10分で理解するBusiness Analytics、その全体像(1/3 ページ)

Business Analyticsってよく聞くけれどどんな知識が必要なもの? 数学のプロじゃないと踏み込めないの? ビッグデータブームとどう関係するの? というあたりをゼロから整理。業務のスキマ時間でチェックしてみよう。

» 2013年01月29日 18時00分 公開
[中川帝人日本GMAP]
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

 昨今、Business Analyticsというキーワードが注目を浴びています。基幹系システムの導入から時間が経過し、企業にデータが蓄積され、それらを活用する技術が進歩してきたことから、企業はIT技術を活用し、データを解析することによって、これを自らの競争優位の源泉にしようとしています。

 一昨年ほど前から「ビッグデータ」「データサイエンティスト」などといったバズワードがよく聞かれるようになりました。こうした言葉を耳にして、今後これらの分野でのキャリア展開を念頭に関心を持っている方も少なくないでしょう。ただし、興味はあれどもこれらの技術に対する経験がなく、何をしてよいか分からないというエンジニアの皆さんは多いと思います。

 筆者はこれらの領域のシステム構築を行い、現在は地理情報を活用したデータ解析による小売・流通業界向けのアナリストです。そのキャリアの中で、Business Analyticsは数あるIT業界の中でも非常にエキサイティングな楽しい分野であることを知っています。

 本連載では、便宜上「Business Analytics」を「データを解析し、そこから有意義な知見を引き出すシステムあるいはテクノロジ」と定義し、Business Analyticsに関連したテクノロジをITエンジニア向けの入門として解説していく予定です。そして、本連載を通じて、皆さんにこの領域への興味や感心を深めていただき、少しでもBusiness Analytics分野の進歩に協力できればと考えています。

 第1回は、Business Analyticsのシステムの全体像を解説します。

Business Analytics入門〜今、Business Analytics技術がアツい!

 Business Analyticsの歴史は古く、1950年代にまでさかのぼることができます。ただし、一般に広く情報を分析するためのシステムが普及したのは、キンボールやインモン(注1)のData Warehouse(DWH)理論やBusiness Intelligence (BI)がブームになった1990年代です。このころには日本でも、多くの企業が蓄積したデータを分析して意思決定に生かすことを目的として、情報分析のための「情報系システム」を構築し始めました。これらの時代に整備されたDWHのアーキテクチャや実装に関する理論は若い技術者の方は知らない方が多いかも知れません。現在でも色あせない素晴らしいものですので、後に解説を行いたいと思います。

注1:データウェアハウスやそのあり方についての理論の提唱者。



 このころ同時にマーケティング分野でデータマイニングの手法が活用され始めました。また、学術分野で機械学習やパターン認識の方法論が発展したことを受け、2000年代にはAmazonやGoogleのようなWeb系企業が従来のビジネスでは不可能であった独自のレコメンデーションやデータマイニング手法を強みにして、ビジネスを拡大していきました。さらにR言語のようなオープンソースのデータマイニングツールが洗練されて、複雑なアルゴリズムを簡単に用いること、大量のデータを低コストで解析することが可能になりました。今後はテクノロジに優れたWeb系企業のみならず、より広いビジネス領域において、データマイニングのような高度な統計的手法が企業の競争優位の源泉となっていくでしょう。

 例えば、カジノ会社のハラーズ・エンタテインメントはカジノに来た顧客の情報を元に「どのくらい損をしても、またカジノへ来てくれるか」という金額を予測して、顧客がその金額を上回る損をするとそれ以上のプレイを止めるように促し、代わりにレストランへのインセンティブを差し出し顧客の離反を回避するのみならず、満足度を高めているといいます(参考1)。

 今後、クラウド型システムが普及するにつれ、ITインフラは比較的簡単に構築可能になってきています。一方で高度な統計的手法を使い、ビジネスに深く入り込む必要のあるスキルを持つエンジニアは不足してくることでしょう。IT人材の需要はデータ分析ができるエンジニアにシフトすると筆者は予想しています。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

RSSについて

アイティメディアIDについて

メールマガジン登録

@ITのメールマガジンは、 もちろん、すべて無料です。ぜひメールマガジンをご購読ください。