米EMCトゥッチ会長兼CEO「自らを破壊できない企業は次の波に乗れない」

米EMCのジョー・トゥッチ会長兼CEOは10月29日に開催の「世界経営者会議」出席のため来日、同日に報道陣との会見を行った。この席でトゥッチ氏は@ITの質問に対し、自らを「破壊(disrupt)」することの重要性を強調した。

» 2012年10月30日 18時35分 公開
[三木 泉,@IT]

 米EMCのジョー・トゥッチ(Joe Tucci)会長兼CEOは、10月29日に開催の「世界経営者会議」出席のため来日、同日に報道陣との会見を行った。この席でトゥッチ氏は@ITの質問に対し、自らを「破壊(disrupt)」することの重要性を強調した。

米EMCの会長兼CEO、ジョー・トゥッチ氏

 トゥッチ氏は質問を受け付ける前に、EMCの事業の現状について説明。まずIT業界はこれまでメインフレームからミニコン、PC/マイクロプロセッサ、クライアント/サーバ、クラウドコンピューティングと5つの変革の波を経験してきたが、このなかでクラウドコンピューティングが最も「破壊的(disruptive)」な波だとの認識を示した。

 トゥッチ氏は、クラウドとは「標準化」「仮想化」「自動化」を意味するものであり、子会社であるヴイエムウェアも最近唱えている「Software Defined Datacenter」につながっていくと話した。ソフトウェアによる統合的な制御のもとで、ポリシーやサービスレベルを定義さえすれば、それに従って必要なソフトウェア/ハードウェア要素が自動的に、適切な動きをするという世界だ。

 EMCがクラウドとともに、もう1つの柱としているビッグデータは、非構造化データの急増や、外部データの社内構造化データとの連携をもたらしている。あらゆる業界がビッグデータ分析の影響を受けることになるだろう、とトゥッチ氏は話した。

 こうした2つの動きを踏まえて、「ではどこにどういったストレージ技術を使うべきか。『場合による』というのがその答えだ」とトゥッチ氏は話した。パフォーマンス/信頼性とコストとのバランスで、SATAドライブ、フラッシュ、DRAMといった複数の技術を組み合わせていく必要があるとする。「EMCはすべてに関わっていく」。EMCは最近、特にフラッシュ製品を強化しつつある。サーバに内蔵するPCIeフラッシュ、サーバにRDMA接続するオールフラッシュストレージ、そして従来型のネットワークストレージのオールフラッシュ版、フラッシュとハードディスクドライブを組み合わせたハイブリッドなネットワークストレージなどの広い選択肢を用意。さらにこれらすべてにわたってストレージの自動階層管理機能を適用していくと改めて話した。

 これに続くQ&Aセッションでの私の質問は次のとおりだ。

 「Software Defined Datacenterを超えて、Software Centric Datacenterを目指す人たちがいる。ビッグデータについても、必要となるのは安価なストレージボリュームだと言う人たちがいる。これらが与えるEMCのストレージビジネスへの影響をどう見ているか。例えば売り上げはよりヴイエムウェアにシフトすると考えるのか。ストレージの単価はさらに下がっていくと考えているのか」。

 これに対するトゥッチ氏の答えは次のとおりだ。

 「EMCが販売する製品の一部は非常にサービスリッチだが、そうしたサービスを必要ない用途についてはAtmosという低コストなストレージを提供している。しかし、カギとなるのはSoftware Defined Datacenterと連携し、その時々のアプリケーションや情報のニーズやサービスレベルを正確に理解して、適切に情報を移動し、最適な結果を得ることだ」。

 「(これまでのITの発展において)新たな波にうまく乗れなかった企業(の失敗の原因)は、自らを破壊することを恐れたことにある。われわれは新しい方向に向かって進んでいく。将来はソフトウェアにある。ソフトウェアの価値はより大きくなり、ハードウェアは小さくなる。それで問題はない。現在でも当社の売り上げで、ハードウェア、ソフトウェア、サービスのうち一番大きい部分を占めているのはソフトウェアだ」

 ヴイエムウェアに売り上げがさらにシフトするかもしれないという件についてはどう答えるのか。

 「ヴイエムウェアはEMCの連結子会社だ。従って売り上げの一部は、(結果的には)自社に対してシフトすることになる。それで何か問題はあるだろうか」。

 上記を、米国のIT企業幹部によく見られるレトリカルな答えととらえるのは簡単だ。しかしEMCは、実際に「自らを破壊する」必要があればそれをいとわないということを実践しようとしているのではないだろうか。例えば、今年の米国におけるEMC Worldの基調講演で、すべての同社ハードウェアストレージ製品を、仮想マシンとしても提供するつもりがあると宣言している。今後、ハードウェアストレージの市場が本当に大きく縮小していくかどうかは分からない。しかし、もしそうなったとしてもかまわないと言える状況に、自社を持っていこうとしているのではないだろうか。

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