BranchCacheWindows Insider用語解説

Windows 7/Windows Server 2008 R2のBranchCacheを使えば、遅いWAN回線で接続された支社からでも本社のファイル・サーバに快適にアクセスできる。

» 2009年09月28日 00時00分 公開
[打越浩幸デジタルアドバンテージ]
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 子会社や支社など、帯域の細いWAN回線などで接続されたサイトにおいて、WAN回線経由でアクセスしたサーバのデータを、ローカル側のコンピュータ・ネットワークへキャッシュし、アクセス速度を向上させる機能。2009年10月にリリースされるWindows 7およびWindows Server 2008 R2の組み合わせによって実現される。Windows XP/Vistaではサポートされない。

BranchCacheによるローカル・キャッシュ機能
BranchCacheとは、子会社や支社など、帯域の細いWAN回線などで接続されたサイトにおいて、支社から本社へのアクセス(ファイル・サーバへのアクセスやWebサーバへのアクセス)の結果をキャッシュして、ネットワークの(理論的な)接続速度を向上させるための機能である。最初の1台がダウンロードしたコンテンツは自動的にローカルにキャッシュされ、ほかのコンピュータがコンテンツを要求すると、そのキャッシュからロードされる。最初の1つ分のトラフィックだけでほかのコンピュータのアクセスにも対応できるので、WAN回線のトラフィックを消費しない。BranchCacheには「分散キャッシュ・モード」と「ホスト型キャッシュ・モード」という2つの動作モードがある。
  (1)キャッシュ専用のサーバを持たない、分散キャッシュ・モードでの使用例。支社内のコンピュータが本社のファイル・サーバ上のファイルを要求すると、読み出した結果はローカルにキャッシュされる。
  (2)支社中のほかのコンピュータが同じファイルを要求すると、まずローカルで問い合わせが行われ、キャッシュしているコンピュータからファイルがロードされる。
  (3)キャッシュ専用のサーバを利用する、ホスト型キャッシュ・モードでの使用例。支社内のコンピュータが本社のファイル・サーバ上のファイルを要求する。
  (4)読み出した結果は支社に置かれているWindows Server 2008 R2キャッシュ・サーバに送られ、そこでキャッシュされる。
  (5)支社中のほかのコンピュータが同じファイルを要求すると、まず支社のキャッシュ・サーバに問い合わせを行い、そこにキャッシュされているファイルがロードされる。

 例えば支社内に多数あるWindows 7やWindows Server 2008 R2のコンピュータが本社のサイトへアクセスする場合、同じファイルに対するアクセスであっても、通常は各コンピュータが独立して本社へアクセスすることになるが、これでは細いWAN回線が混雑し、飽和してしまう。だがBranchCacheが有効ならば、最初の1台がアクセスした結果が支社のローカル・キャッシュに保存され、ほかのコンピュータはそのキャッシュからアクセスすることによって、高速なアクセスが実現される。コンテンツのキャッシングやアクセス管理は自動的に行われるので(ネットワークの遅延時間などに基づいて自動的にキャッシュ機能が有効になる)、ユーザーはリモートのサーバからアクセスしているのか、それともローカルのキャッシュからアクセスしているのかを意識する必要はない。

BranchCacheのサーバ機能の有効化
BranchCacheの分散キャッシュ・モードを利用するには、サーバ側にWindows Server 2008 R2が必要である。BranchCacheに関する細かい設定はグループ・ポリシーで制御できる。これはWindows Server 2008 R2の管理ツールでBranchCacheのサーバ機能を有効にしているところ。
  (1)ファイルの共有設定でこれをオンにしておくと、回線の遅延速度などに応じて、それを利用するクライアント側のWindows 7やWindows Server 2008 R2でBranchCache機能が自動的に有効になる。

 BranchCacheではコンテンツの読み出しはキャッシュされるが、書き込みはサーバに対して直接行われるので、データの更新も問題なく行われる。キャッシュ可能なプロトコルとしては、SMBHTTP/HTTPS、IPv4、IPv6、SSLなどがサポートされている。これらのプロトコルはWindows OSの基本部分に組み込まれているので、Windows上で動作している通常のアプリケーションやサービス(Webアクセスやファイル・アクセス、BITSによる転送、WSUSの転送、Windows Media Playerを使った映像など)すべてでその恩恵を受けることができる。

 BranchCacheには「分散キャッシュ・モード」と「ホスト型キャッシュ・モード」という2つの動作モードがある。前者は、クライアントとして使用しているWindows 7/Windows Server 2008 R2だけでお互いにデータをキャッシュしてやり取りするモードであり、特別なサーバを用意しなくてもよいので手軽に利用できる。しかしその分、各コンピュータには若干の負荷がかかり、キャッシュ用にいくらかのディスク容量が要求され、キャッシュしたコンピュータがスタンバイや停止状態になるとそのキャッシュが利用できなくなるといった制約がある。また本社側のサーバにはBranchCacheを有効にしたWindows Server 2008 R2が必要である。この構成はクライアント数が50台程度までのネットワークに向いているとされている。

 これに対してホスト型キャッシュ・モードではキャッシュ専用のサーバを利用する。Windows Server 2008 R2をBranchCacheのキャッシュ用サーバとして支社側に配置しておくと、リモートからダウンロードしたコンテンツは自動的にこのサーバへもキャッシュされ、クライアント(支社内のWindows 7やWindows Server 2008 R2)からの要求に対してサービスを行う。専用サーバを利用する分だけ、より多くのキャッシュ・サイズや高い性能が期待できる。また、支社側がサブネットに分かれていても全クライアントにサービスできるし(分散キャッシュ・モードではブロードキャストの届く同一サブネット上のクライアントのみにサービスを提供可能)、最初に要求を出したクライアントがスタンバイや停止状態になっていても、ほかのコンピュータにサービスできるというメリットがある。

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