共通の育成・評価のための枠組み」になるとしている。

 同文書では「3つの人材類型」と「6つに分類した人材像」を定義。それぞれの求められる人材像と能力(またはスキルセット)を提示している。詳細は下記の通り。

人材類型 人材像 人材像の役割 要求される役割
またはスキルセット
基本戦略系 ストラテジスト IT を活用したビジネス価値の増大をリードする ・経営環境の変化についての洞察と新たなビジネスモデル戦略についてのビジョンを描く能力
・エンタープライズアーキテクチャなど、企業活動・特定業務プロセスをモデル化・構造化する能力
・隣接するプロセス関連知見(例:発電所の制御方法)
・特定の企業における各種データの構造化に関する知見
ソリューション系 システムアーキテクト ビジネス戦略に対して最適なシステムをデザインする <開発系>
・ITの構造変化についての知見
・特定の開発モデル・手法についての知見・習熟
・特定のITソリューション戦略についてハードウェア、ソフトウェア、ネットワークの最適な組み合せの構築能力
・プロジェクトマネジメント能力(資源配分についての統率能力)
・各種のエンジニアリング能力(見積もり、品質など)
・コミュニケーション能力
・グローバルなIT資源調達能力

<運用・監査系>
・個別のリスク要因についての知見、対処の知見
・コスト分析能力
プロジェクトマネージャ 与えられた制約条件(品質、コスト、納期など)下で、信頼性の高いシステム構築を総括する
テクニカルスペシャリスト データベースやネットワークなどの技術ドメインでの実装を担当する
サービスマネージャ 継続的な高い信頼性を確保しつつ、システムを維持する
クリエーション系 クリエータ 新たな要素技術の創造等により社会・経済にイノベーションをもたらす ・ITアーキテクチャ革命の方向性についてのビジョン
・開発言語、開発環境、開発プロセスなど、メタレベルのIT概念の構想能力
・OS、データベース、ネットワークに関する基本要素技術の知識

 また、同文書ではキャリアレベルを定義。ITSS、ETSS、UISSの3つのスキル標準の整合性を確保する。情報処理技術者試験との対応関係も明確にし、同試験がレベル判定に活用できるようにした。さらに、それぞれのレベルで必要とされる知識を知識体系として整理している。

レベル 定義
レベル7 「高度な知識・スキルを有する世界に通用するハイエンドプレーヤー」
業界全体から見ても先進的なサービスの開拓や事業改革、市場化などをリードした経験と実績を有し、世界レベルでも広く認知される。
レベル6 「高度な知識・スキルを有する国内のハイエンドプレーヤー」
社内だけでなく業界においても、プロフェッショナルとしての経験と実績を有し、社内外で広く認知される。
レベル5 「高度な知識・スキルを有する企業内のハイエンドプレーヤー」
プロフェッショナルとして豊富な経験と実績を有し、社内をリードできる。
レベル4 高度な知識・スキルを有し、プロフェッショナルとして業務を遂行でき、経験や実績に基づいて作業指示ができる。またプロフェッショナルとして求められる経験を形式知化し、後進育成に応用できる。
レベル3 応用的知識・スキルを有し、要求された作業についてすべて独力で遂行できる。
レベル2 基本的知識・スキルを有し、一定程度の難易度または要求された作業について、その一部を独力で遂行できる。
レベル1 情報技術に携わる者に必要な最低限の基礎的知識を有し、要求された作業について、指導を受けて遂行できる。

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