互換性を保ちながらも10倍の高速化を果たしたUSB 3.0。普及し始めたUSB 3.0の概要と各種コネクタを解説。そしてUSB 3.0の実力は?
USBはPCと周辺機器を接続する汎用インターフェイスとして、すでに広く普及している規格である。外付けディスクやUSBメモリ、プリンタ/スキャナ、キーボード/マウス、カメラ、音楽プレーヤー、認証デバイスほか、さまざまな機器を接続するために利用されている。
現在広く利用されているUSBの規格は1.1や2.0が主流だが、最近ではUSB 3.0を備えたコンピュータ・システムも増えてきている。今回は、本格的な普及が始まりつつあるUSB 3.0の概要と、実際の速度などについて解説する。
なお、USB 3.0のドライバはWindows OS標準ではないが、システム(マザー・ボードやUSBインターフェイス・カード)に付属しているデバイス・ドライバをインストールすれば問題なく利用できるはずである。そのため今回は、USB 3.0の仕様について簡単にまとめた後、ディスクの転送速度を測定するにとどめることにする。
USB 3.0は、従来との互換性を極力維持しながら高速化を図った高速シリアル・インターフェイスである。USB 3.0の設計目標は、従来のUSB 2.0との互換性を重視しつつ、大幅な高速性や使いやすさを実現することにある。その主な特徴は次のとおりである。それぞれの具体的な仕様などについては、関連記事も参照していただきたい。
以下、簡単に説明しておく。
■5Gbit/sの高速インターフェイス
まず高速な伝送速度であるが、USB 3.0では、新しく「SuperSpeed」と呼ばれる、5Gbit/sの転送速度を実現している。
USB規格 | 伝送モード名 | 最大転送速度 | 通信方式 | バス・パワー |
---|---|---|---|---|
USB 1.1 | Low-speed | 1.5Mbit/s | 半二重 | 最大100mAもしくは500mA |
USB 1.1 | Full-speed | 12Mbit/s | 半二重 | |
USB 2.0 | High-speed | 480Mbit/s | 半二重 | |
USB 3.0 | SuperSpeed | 5Gbit/s | 全二重 | 最大900mA |
USBの転送速度とバス・パワー USB 3.0では従来の10倍以上の高速化と、1ポートあたり900mAという強化された電力供給能力を実現している。 |
5Gbit/sという速度はUSB 2.0の10倍以上であり、Serial ATAの3Gbit/sもしくは6Gbit/sに迫る速度である。ディスク専用インターフェイスではないため、プロトコル・オーバーヘッドや通信方式などの違いにより、実効速度ではSATAほどは出ないが(特に多数のディスクへ同時アクセスする場合)、それでもUSB 2.0よりは十分に高速である。
■従来との互換性の重視
USB 3.0では通信速度を大幅に向上させることになったが、従来のUSB 2.0のケーブル仕様では高速な信号を伝送できないという問題があった。使用している電線の特性がよくないし、シールドがなくノイズに弱い、信号の伝送方式が高速通信に向かない、などといった理由からだ。そこで高速な信号伝送に適した、シールド付きの信号線を新たに導入することにした。また、従来は送信と受信を同じ2本の(シールドなしの)信号線で行っていたが(送信と受信を切り替えながら使う半二重通信方式)、USB 3.0では送信と受信用に別々の信号線ペアを用意して全二重通信を行っている。このような物理的な改良や信号伝送方式の変更などにより、5Gbit/sという高速な伝送を可能にしている(全二重で通信できるので、実質的には最大10Gbit/sの伝送が可能。詳細は関連記事参照)
信号線 | USB 2.0ケーブル | USB 3.0ケーブル | 信号線の意味 |
---|---|---|---|
VBUS | USB 2.0用信号線 | USB 3.0信号線 | バス・パワー |
D+ | 差動信号Data+ | ||
D− | 差動信号Data− | ||
GND | バス・パワー用接地 | ||
SSTX+ | − | SuperSpeed送信差動信号+ | |
SSTX− | − | SuperSpeed送信差動信号− | |
SSRX+ | − | SuperSpeed受信差動信号+ | |
SSRX− | − | SuperSpeed受信差動信号− | |
GND | − | USB 3.0用信号接地 | |
USB 2.0と3.0の信号の違い USB 2.0では4本しか使用していなかったが、USB 3.0ではさらに5本の信号線を追加している。送信と受信で別々のシールド付き信号線ペアを使うことにより、通信速度を5Gbit/sに高速化するだけでなく、全二重通信も実現している。これ以外にも、周辺機器側から電源を供給する線(電源線)やマイクロ・コネクタ用のID信号線が使われることもある。 |
USB 3.0ではこのようにまったく別の信号線を追加しているため、システム・アーキテクチャ的には次のように、USB 2.0とUSB 3.0が同居する形になっている。USB 2.0以下で通信する場合は図中の赤線のように接続されるが、USB 3.0で通信する場合は青線のように、まったく別のパスが利用される。この2つは同時に利用されることはなく、接続された相手先に応じて使い分けられる。
【2011/04/28】当初公開した記事では、「USB 3.0のドライバはWindows VistaやWindows 7ではインストール不要である」と記述しておりましたが、実際にはWindows OSには含まれておらず、手動インストールが必要でした。そのため、該当する部分の記述を削除・修正しました。お詫びして訂正させていただきます。
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