高品質なネットワーク機能仮想化製品の普及に向けてウインドリバーが、低レイテンシな仮想化ツールを自社OS向けアドオンとして提供する。SDN、NFV市場でのシェア獲得を狙う。
ウインドリバーは2013年8月1日、自社が提供するYocto ProjectをベースとしたOS「Wind River Linux」向けのアドオンとして、新製品「Wind River Open Virtualization Profile(OVP)」の提供を開始した。現段階では、Intel XeonなどのIntel VTが利用できるアーキテクチャをターゲットとしている。
ウインドリバー製品はもともと組み込み機器やネットワークアプライアンスなどの中で利用されてきたが、これらの業界では、ネットワーク仮想化技術(SDN)やネットワーク機能仮想化技術(NFV)の普及・技術革新が進みつつある(関連記事)。
OVPは、OSSの仮想化ソフトウェアであるKVMに、Intel VTテクノロジやネットワークパススルーDPDKなどを活用してチューニングを施したもの。
通常のIAアーキテクチャを使ったネットワーク機能仮想化においてKVMなどの仮想化ソフトウェアをチューニングなしに利用した場合、パフォーマンスの一部を仮想化層の処理に充てるため、高いレスポンス性能・品質が要求されるキャリアグレードの要件を満たすのが難しい。一方で通信事業者側は、ネットワーク部分が物理的な制約を免れないことから、動的かつ俊敏なサービス提供に向けたインフラ整備の障害となっていた。
OVPは、こうした課題に対して、KVMをベースにした低レイテンシの仮想化機能をアドオンとして提供することで、通信事業者のデータセンターなどでの機動的なサービス提供が実現するとしている。
「ネイティブ環境での通信遅延はおよそ2〜4μ秒程度。チューニングなしのKVMを使って仮想レイヤを組み込んだ場合では、平均14.7μ秒程度、最大で800μ秒もの遅延が発生する。OVPを使うことで、平均3.7μ秒程度の遅延まで改善でき、ほぼネイティブ環境と同等のパフォーマンスを得られる」(製品説明を行った米ウインドリバー シニアプロダクト マネージャー ダビデ・リッチ氏)
KVMのチューニング・改良では、(1)割り込み遅延処理などを改良したレイテンシ低減、(2)DPDK vSwichを使った仮想スイッチングの改善、(3)クラウド管理フレームワーク「oVirt」の実装の3点に注力しているという。
なお、クラウド管理フレームワークについては、今回のリリースではoVirtを搭載している(関連記事)が、現在、OpenStackの統合を視野に入れた開発が進んでおり、2013年末〜2014年初旬にリリースする予定だとしている。
OVPは他の仮想化製品と比較して、パフォーマンス面で優位であることから、ウインドリバーではNFVやSDN市場向けの機器での採用に期待を寄せている。
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