仮想サーバは基本的にファイルとして管理され、新しいサーバを作る作業の中心はファイル・コピーである。一見簡単に思えるこの作業も、どのファイルをどこにコピーするべきか、そもそもどのファイルがマスターなのかなど、仮想環境用のファイルの管理は結構面倒である。そこで出てくるのがライブラリという概念だ。下図を見ていただきたい。
例えばSCVMMの環境では、Windows Server 2008をインストールしてVHDファイルが1つできたとすると、そのファイルをライブラリにコピーしておく。そして、ライブラリで管理されるVHDファイルは仮想サーバのテンプレートになり、次から次へと新しい仮想サーバを作っていくことができるというわけだ。このようにVHDファイルを集中管理することで、ライブラリ上のファイルに対してメンテナンスを行うというルールさえ作ってしまえば、誰がいつ作業をしたとしても正しいマスターVHDファイルから仮想マシンを作ることが可能になる。
要はテンプレートの一元管理機能を提供してくれるわけだが、SCVMMのライブラリの機能はそれだけではない。これからはCDもDVDも「.ISO」という拡張子を持つ仮想DVDイメージで管理するのが主流になるだろう。仮想サーバに対して仮想DVDを疑似的に挿入することで、仮想マシン内でアプリケーションのインストールを進めることができる。もう机の後ろにあるキャビネットの中で大量のCDやDVDを管理する必要がなくなるわけだ。ほかにもSCVMMの管理基盤であるPowerShellの自作スクリプトを保存しておけば、SCVMMの管理画面から右クリックでスクリプトを実行できる。
このように、ライブラリはSCVMMの管理基盤の中心的役割を担うといってもよいだろう。そこで、ライブラリの実体とその管理方法について解説しよう。まず、ライブラリの実体は共有フォルダであり、SCVMMのインストール時には必ずライブラリができる。念のため、デフォルトの場所と共有名を以下に示す。
場所: C:\ProgramData\Virtual Machine Manager Library Files
共有名:\\<ライブラリ・サーバ名>\\MSSCVMMLibrary
ライブラリ用のフォルダが自動作成されるC:\ProgramDataは隠し共有フォルダなので、デフォルト設定のWindowsエクスプローラでは見えない。ただ、それ以外には特に注意すべき点もなく、VHDファイルやISOイメージをフォルダにコピーするだけである。
そしてSCVMMは、ライブラリ・フォルダの情報を1時間(デフォルト)間隔で自動的に読み込んで更新する。よって、読み取りや更新作業が終われば、以下のようにライブラリのオブジェクト一覧にリスト化され、ウィザードから利用できるようになる。
ちなみに、SCVMMはいったん読み込んだ情報をベースにウィザードが動くため、ライブラリの更新をしない限りウィザードから新しいファイルを利用することができない。開発やテスト環境では即座に反映させたい場合も想定されるので、そのような場合はSCVMMの管理画面から手動で最新の情報に更新することができる。また、ライブラリの更新間隔を変更することも可能だが、最短1時間なので細かな制御はできない。
ライブラリの管理はこれで終わらない。ライブラリは仮想サーバのテンプレートを保持することになるので、仮想マシンを作成するという作業時にはライブラリからHyper-Vマシンへ、小さくても数Gbytes(固定長ディスクを利用する場合は100Gbytesを超える可能性もある)のVHDファイルがネットワーク経由でコピーされることになる。このことからも分かるように、ライブラリとHyper-VマシンはできるだけWANを越えないように配置したいところだ。そのためにはライブラリ・サーバを拠点ごとに配置し、迅速なサーバ構築環境を整える必要が出てくる。
そこで、ライブラリ追加作業についても見てみよう。ライブラリを新規に追加する場合、「ライブラリ共有の追加」と「ライブラリ・サーバの追加」が分かれているので注意をしてほしい。同じライブラリ・サーバ上でほかの共有フォルダを利用したい場合はライブラリ共有として追加し、どこかの拠点にある別のサーバをライブラリとして利用したい場合にはライブラリ・サーバとして追加した後、ライブラリ共有の追加をすることになる。
さて、ライブラリの説明を終えたので、早速仮想サーバの作成といきたいところではあるが、スクリーンショットを何げなく載せていたのでは作業も円滑にならないだろう。そこで、SCVMMの管理画面についてきちんと説明をしておこう。今後の説明の中では詳しく触れることもないので、このタイミングで管理画面についてしっかりと押さえていただきたい。
以下の画面がSCVMMの管理コンソールである。
(1)機能ボタン
(2)バーチャル・マシンのリスト
(3)バーチャル・マシンの詳細
(4)アクション・メニュー
(5)ホスト・グループ管理とツリー・ビュー
(6)フィルタと検索・グループ化
(7)メニュー・バーとタスク・バー
(1)の機能のボタンの中で、[管理]をクリックするとさらにいくつかの項目が出てくるので、そこにも注目をしてほしい。
例えば、全般という項目の中でも上の画面のようにいくつかの設定項目が分かれている。この中には先ほど解説したライブラリの更新間隔設定の画面もある。また、各種TCPポート番号指定や次回解説予定のユーザー・ロールによる管理権限の委任設定などもこの画面から実施することになる。頻繁に使う画面ではないだろうが管理者であれば知っておいてほしいポイントだ。
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