Webサイトへのログインに使うIDとパスワードは増大する一方。もう手動で管理するのは限界だ。クラウド・ベースの「LastPass」でどのように効率よくパスワードを管理できるのか紹介する。
インターネット上のサービスを利用するには、サービスごとに固有の「ID」と「パスワード」を使ってログインするのが普通だ。だがIDとパスワードの管理は、どんどん難しくなってきている。まず利用するサービスそのもの、つまりIDの数が多すぎる(少なくとも数十、多ければ数百個のIDを使っていても不思議ではないだろう)。そこへ来て「同じパスワードは使い回すな」「単純なパスワードは危険だ」などともよく指摘される。
さらに拍車をかけているのが、スマートフォンなどのモバイル端末の利用拡大だ。同じサービスをPCとスマートフォンの両方で利用したいのは当然だが、そのためには複数の端末間でID/パスワードを共有する必要がある。
こうした状況で、自分の記憶に頼ったりメモに書いたりといった人力でパスワードを管理するには、もう限界を超えている。もっと簡単で効率のよいパスワード管理の手法が必要だ。
そこで本稿ではパスワードを管理する専用ツールを取り上げ、どのようにパスワードの利用と管理が簡単になるのか具体的に説明する。さまざまなツールの中から、今回は「LastPass」というクラウド・サービスを取り上げる。Webサイトで用いるID/パスワードの管理が可能だ(Windowsのログインやスタンドアローンのアプリケーションには未対応)。
LastPassは、ID/パスワードをクラウド上に保存して管理する「サービス」としてのパスワード管理ツールである。インターネットに接続している限り、いつでもどこでも複数の端末からID/パスワードの取得/保存が可能だ。例えば会社のPCで利用しているWebサービスは、自宅のPCあるいは外出中のスマートフォンでも簡単にログインして利用できる(もちろんID/パスワードを自分で覚えたり、メモして持ち歩いたりする必要はない)。またいずれかの端末からパスワードを変更すると、クラウドを介してほかの端末にも自動的に反映される。単にIDとパスワードの情報をクラウド上に記録しているだけではなく、複数の端末間でこのようなパスワードの同期(自動入力)までも行ってくれるパスワード管理ツールである。
対応しているプラットフォームはWindows/Mac OS X/Linuxのほか、モバイル端末もiOSやAndroid OS、Windows Phoneなど幅広く対応している。Webブラウザについても、Internet ExplorerやMozilla Firefox、Google Chrome、Apple Safari、Operaなど主要なものには対応している。
また、専用のモバイル・アプリケーションを利用するなど一部のサービスには年額12ドル(月額1ドル)を支払う必要があるが、そのほかは無償で利用可能だ。
以下では、Windows PCとスマートフォン(iPhone)を例に、LastPassにできること・できないことを解説する。
Windows PCの場合、利用している各Webブラウザに対してLastPassのアドオン(拡張、プラグイン)をインストールする必要がある。もっとも、インストール対象のPCからLastPassのダウンロード・ページを開いて自動的に選択されるユニバーサル・インストーラを用いれば、インストール済みのWebブラウザへ一度にインストールできる。
インストーラは「lastpass_x64.exe」といったファイル名でダウンロードされる。Webブラウザをすべて終了してからインストーラを起動すると、LastPassのインストール・ウィザードが現れる。途中でLastPassのマスタ・アカウント(LastPassのサービス自体にログインするためのアカウント)を作成する必要があるので、ログインIDにもなるメール・アドレスを用意しておくこと。
ウィザードを進めると、Webブラウザに保存されていたID/パスワードがリストアップされる。これらはインストール中にLastPassへインポートできる(LastPassのクラウド上のデータベースに保存される)。
完全にパスワード管理をLastPassへ移行するなら、インポートしたID/パスワートをWebブラウザから消去できる。もちろん、そのまま残すことも可能だ(ただしLastPassとWebブラウザ内蔵のパスワード・マネージャとの二重管理になるので要注意)。
あとは指示に従ってインストール・ウィザードを完了させる。その後にWebブラウザを起動するとLastPassのアドオンが組み込まれたという通知が表示されるので、有効化するとツール・バーにLastPassのアイコンが現れるはずだ。まずはこれをクリックしてLastPassのマスタ・アカウントでログインすると、アイコンの色が黒から赤(サービス利用可能)に変わる。
これでLastPassの準備は完了だ。次はLastPassによるパスワード管理の具体例を紹介しよう。
LastPassのデータベースにID/パスワードを保存してあるWebページを開くと、LastPassがURLのドメインからID/パスワードを検索し、それぞれの欄に自動で記入してくれる。あとは[ログイン]ボタンをクリックするだけでログインできる。設定を変更すれば、自動ログインすら可能だ。
同じWebサイトで複数のアカウントを利用している場合は、LastPassのメニューからアカウントを選択して指定できる。
このメニューにある[編集]をクリックすると、ID/パスワードはもちろん、タイトルや分類のためのグループ名を変更したり、「ログイン状態を保持する」といったチェックボックスをオン/オフする設定を加えたりできる。
まだLastPassにID/パスワードを保存していないWebサイトへ手動でログインした場合、LastPassはそれを検知して、保存するためのダイアログなどを表示する。あとは数ステップの手動操作でID/パスワードを保存できる(もちろん以後は、前述のように自動記入されるようになる)。
既存アカウントのパスワードを変更したり、新しいログイン・アカウントを作ったりする際、LastPassはランダムなパスワードを生成して自動記入できる。その際、パスワードの桁数や文字の種類(英字、数字、記号)など細かい条件を指定できるので、Webサイトが受け付けられるパスワードを簡単に生成できる。30桁以上といった非常に長いパスワードの生成も容易だ。
LastPassに保存してあるID/パスワードは、LastPassのWebサイトからエクスポート(ダウンロード)できる。フォーマットはCSVで、サイトURLやグループ名などの付加情報も含まれる。これにより万一LastPassが利用できなくなっても、各サイトにログインできない事態は回避できるだろう。また、ほかのパスワード管理ツール(例えば1Password)からID/パスワード一覧をインポートできるとのことだ。
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