IBMが今年注力すると宣言している、クラウドサービスと社内ITインフラの連携は、どのような姿で具体化されていくのだろうか。また、ジュニパーネットワークスは、主要ネットワークベンダのなかでは包括的なSDN戦略の発表が最も遅かったといえるが、この戦略の特徴はどこにあるのだろうか。今回はこの2つのトピックを分析する
2013年1〜2月のITニュースのなかから、日本IBMのクラウドサービス事業戦略発表、ジュニパーネットワークスのSDN戦略説明を取り上げ、分析を加えたい。詳細は「2013年1〜2月版IT INSIDERブリーフィング」(TechTarget会員のみ閲覧可能)に掲載している。
日本IBMは、1月24日に実施したクラウドサービス戦略の説明会で、PaaSレベルの取り組みを強化することと、ハイブリッドクラウド関連の活動を強化していくことを説明した。だが、「PaaS」も「ハイブリッドクラウド」も意味は広い。
IBMはPaaSレベルの取り組みとして、今年の戦略発表と同時に「IBM SmarterCloud for SAP Appplications(SmarterCloud for SAP)」を発表した。今後も、各種アプリケーションの開発・カスタマイズから導入までの所要期間や工数を減らすサービスを投入していくという。これが同社のPaaSレベルでの取り組みのすべてではないにしろ、クラウドサービスにおける主要な特徴の1つになっていくのは間違いないようだ。
ハイブリッドクラウドについてはどうか。日本IBM グローバル・テクノロジー サービス事業 スマーター・クラウド事業部長の熊本義信氏によると、あるアプリケーションを運用開始後に、クラウドサービスから社内へ、あるいは社内からクラウドサービスへと、容易に移行できるようにするという。
では、具体的にはどのようなサービスあるいはツールが提供できるのか。社内とクラウドサービスの間で、あるアプリケーションを構成する仮想マシン群を一括して転送できるようなサービスを意味しているのだろうか。
実は、これを探るヒントとなるようなサービスを、米IBMはすでに提供開始している。「IBM SmartCloud Application Services(SCAS)」だ。SCASは現在のところ、アプリケーション開発後にデプロイ先をクラウドサービスにするか、社内インフラにするかを選択できるようにしたサービスだ。すなわち、あくまでも開発・検証・デプロイメントまでのプロセスをカバー範囲としている。ただし、アプリケーションの本番稼働開始後の、社内とクラウドの運用連携も目指している。
ジュニパーネットワークスは、2月19日に国内で、同社のSDN戦略を説明した。1月に米国で同社がSDN戦略を発表した際も、2月の国内説明でも同様に、ジュニパーの最初のメッセージは、「SDN=OpenFlowではない」、そして「SDN=データセンターのみ」ではないというスタンスが前提となっている。
これは当然といえば当然の話だ。OpenFlowは、教育・研究機関のネットワークにおける通信の分離を当初の目的として開発されたプロトコル。汎用的なスイッチのフローテーブルを制御することにより、柔軟で迅速なサービス提供ニーズを満たすことができるのではないかという、比較的シンプルな考え方を基本に据えている。だからといってWANに適用できないというわけではないが、通信機器の各種機能をどう使いこなすかということはもともと考えていない。
WANルータに強いジュニパーが、「データセンターのみでは範囲が狭すぎる」と言いたくなるのは当たり前といえる。一方で同社は、ファイアウォールやADC(アプリケーションデリバリコントローラ)などの付加的通信処理機能との連携が、OpenFlowでは十分考えられていないと批判する。OpenFlowでも、ファイアウォールやADCに対して、特定のトラフィックフローをリダイレクトすることは可能だ。しかしジュニパーは、それでは不十分だとする。
たしかにデータセンター事業者には、特定のトラフィックフローに限定して、多段フィルタリングなどの特別な処理を加えたいといったニーズがある。こうしたニーズにどこまで、どのようなやり方で応えるか。これは、関連ベンダ間で取り組み方に違いが出やすいポイントだ。ジュニパーは1月の米国におけるSDN戦略発表で、一番重要なのは、上記のような機能を統合的に活用できるようにする「サービスチェイニング」だと説明している。
IBMのハイブリッド戦略、ジュニパーのSDN戦略についてより詳しくは、「2013年1〜2月版 IT INSIDERブリーフィング」(PDF)にまとめていますので、ぜひご覧ください(本コンテンツのダウンロードには、TechTarget会員登録が必要です)。
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