モダンなアプリを開発するためのモダンなアプリ開発環境連載:Visual Studio 2013対応フレームワーク「.NET 4.5.1」解説(2/3 ページ)

» 2014年02月21日 12時16分 公開
[かわさきしんじ,]

VSとVS Online

 言うまでもなくVS 2013はマイクロソフトが提供する最新のアプリ開発環境であり、さまざまな面でアプリ開発の生産性が高められている。一方のVS Online(以下、VS Online)はTeam Foundation Services(TFS)をベースとした新たな開発環境である。

VS 2013(上)とVS Online(下)
VS 2013(上)とVS Online(下) VS 2013(上)とVS Online(下)

 VSは優れたアプリ開発環境だが、今の時代はアプリを開発すれば、それで全てが終わりなわけではない。ユーザーやビジネスの要望をくみ取りながら、短い間隔でインターネットアウェアなアプリをリリースしながら、これを安定して運用していく必要がある。

 こうした点から見ると、VSはアプリ開発そのものを加速させるためのツールであり、VS Online(TFS)は、アプリ開発の周辺を固めるALM管理を効率的に行うためのツールといえる。そして、そのためコードリポジトリ、バグやタスクの追跡管理、ビルド/テスト/配置の自動化、アプリのテストアプリの挙動の監視(Insights)、リリース管理などに関連する機能が提供されている。なお、ビルドサービスとしてVS Onlineを活用しようという方には、TFSを対象としているが「連載:いまどきのソース・コード管理」が参考になるだろう。

 また、VS Onlineでは、“Monaco”(コードネーム)と呼ばれる独自のエディターも提供されている(ただし、現状ではVS Onlineというよりは、Windows Azureとの結び付きが顕著であり、Windows Azure Webサイトプロジェクトの編集のみが可能)。Monacoを使えば、VS無しでも(つまり、Surface 2などのWindows RTデバイスでも)ある程度のコード編集が可能となる。さらに、VS OnlineはVS以外のIDEでも利用可能だ(Eclipse、XcodeからもVS Onlineに接続できる)。なお、Monacoについては「Visual Studio Online “Monaco”入門」が詳しいので参考にされたい。

 このようなWin32以外のプラットフォームへの対応は、前回までに見てきたアプリのデバイス&サービス対応に呼応している。デバイス&サービスの時代においては、インターネットを介して多種多様なデバイスに向けてサービスを提供するのがアプリの本筋の形態である。この動きに対応して、開発環境もネットワークを介して、さまざまなプラットフォーム/デバイスからサービスとして使えるようになりつつあるのだ(そして、VS Onlineがデバイス&サービス時代に対するクラウド上での呼応だとすれば、VSでのXamarinサポートはデバイス&サービス時代に対するデスクトップ上での呼応である)。

 とすると、現時点でMonacoでのコード編集が可能なのが主にWindows Azure Webサイトであることも、JavaScriptやその他のスクリプト言語に慣れ親しんでいる開発者(これまでにマイクロソフト製品をあまり使ってこなかった開発者)にマイクロソフトのテクノロジを使ってもらうという意味では正しい選択なのかもしれない。

 .NET構想が提唱されたころ、Javaによって、マイクロソフトはその地位を大きく揺さぶられていた。自社のテクノロジだけで世界を覆うのは非現実的。そのことをマイクロソフトが認識し、その後の世界の在り方を熟慮した上で登場したのが.NETである。

 これと同様に現在、非マイクロソフトプラットフォームのデバイスによって、マイクロソフトの地位はさらに激しく揺さぶられている。自社のOSを搭載していないデバイスでモバイルの世界はすでに覆われてしまっている現実。これをマイクロソフトが認識し、登場したのがデバイス&サービス戦略だとしたら、マイクロソフトは.NET構想を提唱したときの同じくらいの覚悟を持って何度目かの大きな変革期を迎えているのだとも考えられる。

 ただし、前者ではテクノロジ間の相互運用性をうたいながら自社のテクノロジとエコシステムは内向きに維持しようとした感があるのに対して(相互運用性を実現するインターフェースの内側は自社のテクノロジを核としたエコシステムで固め、そのコアとして必要となったのが.NET)、後者では意識的に他のプラットフォームに対して開放的になっている点(マイクロソフト自身がOSS的なアプローチを取っている)は大きな違いといえる。

Copyright© Digital Advantage Corp. All Rights Reserved.

RSSについて

アイティメディアIDについて

メールマガジン登録

@ITのメールマガジンは、 もちろん、すべて無料です。ぜひメールマガジンをご購読ください。