すべてのシステムを1台のストレージで統合する場合、要求(性能・可用性など)の高いシステムが基準となり、求める投資対効果を得られないことがある。これは、すべてのシステムに同一のストレージ性能を提供することが一部のシステムに過剰なスペックを提供してしまうことに起因する。ここでは、データの要求するI/O性能と可用性(データ保護レベル)、そしてコスト(容量あたり単価)に応じて保存するストレージ自体を変える「ストレージ階層化」について解説する。
「ストレージ階層化」は、ストレージ筐体種類、ディスク種類の使い分けによって実現する技術である。
一般的に企業内で使用されるストレージは、採用するアーキテクチャ(当然コストも関連する)によって「ハイエンドストレージ」と「ミッドレンジストレージ」の2つに分類することが出来る。業務の重要性や障害時の影響範囲の許容度などを考慮して、これらストレージの種類を使い分けることで階層化する。
また、システムに必要な性能に応じたディスク種類(回転数、インターフェイスなど)を筐体内で変えることも一種の階層化アプローチである。例えば業務の繁忙期は高性能なディスク装置(15krpm FCなど)を使用し、逆に閑散期は、使用頻度の少なくなったデータを安価なディスク装置(SATAなど)へ移動する。SANストレージではディスク装置間での「動的なLUN移動」機能、NASストレージでは、筐体内や筐体間でデータファイルの移動により実施する。
なお、アクティブなデータと非アクティブなデータを分けて配置することで、日々のバックアップ対象を削減するアーカイブも階層化アプローチのひとつと言える。
ストレージ階層化の実施における考慮点やアプローチについて、以下にまとめる。
また、ファイルサーバの階層化では、事前設定したポリシーに応じてデータを移動する自動運用が実現されている。
これまで解説した「ストレージ統合」や「ストレージ階層化」は、十分な投資対効果を発揮するためにはある程度の規模を必要とする。このため、実現には各システムの運用担当者や部署の単位ではなく、複数の部署や上級管理職を巻き込んだ全社レベルの検討が必要となることが多い。最近では、SI業者やストレージベンダで、このような統合や階層化を促進するコンサルティングサービスを用意しており、これらサービスの利用により統合や階層化を促進することも可能である。
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