前述の通り、著作権は権利者が著作物の利用を独占できる強力な権利ですが、常にこのルールが適用されると非現実的なケースもあるので、特定の条件下で権利を制限する規定が定められています。ここで「制限」とは著作権者の立場からの見方なので、利用する側から見れば自由に利用できるケースということになります。
権利制限規定の中でも特に重要なのが、私的使用のための複製です。個人または家庭内での使用を目的にし、かつ、使用者自身がコピーをするのであれば自由にコピーできるという規定です。
例えば、家庭でのテレビ番組の録画、iPodへのCDの取り込み、書籍の「自炊」などが自由にできるのはこの規定があるためです。逆にこの規定がなければ非現実的なことも分かります。なお、録画したディスクや自炊したファイルを他人に配布すれば、これはもはや「私的」とはいえないでの著作権の侵害になります。
ここで、もう1つの条件である「使用者自身がコピー」に注意が必要です。書籍を自分でスキャンする自炊は前述の通り合法ですが、スキャンを代行業者に行わせると、この条件が満たされず違法となる可能性が高いとされています(手持ちのLPディスクをMP3化してくれる代行サービスがあれば便利そうなのに公式には存在しない理由も同じです)。
ここで、自分の本を自分で読むためにスキャンしているのであって、コピーが増えているわけではなく、権利者には損害が発生していないと主張しても現状の法律では著作権侵害は免れません。冒頭に著作権法には「今日のデジタルテクノロジとの整合性が取れていない部分」があると書きましたが、まさにその一例といえます。
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