「終了前に、ただ伝えてほしい」――多くの開発者に届きますように。富士通、色覚障がい者のための診断ソフトウェア無償提供8月20日をもって終了

2013年8月20日、視覚障がい者や色覚障がい者のアクセシビリティを高めるための診断ソフトウェアツール群「富士通アクセシビリティ・アシスタンス」が無償ダウンロードによる提供を終了する。

» 2013年08月16日 11時52分 公開
[太田智美,@IT]

 筆者のFacebookに、とあるWeb制作会社の方から1通のメッセージが届いた。これを最初に目にしたとき、「いつもみたいな宣伝のお願いかな」と、筆者は恥ずかしながらそんなふうに思ってしまった。

 オープンソースの集まりで1度しか実際にお会いしていませんが、お願いがあります。

 富士通アクセシビリティ・アシスタンスというサービスが、2013年8月20日で提供終了します。つまり、あと20日。このソフトは視覚障がい者や色覚障がい者の方がどのように色を見ているかを確認できるツールです。Webサイト制作をしている人なら、今は必要なくても、いつか必要になるソフトです。

 8月20日までにダウンロードすれば、8月21日以降もローカル環境で普通に使えるので、なんとかメディアで紹介して頂き、提供終了するまでに、少しでも多くの人に知ってもらいたいと考えています。

 紙媒体だと、とても間に合わないのですが、ネット媒体なら、なんとかなるかも!と思い、お願いしたいと思いました。

 視覚障がい者や色覚障がい者という障がいに興味がないかもしれませんが、外見では判断できない障がいなので、気付いていないだけなのです。

 よかったら、媒体で富士通さんのソフトを紹介して、最後にもう少しこういったソフトを普及させてもらえないでしょうか?

 よろしくお願いします。


 2013年8月20日、視覚障がい者や色覚障がい者のアクセシビリティを高めるための診断ソフトウェアツール群「富士通アクセシビリティ・アシスタンス」が無償ダウンロードによる提供を終了する。対象は、富士通アクセシビリティ・アシスタンスの3つのツール群「WebInspector(ウェブインスペクター)」「ColorSelector(カラーセレクター)」「ColorDoctor(カラードクター)」それぞれの日本語版、英語版、中国語版、韓国語版だ。

 WebInspectorは、Webサイトのアクセシビリティを診断するソフトウェアで、主に高齢者や視覚に障がいのある人にとって重要な問題を指摘するというもの。ColorSelectorは、背景色と文字色の見やすさを判定するソフトウェア。ColorDoctorは、ディスプレイ上の表示内容をグレースケールや各色覚特性に応じてシミュレート表示するソフトウェアである。どれも2013年8月20日までなら、無償でダウンロードできる。

 筆者も実際にダウンロードして、@ITのサイトを検証してみた。まずは、WebInspector。URLを入力し、「チェック開始」のボタンを押すだけで、詳細なレポートが表示されることに驚いた。

URLを入力し、「チェック開始」のボタンを押す URLを入力し、「チェック開始」のボタンを押す
レポート1 レポート1
レポート2 レポート2

 続いて、ColorSelectorを実行。これは、色を選択するだけで、その色がどんな障がいを持った方に見えにくい色なのかが一瞬にして分かる。

ColorSelector ColorSelector

 最後に、ColorDoctorを起動。URLを入力して、変換フィルタを対象者に合わせ、「画像を変換」ボタンを押せば実際にどう見えているのかが分かる。

第一色覚(赤) 第一色覚(赤)
第二色覚(緑) 第二色覚(緑)
第三色覚(青) 第三色覚(青)

 Facebookにメッセージを送ってくれた読者は言う。「友人がたまたま色覚障がい者だったため、Webサイトの色を分かりやすくしたくて、このソフトを使い始めました。色覚障がい者は外見では分からないため、自己申告しない人も多いのです。信号機などは、色ではなく光っている場所で判断するようです。このソフトは、Webデザイナーがちょっと色に気を使うだけで、簡単に対応できます。『終了する前に、知ってもらいたい』――ただそれだけで、何の利害関係もないですが、連絡させていただきました。パブリックドメインやオープンソースで、なんとか残せないか富士通に掛け合ってみたんだけど、ダメでした。1人でも多く開発者にダウンロードしてもらうために、提供が終了する前に記事にしていただくことが最後の望みです」。

 視覚障がい者や色覚障がい者のためのソフトウェアは、これ以外にももちろんある。しかし、2013年8月20日、そのうちの1つのサービスが消えようとしている。

 この記事は、たった1人の読者の声によって書くことができた記事である。1人でも多くの開発者に届きますように。この場を借りて、貴重な情報と熱い想いを届けてくれた@ITの読者に感謝を申し上げます。

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