大学時代はまったくプログラミングをしたことがなかった社会学部出身の「文系女子」が、プログラマとして働くようになった理由と、その学習法とは?
10月13日、オラクル青山センターで「オブラブ 収穫祭 〜若手エンジニア、実りの秋〜」が開催された。オブラブは、ソフトウェアエンジニア同士の交流の場として、今年で11年目を迎える。今回のイベントでは、若手エンジニアと教育担当者がそれぞれの立場からプレゼンテーションを行い、エンジニアの成長と教育について考えるきっかけとなった。ここでは、永和システムマネジメントの講演をベースに、同社流の教育術を取り上げる。永和システムマネジメントは、ソフトウェア開発受託プロジェクトを基本業務として行っている会社である。
入社2年目の田垣亜季氏は、社会学部出身のいわゆる「文系女子」。大学時代は、まったくプログラミングをしたことがないという。しかし、現在は1人のプログラマとしてイベントカレンダー+ログなどを手掛けている。なぜ、プログラマの道を選んだのか。
彼女は、「自分でWebアプリが作れたらいいなと思ったから」と語る。それだけの憧れで、プログラマになってしまったのだ。もちろん、一度もプログラミングをしたことのない彼女にとって、プログラミングの世界というものは想像以上にわけの分からない世界だった。そんな中、彼女が実際に行った2つの勉強法を教えてくれた。
1つ目の勉強法は、「まねをすること」。具体的には、コピー&ペーストが使えそうな既存のコードを探し、そのコードが何をしているのかを調べるといった作業である。これによって、自然とソースコードをたくさん読むようになり、書き方のレパートリーが増えたという。「信じられるコードをたくさん読み、良い書き方をどんどんまねすることで勉強できた」と田垣氏は語る。
もう1つは、「形から入ること」。先輩から「テストを先に書くといいらしい」と言われたときの例を挙げて説明してくれた。「始めは、先輩に言われたことがなぜ必要なのかよく分からなかった。うのみにして実際にやってみたが、分からなかった。それでも、取りあえず『テストを書いた方がいい』と言われたので、ただただやっていた。すると、その意味が分かる瞬間がきた。理由が分かったころには『テストを書く』というやり方に慣れていたので、苦にならなかった。分かる瞬間がちゃんとくるので、まずはやり方に慣れることが大事」(田垣氏)
続いて、彼女の教育を担当する諸橋恭介氏が「われわれはどうしてお金をもらっているのか」というテーマで教育者の立場からプレゼンテーションを行った。お金をもらっている立場として、若者に教えることは「チームでプロジェクトをきちんと終わらせる」ことだという。
「プロジェクト」を「独自の製品、サービス、所産を創造するために実施される有期性の業務である」と定義する諸橋氏は、「終わらせること」の重要性を語った。
終わらせるためには、「今の作業のゴールは何か」「いつまでにやればいいのか」「成果物は誰がどう使うのか」の3点を常に意識しなければならないという。そのための道具として、「議事録を書くこと」と「自分の気持ちを伝えること」を挙げた。
議事録は、会議で話された内容をだらだらとロボットのように書くものではない。議事録の目的は、プロジェクトの流れが分かるように、「なぜやることになったのか」「終わるとどうなるのか」を明確にすること。プロジェクトを終わらせるための3つの意識(「今の作業のゴールは何か」「いつまでにやればいいのか」「成果物は誰がどう使うのか」)を頭に置いていれば、自然と出来上がるものだという。
また、「自分の気持ちを伝える」ことが重要と語るのは、「大抵のことはチームで解決できる」と考えているためだ。「困っていることがあれば『困っている』、できなくて焦っていれば『焦っている』とチームメンバーに伝えればいい。もし、自分の中に“悪いニュース”があるのであれば、そのニュースこそ早く言ってくれればいい」と諸橋氏はいう。
「まずは、プロジェクトを終わらせる。この前提があれば、きちんと仕事ができるようになる。そして、その期待に応えられるようになると、次はどのような評価をされたいのかを考えられるようになる。そんな人たちと一緒に、楽しく仕事がしたい」(諸橋氏)。
「私にとって、想像以上にわけの分からない世界でしたが、その世界の住人になりたいという強い気持ちがあったからプログラマになれた」と嬉しそうに語る田垣氏の姿と、教育者の立場としての諸橋氏の1つ1つの言葉がとても暖かく、印象的だった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.