米ブロケード コミュニケーションズ システムズのCEO、ロイド・カーニー氏が来日し、今後のデータセンターの姿についてプレゼンテーションを行った。
「未来のデータセンターでは、特定の機能に特化した物理的なネットワークデバイスはなくなり、x86サーバ上でネットワークファンクション(機能)が動作するようになるだろう」――米ブロケード コミュニケーションズ システムズのCEO、ロイド・カーニー氏は、2013年7月12日に開催した記者向け説明会においてこのように述べた。
カーニー氏はまず、ネットワークはサーバやストレージに比べ、仮想化やクラウドといったトレンドへの対応が遅れていると指摘した。例えばプロビジョニング1つとっても「携帯電話ならば、米国に行けばすぐにそのことを検出し、ユーザー認証や設定変更が行われ、すぐにローミング接続が提供される。それに対しサーバやストレージを新たに購入したときはどうか。必要なネットワーク設定を変更するだけで数週間もかかってしまう」(カーニー氏)。ポートの数は増える一方でネットワークは複雑化し、その運用管理に要するコストはふくらんでいるという。
その解決策としてブロケードでは、Virtual Cluster Switching(VCS)による「イーサネットファブリック」を提案してきた。イーサネットファブリックは、仮想マシンの移動などに迅速に追随可能な、フラットでシンプルなレイヤ2ネットワークのことだ。インフラの設計を大幅に簡素化するだけでなく、設定の自動化や拡張性、信頼性の向上も実現する。いくつかのベンダが提唱するアーキテクチャだが、ブロケードの場合は、メッシュ型接続をはじめ、SANの分野で長年培ってきたファブリック技術を適用することで、高い信頼性や効率を実現することが特徴という。
イーサネットファブリックによるネットワークインフラの簡素化が現在進行形の変化だとすれば、次に訪れる変化は、負荷分散やセキュリティといったネットワークファンクションのソフトウェア化、「Network Function Virtualization(NFV)」だ。それをAPIを介してコントロールするのがSDNの役割ということになる。
カーニー氏は、簡素化されたネットワークインフラの上で、仮想マシン上で動作するさまざまなネットワークファンクションが必要に応じて、オンデマンドで提供されるというのが、将来のデータセンターの姿だと述べた。
この目的を推進するため、ブロケードはOpenStackやOpenDaylightといったコミュニティに参画し、「オープンかつアジャイルでコスト効率のよいソリューションを提供できるようにしていく」(カーニー氏)。具体的には、VCSだけでなく、Vyattaをはじめとするブロケードの全製品でOpenStackをサポートするほか、商用版OpenStackを介して米Rackspaceや米Red Hat、米Piston Cloud Computingと連携していくという。
「コンピュータとストレージを効率よくつなぐには、ネットワークの効率も改善しなければならない。それを実現するのはソフトウェアベースのネットワークファンクションだ。物理的なネットワークデバイスはどんどん減っていき、x86サーバ上で動作するソフトウェアネットワークファンクションに取って代わられるだろう」(カーニー氏)。
日本法人であるブロケード コミュニケーションズ システムズの代表取締役社長 青葉雅和氏は、これに関連して「ネットワークがソフトウェア化することによって、最も変わっていかなければならないのは『人』だ」と述べている。これまで、ネットワーク設定の変更は、申請に従ってネットワークエンジニアがコマンドライン操作で作業していた。場合によっては外部の業者に依頼し、数日、数週間という期間を要することもあった。
今後はその代わりに、エンドユーザー自身がコントローラやオーケストレーション用ミドルウェアを用いて、直接設定を変更できるようになる。「エンドユーザーが自分でネットワークをコントロールしたいというニーズが高まっている。われわれもパートナーも変わっていかなければならない」(青葉氏)。
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