チームの運営には、かじ取りが必要だ。今回は、ファシリテートスキルを活用して、効率的に目的に進めるようにチームを導く方法を解説する。
※この連載は、『ITエンジニアのためのチームリーダーシップ実践講座』(上村有子著)の第1章〜第3章を、著者と出版社の許可の下、一部修正して転載するものです。
日々の仕事では、小さな話し合いから大きな会議まで、意見を交換しながら物事を決めていくことになる。リーダーの意見の押し付けや、多数決による意思決定ばかりでは、チームの真のパワーを引き出せない。あなたのチームには、会議中、黙って座っているだけのメンバーはいないだろうか? メンバーの意見をうまくくみ上げて合意を取り付けてこそ、チームの大きな成果が期待できる。
チームで作業する大きなメリットは、メンバーの知恵を結集できることです。メンバーが話し合いを通して意見をぶつけ合うことで、より良い結果に結び付きます。しかし、この一連の作業をかじ取りなしで進めると、限られた時間内に効率よく適切な結果に結び付けるのが難しくなります。また、話し合いの場において、メンバーみんながリーダーの意見に素直に従ってくれるとは限りません。
「ファシリテートスキル」とは、このかじ取り役に必要なスキルです。狭義には「会議を進行するスキル」を意味し、広義には「チーム活動全般で、チームが効率的に目的に進んでいけるよう導くスキル」を意味します。
米国では現在、ファシリテーションサービスを行う専門の機関や会社が広く活用されています。企業が自社内にファシリテーションを行う人(ファシリテーター)を養成したり、プロのファシリテーターが外部の企業やプロジェクトに派遣され、中立な立場で会議を進行したりすることも珍しくありません。最近では日本でもファシリテーションの重要性への認識が高まり、ビジネス誌で特集されたり、ビジネススキルの研修にファシリテーションを取り入れる会社が増えたりしています。
チームの運営でファシリテーションスキルを取り入れると、リーダーの意向をメンバーに浸透させやすくなります。
ファシリテーションの仕組みを仕掛けることで、合意形成に至るプロセスをコントロールできます。話し合いの中で、軌道修正しながら合意に導くのがリーダーの役割です。メンバー同士が率直に意見をぶつけ合い、合意事項に対する理解を深めていくことで、より意識の深いところで合意に至ることができ、メンバーの自覚や自律性も高まります。
では、どんな仕掛けが必要か、話を進めていきましょう。
重要! 会議の合意事項に対する深い理解が、メンバーの自律性を高める。
会議の開催に当たっては、会議の目的、つまり話し合うべき点を明確にする必要があります。チームのキックオフミーティングであれば、チームの目的や、具体的にどんな目標を達成しなければいけないのかをメンバーに十分に説明し、知らしめます。
そして実際に合意形成を進めていきます。ここではチーム内での打ち合わせを例に、そのプロセスを見てみましょう。『ファシリテーションの教科書』(野村総合研究所 名倉広明著 日本能率協会マネジメントセンター刊)によると、会議やチーム活動の運営では、常に次の5つのプロセスを意識すべき、とされています。
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