昨今では、サーバやネットワーク、ストレージなどあらゆるジャンルで仮想化が進んでいる。仮想化は「デバイス、データ、オブジェクトの物理構成を隠蔽し、抽象化した環境」を提供するしくみである。
ベンダによりさまざまな仮想化手法や名称があるが、ここではストレージの仮想化について基本的なアーキテクチャやメリットについて解説する。
ストレージ仮想化は、ホスト-ストレージ間に仮想化エンジン(スイッチ、アプライアンス)を設置し、ホストからストレージを隠蔽し、あたかも1台のストレージのようなアクセスと管理を実現する。ストレージの仮想化によるメリットには次のようなものが挙げられる。
なお、NASの仮想化は、複数のファイルサーバやNASを仮想化エンジン配下の管理に運用を切り替えるため、既存環境の名前空間の変更が発生する(DNS、WINSなど)。
また、SAN環境の仮想化はサーバ-ストレージ間の接続や設定方法の差異を無くし、統一された手法で管理することが可能となる。しかし、各々のストレージの持つ機能(筐体内、筐体間のレプリケーション)の利用や性能管理が困難になる側面をもつ。
サーバ-ストレージの仮想化が実現すると、物理的なリソースの隠蔽だけではなく、さまざまなサービスレベルに対応する階層化されたリソースプールの構築が可能となる。ユーザは必要とするコンピュータのリソースとサービスレベルを必要なときに必要な分だけ利用する「ユーティリティコンピューティング」の環境が現実のものとなる。
しかしながら、ストレージ仮想化はまだ発展段階の技術であるため、導入には十分な検討が必要である。特に、下記のような課題から、場合によって「システム全体の可用性の低下」や「管理の複雑化」など新たな問題が生じることもある。
参考までに、「仮想化」に分類されることのあるもう1つのストレージ機能である仮想プロビジョニング(シンプロビジョニング)について紹介する。仮想プロビジョニングとは、ストレージの物理的なディスク容量に関わらず、サーバに自由なサイズの仮想的なLUN(NASではファイルシステム)を提供する機能で、容量使用率を大幅に向上することができる。
4回にわたって、「接続」、「データ保護」、「性能」、「統合・仮想化・階層化」をテーマにストレージについて解説してきた。最近では、これまでの「周辺機器」としてのストレージから「情報の中心」や「ITインフラの中核」へ、その考え方や位置づけに変化が生じてきている。IT技術者に対するストレージ知識や提案力の要求は確実に高まっており、今回の連載がストレージの理解に少しでも役立てば幸いである。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.