最初の「巻き込み」段階では、メンバー全員に何かしら発言してもらい、参加意欲を引き出します。メンバーそれぞれに当事者意識を持たせ、傍観者としてただその場にいるのではなく、積極的に参加してもらいます。
次の「ぶつかり」段階では、あえて意見を衝突させ、テーマを深いところまで掘り下げます。このぶつかりがないと、表面的な理解に終わってしまい、細かい意見の食い違いを見落としてしまう可能性があります。それらは後になって問題点として浮上してくることにもなりかねません。早い段階で、隠された要素をできるだけ多くあぶり出して、議論の俎上(そじょう)に載せておくことが、しこりを残さないポイントです。
次の「意味付け」では、出そろった意見を全員で整理します。メンバーの目を個々の詳細な点からいったん離し、全体を俯瞰するような視点に変えさせます。全体を見ることであらためて、客観的に、合意や対立する点が浮き彫りになり、話し合うべき方向が明らかになります。
意味付けが済んだら、最終的に「決める」ための判断基準を出す方向へ意図的にかじを切ります。これが「軸出し」です。
多数決を取ると、何となくその場の雰囲気で物事が決まってしまうこともあるでしょう。しかし、そのようにして決めた結論では、メンバーの意識の奥深くまで浸透したとはいえません。メンバー全員が結論という同じ方向に向かっていくために、出そろった多数のアイデアや意見をふるいにかけるための判断基準を精査していきます。この基準こそが「軸」です。この段階が最も重要で、メンバーの知恵を絞り、合意を得ることが必要です。
プロセスの最後は「結び」です。前の軸出しで決めた判断基準に照らして、メンバーのアイデアや意見を集約し、結論にまとめます。そして、その結論を前に、当初の目的に合致しているかどうか、成果を再確認し、実際の行動に結び付けます。
打ち合わせの決定事項が不承不承のものでは、今後の行動の支障になります。最後の結びで、みんなで合意に至ったプロセスをもう一度確認して、決定事項を自分のものとして再認識してもらい、各自の責任を自覚するよう促します。
5つのプロセスのうち、3つ目の「意味付け」までは、経験を積んだリーダーなら意識しなくても自然にやっていることかもしれません。しかし、4つ目の「軸出し」に進むには、あえて仕掛けていく必要があります。そうしないと、なかなか場の空気は変わらないものです。
皆さんが今まで参加してきた中で、うまくいった会議というのは、たとえ対立意見があっても、十分に議論を尽くして互いの理解を深め合い、結論を出すころにはすがすがしい気持ちになるような会議ではなかったでしょうか。「結論が出たころ」ではなく「結論を出すころ」という、自分主体の表現になっているのも大きなポイントです。
リーダーは、この5つのプロセスを知識として知っているだけではなく、1段階目から2段階目へ、2段階目から次の段階へと仕切っていかなければなりません。これには、その場の状況を見ながらコントロールしていく必要があるので、場数を踏むことが欠かせません。日々の話し合いの場をリーダー自身のトレーニングの場と位置付け、経験を積んでいきましょう。
重要! 最初に会議の目的を明確にする。
重要! 会議を5つのプロセスでコントロールする。
ファシリテートスキルの効能、お分かりいただけましたでしょうか? 次回(3月掲載)は、それぞれのフェーズでリーダーが意識すべきポイントを解説します。
上村有子
エディフィストラーニング インストラクター。外資SIer、証券会社を経て2000年に野村総合研究所入社。現在、情報化戦略、コンプライアンス、ビジネスコミュニケーション領域のコース開発、講師。専門分野はBA(ビジネスアナリシス)、コミュニケーション。
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