本連載では、企業の成長に不可欠な「データ活用」を推進していくために必要なデータ基盤の基礎を“あらためて”解説していきます。今回は、ビジネス視点でのデータベース構築には欠かせないデータ中心アプローチ「DOA」の考え方と、それを推進するための手法を解説します。【更新版】
前回まで、リレーショナルデータベース(RDB)は、データを行と列の2次元の表形式で表すこと、表形式のデータは物理ファイルに格納されていることについて、Oracle Databaseを例にリレーショナルデータベース管理システム(RDBMS)のアーキテクチャを中心に説明してきました。
昨今、データベース管理者(DBA)/ITシステム管理者などにも、ただシステムを管理したり、業務部門などから依頼されたシステムを言われた通りに構築したりすればいい時代は終わり、「ビジネス視点」、つまり「ITで、いかにビジネス(会社や組織全体の利益や成長)に貢献するか」の視点を持って業務を進行していかなければなりません。
そこで今回は、RDBの「データ」にフォーカスし、ビジネスの成長や変化などによって後々で発生するであろう課題や問題を事前に回避して、ビジネスに役立つデータベース構築を行うために欠かせない「DOA(Data Oriented Architecture:データ中心アプローチ)」の考え方と、そのDOAを推進していくための手法を解説します。
ビジネスのスピードは年々加速度を増しています。より迅速な経営判断を下せることが、ライバルの一歩先を行く原動力になります。当然、意思決定のための情報単位の価値も高まっています。この情報=データは、これまで以上に重要な経営資源として認識されるようになっています。
この迅速な意思決定を実現するための手法の1つが、DOAとなります。DOAのアプローチを示す概念図は以下の通りです(図1)。
「業務処理の流れ」を中心にした視点でシステムを構築する、「POA(Process Oriented Approach:処理中心アプローチ)」という考え方があります。ある要求に対して、技術的にどう解決していくかとする、これまで多くの開発者やIT部門単体で実践していた手法と思います。
POAは、求められたシステムを正確に構築するために必要なアプローチですが、その一方で、変化への対応がしにくい課題も生じます。例えば、処理プログラムを新たに構築すると、そのたびにデータを用意する必要が出てきます。そうなると、データが冗長となり、データの整合性を維持するのが困難になるといった課題に発展します。つまり、システム開発当初は順調に稼働していても、時間の経過とともに複雑なシステムになっていく可能性が高く、変化への対応が難しい──となり得ます。
これに対して、DOAは「データ」を中心に考えます。データは不変的なので、ビジネスの変化に対する影響が少ないと言えます。DOAは、変化に影響されにくいデータに視点を置き、システム基盤が全体的に最適な状態になるよう構築する考え方です。
では、DOAには何が必要なのでしょうか。まず必要不可欠な手法が「データモデリング」です。
データモデリングとは、企業や組織が管理すべきデータの収集や分析を行い、整理統合して、管理しやすい構造にモデル化することです(図2)。
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