ちょうど気分のいいところで休憩したい芽衣子さんですが、まだまだ正男さんは説明を続けます。
正男 「そして、次にデフォルトゲートウェイです」
芽衣子 「直訳すると既定の出口ってことね」
正男 「直訳のとおりで、これは出口のことになります」
芽衣子 「といっても何の出口か分からないわ」
正男 「例えばいまのLANからインターネットのWebサイトを見るとします」
芽衣子 「いいかげん飽きてきたからニコ動見ない?」
お疲れ気味の芽衣子さんの話は無視して正男さんは話を続けます。
正男 「でもサイトって会社のネットワーク内にはないじゃないですか」
芽衣子 「確かにニコ動はこの会社で動いている様子はないわね」
正男 「そういったサブネットワーク外とやりとりしたいときの出口がこのデフォルトゲートウェイなんです。人は出口を勝手に覚えてくれるのですが、コンピュータは覚えてくれないので指定する必要があるんですよ」
芽衣子 「んー、この会社の外とやりとりしたいときの出口って……」
芽衣子さんは早く終わらせて、ニコ動を見たいので結構真剣に考えます。
芽衣子 「ちょっと、君、スタバ行ってカフェモカ買ってきて!」
正男 「は、はい! サイズは?」
唐突に言われたので正男さんはびっくりして返事してしまいます。
芽衣子 「っていうことか。いまの場合、デフォルトゲートウェイは正男さんってことね」
正男 「……、ええ」
気を取り直して正男さんは続けます。
正男 「デフォルトゲートウェイですが、通常はルータのIPアドレスを指定することになります」
芽衣子 「前にこの会社を案内してもらったとき、出口は確かに1つしかなかったから、そのアドレスを指定すればいいのよね」
「そうなんですよ、あのルータが会社の外とのやりとりを一手に引き受けているんですよ」
芽衣子 「間違って屋上を出口に指定することもできるの?」
正男 「できますが、もちろん外には出られませんよ」
芽衣子 「人と違って追い詰められて落ちて死ぬってことはないのね」
ニヤリと笑って芽衣子さんはいいます。
芽衣子 「本当に買ってきてくれるのなら、いまから行ってきてもいいわよ。あなたの分のお金も出すから。サイズはベンティでお願い(※)」
目の奥が笑っていない芽衣子さんに恐れをなして慌てて買い出しに行く正男さんです。
30分後、ホイップで口の周りの無精髭を白くしながら正男さんは話をしています。甘いものを飲んで上機嫌なDNSの説明です。
正男 「それにしても、カフェモカって甘くておいしいですね。で、一番下にあるのはDNSサーバのアドレスです。DNSって分かりますか?(※)」
芽衣子 「それ、本気で聞いてるの? 分かっていたら、ここで話なんかしてないでしょ」
正男 「確かにそうですね」
そういうと正男さんはカフェモカを飲み切って、口を開きます。
正男 「ここまででインターネットについてちょっと疑問が起こりませんか?」
芽衣子 「え、なに?」
正男 「wwwとか……」
芽衣子 「そうよ、私の知ってるインターネットはwwwとかnicovideo.jpとかなのに、いままでどうして数字しか出てこないのよ!」
正男 「その答えがいまから出てくるのです。じゃーん!」
正男さんは甘いものを飲むとテンションが上がるようです。
正男 「このDNSサーバが変換してくれるのですよ」
芽衣子 「えーっ」
正男 「実は、インターネットというのは、IPアドレス同士がつながるネットワークですが、それって分かりにくいじゃないですか」
芽衣子 「郵便番号で日本の住所を覚えるくらい分かりにくいわね」
正男 「なので、分かりやすい名前をIPアドレスごとに付けているわけですよ」
芽衣子 「それがニコ動とかなんとかドットコムみたいなものね」
正男 「そうなんですよ」
そういうとまた正男さんはコマンドプロンプトを立ち上げて、なにやらコマンドを打ちます。C:\>nslookup www.nicovideo.jp……(※)
C:\>nslookup www.nicovideo.jp
Server:dns.example.jp
Address:192.168.1.1
Non-authoritative answer:
Name:www.nicovideo.jp
Address:202.248.110.243
正男 「このようにニコ動も、実は裏にはIPアドレスを持っているのです。そして、このwww.nicovideo.jpと202.248.110.243を変換してくれるのがDNSサーバなんですよ」
芽衣子 「すごいわ、正男さんはやっぱり秘密をいっぱい知っているのね。さすがサイバー戦士って感じよね」
え、どうしてそれを! 正男さんは一瞬涙目になりました。
正男 「だから、DNSサーバがないと日常のインターネット生活は送れないんですよ。あ、もう時間だ、今日は、このくらいにしておきましょう。ここまでの知識でようやくLANからインターネットに出られるようになりましたね、では!」
そそくさと退散する正男さんでした。
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