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» 2014年03月25日 18時00分 公開

SDN Conference 2014で語られたテレビ朝日の「SDN革命」広がる! SDNの世界探訪(4)(2/2 ページ)

[廣瀬治郎,@IT]
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SDNによって得られる本質的なメリットとは

 一般的にいわれるSDN導入のメリットとしては、データセンターならばハードウェアコストや人件費の削減、機器スペースの削減、管理負担軽減など、企業であればネットワークの可視化、構成変更の柔軟性、セキュリティや運用コスト削減などが挙げられる。

 「当社では、いつでも映像回線やP2P接続が提供できることの他、セキュリティの担保とインターネット接続の両立、ネットワーク設備の重複回避、自由度の向上など、多数の実務的なメリットを享受することができました」

 これを踏まえて阪田氏は、「SDNで得られる本質的なメリットとは何か」という問いを聴講者に投げ掛けた。

 同氏の答えはこうだ。「やはり物理ネットワークと仮想ネットワークを高度に分離できること、そして仮想ネットワーク同士を高度に分離できることです。これは物理サーバーと仮想サーバーの関係に似ています。両者を管理するエンジニアが異なっても構わないのです」

 レガシーなパーティションネットワークの場合、物理レイヤーからサービスに近いレイヤーまでエンジニアが設計・構築する必要があった。SDNの場合、物理ネットワークや冗長化プロトコルの部分と、L2/L3のサービスに近いSDNの部分が完全に分離しているため、サービスを中心としたネットワークデザインが実現できる。

 「テレビ朝日のSDN革命とは、SDNスイッチがあればよいという“ロケーションフリー”、どこに何をつなぐか/つながないかを迅速に制御できる“俊敏性”、そして最後の“サービスを中心”としたネットワークデザインと運用を実現できたところにあります。これがさらに高度化することで、企業ネットワークをプライベートクラウドのように活用できるでしょう」

 最後に阪田氏は、SDN導入の留意点として、次のような項目を挙げた。

  • 全体最適化か、個別最適化か
  • 統合すればするほど作業や傷害の影響が大きくなる
  • 場所によるセグメント分けにもメリットがある
  • SDNの種類と適用範囲を決めておく
  • 要件が決まっていればレガシーネットワークでも実現できる

1980年代からあったSDNの“旬”は今

 本カンファレンス最後のセッションの1つが、小川氏による「SDNは何故バズワードになったのか?」である。

「Geekなぺーじ」を運営するインターネット評論家の小川晃通氏

 「決めようという動きはあるものの、今のところ、SDNの定義というものが存在していません。皆さんがそれぞれ自分の思うSDNを語っており、それが事実上の“SDN”となっています。だから、今日の発表も私の独断と偏見による“SDN”です」(小川氏)

 講演タイトルに掲げた疑問への答えとして、小川氏が有力なものとして挙げるのが「OpenFlowを説明するときにSDNという単語が出てきた」という説である。特に日本でOpenFlowが盛り上がった2011年ごろ、米国でOpenFlow関係者が記者の取材を受けているときに、「Software-Defined Networkingなのか」「そうだ」というようなやり取りがあり、SDNという単語がよく使われるようになったというのだ。

 「SDNという言葉自体は新しいものではありません。1986年に発行されたNETWORKWORLD誌に『SDNs arrive』という記事が登場しており、本文にも『Software-Defined Network』と注記しています。今のSDNは『Software-Defined Networking』であり、1985年頃のSDNと比べると『ing』の部分が異なります。また時代背景が全く違うので、頭文字は同じでも、1985年頃と今では違うものです。しかし、ソフトウェアでネットワークを作るという概念そのものは、以前からあったのです」(小川氏)

 小川氏は、サン・マイクロシステムズが掲げていた「The Network Is The Computer」という言葉を取り上げ、ネットワーク全体をコンピューターとして機能やサービスを提供するという流れの1つとして、SDNが存在しているのではないかという持論を掲げた。

 また同氏は、クラウドや仮想化のトレンドが進むにつれ、システムの物理構成と論理構成の相違から生じる複雑さがさらに増すことから、「自動化」が新たなポイントとして語られることが多くなったと指摘する。技術記事についても、ChefやOpenStackなどの大規模管理手法の紹介が人気になっているそうだ。その中には、ネットワークの自動設定も含まれているという。

 「Facebookが2009年に発表した“管理者1人当たりのサーバー管理台数”は約90台でした。ところが2013年には、1人当たり2万〜2万6000台に増大したというのです。自動化が必要となるのは当然です」

 小川氏が主張するのは、コンピューターにOSが必要であるのと同様に、クラウドという仮想的なコンピューターを制御するOSの一部としてSDNが存在するという考え方だ。

 「SDNには大きく2つあると思います。ソリューションを販売するヒトの語る“Seeds”のSDNと、自分で整備するヒトが語る“Needs”のSDNです。最近は“Needs”から語るべきだという意見が増えていますね。つまり、SDNだから使うのではなく、必要なことを考えたらSDNになったというアプローチです。Needsを理解した上で、適切なSeedsを見つけることが肝要です」

 小川氏によれば、「本当に楽しいSDN」は表面化しないのではないかという。Needsを発見すること自体が差別化要因・競争力になるため、見つけた人はあまり表に出したがらない。そうした水面下でのSDNの検討が進んでいるのではないかと予測している。

 「2013年には、幾つか面白いSDNの適用事例が登場しました。また、NGNやRSVPやマルチキャストが設計されたころにSDNという考え方があったら、違ったものが出来上がったかもしれない”などと考えることもあります。私は、この考え方が非常に重要だと思っています。今こそ、SDNの考え方で新しいことを考える時期です」

 また小川氏は、「SDN」というワードのプロモーション力・訴求力にも注目しているという。

 「“乗ったもの勝ち”という点は確かにありますが、物事には旬というものがあります。2013年がピークのように見えましたが、今後、下火になるかさらに盛り上がるかは分かりません。この流れは、“クラウド”に似ているのかもしれません。登場時は違和感があったものの、今では一般的になっています。SDNが同じ道をたどる可能性もあるでしょう。いずれにせよ、トレンドの活用は戦略的に行いたいものです」

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