表1では、v6/v6tfオブジェクトに対するアクセスの成功/失敗の値を見てみました。これに対して次に示すのは、v46オブジェクトに対してのビーコン取得成否の内訳です。
v4/v6アクセス | v6のみOK(4.90%) | v6tfのみOK(4.46%) | v6/v6tf OK(0.00%) | No v6/v6tf(90.63%) | ヘッダ異常(0.01%) | 全体(100%) |
---|---|---|---|---|---|---|
取得不可 | 0.02% | 0.58% | 0.41% | 0.17% | 11.77% | 0.18% |
v4で取得 | 99.05% | 99.42% | 90.52% | 99.83% | 88.21% | 99.77% |
v6で取得 | 0.93% | 0.00% | 9.07% | 0.00% | 0.02% | 0.05% |
表2 v46オブジェクトに対してのビーコン取得成否の内訳 |
・v6のみOK
IPv6アドレスが付与されたオブジェクトへのアクセスですので、クライアントはIPv6通信が可能です。しかし、IPv4通信の割合が非常に多いことが分かります。
・v6tfのみOK
IPv6閉域網内では99.42%がフォールバックに成功して、IPv4のコンテンツにアクセスしています。逆にv6tfオブジェクトにアクセスできる場合、0.58%がフォールバックがうまくいかず、通信できない可能性があります。
・v6/v6tf OK
この項目は、全体のうち0.0008%を占めるマルチホーム環境におけるアクセスの内訳になります。マルチホーム環境の場合でも、IPv4通信が優先される場合が多いことが分かります。
・No v6/v6tf
全体に占める割合が90.63%と最も多く、v46オブジェクトもIPv4で取得していることから、IPv6に未対応のクライアントであると考えられます。
・ヘッダ異常
HTTP Hostヘッダに異常が認められるクライアントですが、基本的にIPv4でアクセスしているようです。また、v46オブジェクトが取得できない割合も多いため、クライアント側はAとAAAAの両方が付いたレコードを受け取り、混乱する場合が多そうです。
・黄色地の行
これらの行は、v46オブジェクトの取得に失敗しているクライアントを意味します。全体の0.18%が、IPv6対応を実施した場合にうまく通信できなくなる可能性があります。
・全体
ここが最も重要な項目です。99.77%がIPv6対応後もIPv4で通信を続行でき、0.05%がIPv6対応後、IPv6で通信を続行できるクライアントとなります。
以上の調査によって、もし何も対策を行わないままYahoo! JAPANがIPv6に対応した場合、お客さま全体の0.18%に影響が出るという結果が導き出されました。
この0.18%のお客さまが「Yahoo! JAPANページが見られない!」となることがないよう、対応を行うことになりました。それが、前回でも触れた以下のような対策です。今回は詳細は割愛し、項目だけ記載します。
これらの対応を行うという前提で、Yahoo! JAPANのトップページも晴れてW6Dに参加することになりました。
W6D当日は、順調にスタートし、特に目立ったトラブルもなく終わりました。DNS周りの設定でちょっとした微調整を行うなどの対応はありましたが、事前対策が功を奏したのか、事故もなくとても平和な1日でした(笑)。
これで一安心……で終わってしまうと書くことがないので、ここでは、W6D当日に観測したトラフィックを紹介しようと思います。以下の画面は、6月8日当日のIPv6ネットワークに対する通信の推移を示したものです。
これを見ると、W6Dがスタートした9時からトラフィックが増えていることが分かると思います。その後いったんアクセス数は減りますが、22時にかけて順調に増え、翌9日早朝に向けて下降していきます。
9日9時のW6D終了に伴い、Yahoo! JAPANではDNSレコードを修正し、AAAAを外しました。これと同時にアクセスが減っていくことも確認いただけると思います。
W6D期間中はトップページのIPv6対応を行いましたが、その他にも、
の3サービスでIPv6対応を実施しています。これらのサービスは、W6D前からIPv6に対応しているもので、今もIPv6で稼働しています。
W6Dが終わってから3カ月以上経ちましたが、IPv6を取り巻く環境は、いまでも発展途上の段階といえるでしょう。
IPv6による通信は、たとえ動作的には問題はなくとも、IPv4と同じクオリティかといわれると厳しいものがあります。例えば、国内どうしの通信にもかかわらず海外を経由することがあったり、ネットワーク機器についても、IPv4と同じ使い勝手とまではいかない部分がまだあるように思います。
ただ、IPv6への移行によって、アドレス空間の拡大をはじめ根本的に解決される問題があることも事実です。世の中がそちらに向かっていることは間違いないと思います。
移行への反対意見を挙げればきりがないかと思いますが、インフラ構築に携わる立場としては今後も粘り強く取り組み、IPv6への対応がきちんと完了するときまで頑張っていきたいと思っています。
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