USB 3.0ではUSB 2.0の信号に対して、新たに信号線を追加するという手法が使われている。そのためUSB 3.0用の「コネクタ」(受け側の「レセプタクル」と、挿し込む側の「プラグ」の両方をまとめてコネクタと呼ぶ)やケーブルは、従来のものとは異なるものにならざるを得ないが、従来の機器との互換性(相互接続性)を実現するため、外部的な形状は極力USB 2.0と同じになるようにしている。物理的な形状によってはUSB 2.0とUSB 3.0のコネクタやケーブルは挿すことができない組み合わせもあるが(例:USB 2.0の標準BレセプタクルにUSB 3.0の標準Bプラグなど)、挿すことができる場合は、そのままUSB 3.0もしくはUSB 2.0として正しく動作するようになっている。
コネクタ・タイプ | 用途 |
---|---|
USB 3.0標準Aコネクタ | USB 3.0の標準的なPC側コネクタ |
USB 3.0標準Bコネクタ | USB 3.0の標準的な周辺機器側コネクタ |
USB 3.0パワードBコネクタ | USB 3.0の電源供給機能付きの周辺機器側コネクタ |
USB 3.0マイクロBコネクタ | USB 3.0のマイクロ・タイプの周辺機器側コネクタ |
USB 3.0マイクロAプラグ | USB 3.0のマイクロ・タイプのPC側プラグ |
USB 3.0マイクロABレセプタクル | USB 3.0のマイクロ・タイプのレセプタクル |
USB 3.0の仕様で定義されているコネクタのタイプ USB 3.0の仕様で現在定義されているコネクタの種類の一覧。ここでいうコネクタとは、挿し込む側(オス側。プラグともいう)と受け側(メス側。レセプタクルともいう)の両方を指す。USB 2.0のプラグやケーブルをUSB 3.0のレセプタクルに挿し込むことは可能だが、その場合はUSB 2.0のモードで動作する。USB 3.0のプラグをUSB 2.0のレセプタクルに挿し込んだ場合も(挿し込むことが可能な場合は)、やはりUSB 2.0のモードで動作する。ただし、USB 3.0向けの周辺機器は900mAまでバス・パワーを利用することがあるので、USB 2.0のポートに接続すると電力不足になり、正しく動作しないことがある。その場合は、ADアダプタなどで周辺機器へ電力を供給する必要があるので、注意していただきたい。 |
USBではPC側のコネクタをAタイプ、周辺機器側をBタイプと呼び、それぞれに対して標準サイズとマイクロ・サイズの2種類が定義されている。USB 2.0には標準タイプとマイクロ・タイプのほかに、ミニというタイプも存在しているし(マイクロよりも少し大きいサイズ)、メーカー独自と思われるさまざまな小型コネクタが存在していたが、USB 3.0では現在のところ、以上のようなタイプだけが定義されている。
USB 3.0モードとして動作するためには、
の3つすべてがUSB 3.0仕様になっていなければならない。1つでもUSB 2.0仕様のものがあると、(たとえプラグを挿し込むことができても)全体としてはUSB 2.0モードで動作する。
以下、いくつかのコネクタの例を見ておこう。
まず最もよく使われるであろう、標準Aのプラグを見てみる。
一見すると、以前のUSB 2.0の標準Aプラグと同じように見えるが、よく見るとコネクタの奥にいくつかの接点(端子)が増設されていることが分かる。図にすると次のようになる。
実際のAプラグの金属カバー部分を外してみると、次のようになっている。
USB 3.0のケーブルは、一見するとUSB 2.0と区別が付かない。そこで判別しやすくするために、以下の2つが推奨仕様として決められている。
ただしいずれも推奨仕様なので、すべてのコネクタがこれを守るとは限らないので注意が必要だ。現在のところ、実際に販売されている製品ではこれを守っているものが多いようだ。ただし青くするのはコネクタのプラスチック部分だけであり、USBケーブル全体が青いわけではない。また2つ目のUSB 3.0のマークは、ケーブルには付いているが、周辺機器側には付いていないことが多い。USB 3.0のマークとは次のようなものである。
実際のケーブルには、次のように刻印されている。
USB 3.0のケーブルをUSB 2.0の標準Aレセプタクル(USB 2.0のUSBポート)に挿し込むと、先端の4つの接点(USB 2.0の接点)だけが接続され、奥にあるUSB 3.0の接点は何もつながらない状態になる。この場合は、周辺機器はUSB 2.0モードで接続され、動作する。速度はUSB 2.0モードになるが、周辺機器はそのまま使えるので、将来を見越して最初からUSB 3.0対応デバイスを買っておいても、無駄になることはないだろう。
なおUSB標準Aプラグを持つのは、USBケーブルだけではない。USBメモリなど、USBのポートに直接挿し込むデバイスでもUSB 3.0対応というものが増えている。以下はUSB 3.0対応メモリの例である。USB 3.0ポートに挿し込むと、従来よりも高速に利用できる。
次は標準Aプラグを挿し込むための標準Aレセプタクルの例を見てみよう。先ほどのルールのとおり、USB 3.0対応のUSBポートは青色になっていることが多い。現状ではすべてポートがUSB 3.0対応というPCは少なく、2ポートとか4ポートだけがUSB 3.0対応で、それ以外はUSB 2.0対応というものがほとんどである。
このポートにUSB 3.0対応のケーブル(標準Aプラグ)と周辺機器を接続すれば、USB 3.0モードで動作するが、USB 2.0のケーブルや周辺機器を接続すると、USB 2.0モードで動作する。
PCにUSB 3.0ポートがない場合、増設インターフェイス・カードを使ってUSB 3.0ポートを追加できる。次の写真はPCI Express x1スロット用USB 3.0増設カードの例である。接続するシステムによってはPCI Express x1バスでは帯域が不足し、USB 3.0のフルスピードが出せない場合もあるが、それでもUSB 2.0よりは高速に利用できるので、導入する価値はあるだろう。
次は周辺機器側のコネクタを見てみる。次の写真は、USB 3.0ポートを備えた外付けハードディスク装置の例である。USB 2.0のレセプタクルと比べると、上下方向に長くなっていることが分かる。増設された上の部分には、USB 3.0用の接点が設けられている。
このコネクタにはUSB 3.0の標準Bプラグを挿し込むことができるが、USB 2.0の標準Bプラグのケーブルを挿してUSB 2.0モードで利用することもできる。
次の写真は、標準Bレセプタクルに挿し込む、USB 3.0対応ケーブルの標準Bプラグの例である。
この形状から分かるとおり、上側に出っ張っているのでUSB 2.0の標準Bレセプタクル(USB 2.0対応周辺機器)には挿入できない。USB 2.0モードで利用したければ、このケーブルではなく、USB 2.0のケーブルを利用する。
次はマイクロBのレセプタクルを見てみよう。ほとんどの小型周辺機器はまだUSB 2.0で十分なため、このレセプタクルを備えた周辺機器はまだ多くない。現状では(2.5インチHDDやSSDを使う)ポータブル・タイプの外付けハードディスク製品がメインである。以下はそのような製品の例である。比較のために従来のUSB 2.0タイプも並べている。
一番上はUSB 2.0のポータブル機器でよく使われていたUSB 2.0のミニBレセプタクルの例である。
真ん中は、USB 3.0のマイクロBレセプタクルを持つ機器の例であり、小型のUSB 3.0における標準的なコネクタである。コネクタを2つくっつけたような、やや複雑な形状をしている。幅の広いところが従来のUSB 2.0のマイクロBレセプタクルと互換性がある部分であり、幅の狭いところはUSB 3.0用の拡張部分である。USB 2.0のマイクロBプラグを使う場合は、幅の広い方に挿し込めばよい。USB 2.0のマイクロBコネクタは、PCの周辺機器ではなく、携帯電話などでよく使われているようである。
一番下にあるのは、標準Aレセプタクルを持つポータブル・ハードディスク機器の例である。本来ならば、この標準Aレセプタクルは周辺機器のインターフェイスではないのだが(標準Aレセプタクルは、USBのアップストリーム側、つまりPC側に用意するものである)、最近ではこのようなコネクタを持つポータブル・ディスク装置もよく見かける。この場合、両端が標準AプラグとなっているUSBケーブルを使ってPCと接続することになるが、このようなケーブルは規格外のためか、(いまのところ)あまり見かけない。
次の写真はマイクロBプラグの例である。上のハードディスク装置のうち、真ん中のものに付属していたケーブルである。USB 2.0のマイクロBプラグに、USB 3.0で増設された信号部分が付加され、やや複雑な形状をしている。マイクロという割には幅があり(標準Aプラグの金属部分と同じくらいの幅がある。ただし厚さは標準Aプラグの金属部分の半分程度)、コネクタ自体のサイズはあまり小さくない。また従来のUSB 2.0のマイクロBレセプタクルには挿し込むことはできないので、そのような場合はUSB 2.0のマイクロBプラグのケーブルを利用する必要がある。
以上、USB 3.0のコネクタについて見てきた。まだ製品の種類も少ないし、コネクタの種類は機器の小型化に合わせて今後さらにバリエーションが増えるかもしれない。
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