ITエンジニアの周りにはストレスがいっぱい。そんな環境から心身を守るためのヒントを、IT業界出身のカウンセラーが分かりやすく伝えます。
今年(2008年)の8月には、北京オリンピックが開催されました。このオリンピックでのトップアスリートたちの戦いを、驚異と感嘆の思いで応援した人は多いのではないでしょうか。
4年に1度の大きな試合、選手は緊張の極みだと思います。どうすれば4年もの間、倦(う)まず鍛錬し続けられるのか、大舞台に立っても自分の実力を出せるのか。その秘けつの1つに「自分を信じること」があるのではないかと思います。
「自分を信じること」は、ITエンジニアにとっても、日々のメンタルへルスを保つために必要なのではないでしょうか。
SさんはITエンジニアの男性です。「会社で人の目が気になってつらい。会社に行きたくない」ということで相談に来た人です。
人の目が気になるとは、どのようなことなのでしょうか。Sさんに聞いてみると、「自分に自信がない」という言葉が出てきました。「自信が持てれば、もう少し楽になれそうなんだけど……」ということです。
では、何があれば自信が持てるのでしょうか? Sさんは「うーん、上の人に評価されるとか、褒められるとか、でしょうか……」と答えました。
自信が持てないため、仕事に積極的に取り組めないそうです。人の目が気になってびくびくし、会議のプレゼンテーションでは緊張のあまり失敗してしまうこともあるのだそうです。それでは評価も上がらないので、さらに自信がなくなり……と、悪循環に陥ってしまっているようでした。
日本のトップアスリートのメンタルトレーニングにかかわってきた白石豊さんは、著書『なぜか仕事がうまくいく7つのメンタルスキル―ここ一番で実力を発揮させるために』の中で、自信の大きさはセルフイメージの大きさと比例すると述べています。
いい結果が残せたから自信が持てるというわけではないそうです。むしろその逆で、自信がある状態で試合に臨むといい結果が出るのだそうです。
ということは、Sさんもまず自分に自信が持てる状態をつくることで、仕事にいい影響を及ぼせるということになります。他者からの評価を待っているだけでは、いつまでたってもいいスパイラルはつくり出せないのです。
そもそも、Sさんが自信を失ってしまったのは高校生のころ。ささいなことでクラスの仲間にからかわれたことがきっかけで、それ以後「また何かいわれるのではないか」と、しょっちゅう気にしてしまうようになりました。
気にしている自分がいやだし、そう感じれば感じるほど、余計に周りのみんなが自信ありげに見えました。自分だけが駄目な人間のように思えてきたのです。すると不思議と周りもSさんを「自信がない人」として扱うようになりました。Sさんは周りの反応を受けて、さらに「自分は駄目なんだ」という思い込みを強化してしまったようです。
きっかけ:ささいな失敗でからかわれる
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周りを気にする
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緊張してうまくいかない「また駄目かも」
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自信をなくす
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周りの反応「なんか自信なさそうにしているなあ」
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さらに自信をなくす「やっぱり自分は駄目なんだ」
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