Windows 7/Windows Server 2008 R2のBranchCacheを使えば、遅いWAN回線で接続された支社からでも本社のファイル・サーバに快適にアクセスできる。
子会社や支社など、帯域の細いWAN回線などで接続されたサイトにおいて、WAN回線経由でアクセスしたサーバのデータを、ローカル側のコンピュータ・ネットワークへキャッシュし、アクセス速度を向上させる機能。2009年10月にリリースされるWindows 7およびWindows Server 2008 R2の組み合わせによって実現される。Windows XP/Vistaではサポートされない。
例えば支社内に多数あるWindows 7やWindows Server 2008 R2のコンピュータが本社のサイトへアクセスする場合、同じファイルに対するアクセスであっても、通常は各コンピュータが独立して本社へアクセスすることになるが、これでは細いWAN回線が混雑し、飽和してしまう。だがBranchCacheが有効ならば、最初の1台がアクセスした結果が支社のローカル・キャッシュに保存され、ほかのコンピュータはそのキャッシュからアクセスすることによって、高速なアクセスが実現される。コンテンツのキャッシングやアクセス管理は自動的に行われるので(ネットワークの遅延時間などに基づいて自動的にキャッシュ機能が有効になる)、ユーザーはリモートのサーバからアクセスしているのか、それともローカルのキャッシュからアクセスしているのかを意識する必要はない。
BranchCacheではコンテンツの読み出しはキャッシュされるが、書き込みはサーバに対して直接行われるので、データの更新も問題なく行われる。キャッシュ可能なプロトコルとしては、SMBやHTTP/HTTPS、IPv4、IPv6、SSLなどがサポートされている。これらのプロトコルはWindows OSの基本部分に組み込まれているので、Windows上で動作している通常のアプリケーションやサービス(Webアクセスやファイル・アクセス、BITSによる転送、WSUSの転送、Windows Media Playerを使った映像など)すべてでその恩恵を受けることができる。
BranchCacheには「分散キャッシュ・モード」と「ホスト型キャッシュ・モード」という2つの動作モードがある。前者は、クライアントとして使用しているWindows 7/Windows Server 2008 R2だけでお互いにデータをキャッシュしてやり取りするモードであり、特別なサーバを用意しなくてもよいので手軽に利用できる。しかしその分、各コンピュータには若干の負荷がかかり、キャッシュ用にいくらかのディスク容量が要求され、キャッシュしたコンピュータがスタンバイや停止状態になるとそのキャッシュが利用できなくなるといった制約がある。また本社側のサーバにはBranchCacheを有効にしたWindows Server 2008 R2が必要である。この構成はクライアント数が50台程度までのネットワークに向いているとされている。
これに対してホスト型キャッシュ・モードではキャッシュ専用のサーバを利用する。Windows Server 2008 R2をBranchCacheのキャッシュ用サーバとして支社側に配置しておくと、リモートからダウンロードしたコンテンツは自動的にこのサーバへもキャッシュされ、クライアント(支社内のWindows 7やWindows Server 2008 R2)からの要求に対してサービスを行う。専用サーバを利用する分だけ、より多くのキャッシュ・サイズや高い性能が期待できる。また、支社側がサブネットに分かれていても全クライアントにサービスできるし(分散キャッシュ・モードではブロードキャストの届く同一サブネット上のクライアントのみにサービスを提供可能)、最初に要求を出したクライアントがスタンバイや停止状態になっていても、ほかのコンピュータにサービスできるというメリットがある。
「用語解説」
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