4月に組織統合を発表した日本ネクサウェブが、5月19日、企業UI/UXプラットフォームの新製品「nexacro platform」を出荷した。この製品は統合開発環境を使った生産性の高いWebアプリケーション開発を支援。それとともに、デスクトップPCからスマートフォン、タブレット端末までを1つのソースコードで展開できるワンソース・マルチユースを実現するという。
2014年5月19日、日本ネクサウェブが新製品「nexacro platform」の出荷を開始した。
これは同社の企業向けUI/UXプラットフォーム「XPLATFORM」の後継となる製品である。XPLATFORMではリッチインターネット環境の実現に特化していたが、新製品ではHTML5にも対応した。nexacro platformを企業情報システムの中核に置くことにより、業務用Webアプリケーションを、OSやブラウザー、スクリーンの違いを超えてシームレスに提供でき、プログラムの「ワンソース・マルチユース」が可能になるという。
日本ネクサウェブ 副社長 矢形勝志氏は次のように説明する。「スマートフォンやタブレット端末などモバイル環境の浸透により、企業でもこれらを活用する気運が高まっているが、これまでは開発もメンテナンスもデスクトップPC環境と全く別ものとして扱わざるを得なかった。現在も、その対応は戦略の全体方向性が定まらないまま進んでいる。しかし、この分野は動き続けており、主流はいつ変わるかもしれない。その都度キャッチアップしていたのでは、開発のコスト負荷が大きいが、nexacro platformが中核にあれば、いつでもその変化に即応できる」
製品の特徴は大きく4つある。
1つ目は、「UX Studio」と呼ばれる統合開発環境を備えていることだ。これはVisual StudioやEclipseなどと同様のGUIを持ち、JavaScriptで記述する。このUX StudioのみでデスクトップPCからモバイルまで業務用アプリケーションを幅広く開発できる。具体的な開発は、マウスによるボタン操作で画面上にコンポーネントを配置し、詳細なプロパティを設定していくスタイルだ。ブラウザーの種類ごとに別のソースコードを用意する必要はなく、nexacro platformが相手のブラウザーを判断して出し分ける。
デスクトップPC向けに開発したWebアプリケーションを、画面サイズや解像度の異なる端末向けに展開したい場合は、「MLM(Multi Layout Manager)」「Position」「STEP」といったUX Studioに搭載された機能を使うことで個別開発を回避できる。
このうち、MLMは画面を構成するコンポーネントをマウスのドラッグ&ドロップ操作で変更できる機能であり、Positionは画面レイアウトをあらかじめパーセント設定しておくことで、画面サイズに合わせてそれが自動リサイズされる機能である。STEPは、スマートフォンなど画面サイズが大きく異なるデバイスのために、画面レイアウトを分割して配置できる機能だ。
現在、これらの機能を統合した新機能も開発している。あらかじめデスクトップPC、タブレット端末、スマートフォン用の画面レイアウトを1つ設定しておけば、多様な画面サイズに合わせて自動的にリサイズできるようになるという。
2つ目は、ネイティブアプリを開発し、それをクライアントにインストールして利用する「RUNTIME Version」と、プログラムをインストールすることなくWebブラウザーだけで使用できる「HTML5 Version」という2つのバージョンが存在することである。
モバイル端末の持つカメラやGPSなどデバイス機能を生かしたい、クライアントの操作性やパフォーマンスを重視したいというなら前者、クライアント管理の容易性を重視するなら後者と、目的によって選択できるのが特徴という。または、社内は前者、外部の協力会社には後者といった具合に、同じアプリケーションを配布先によって展開し分けることも可能なようだ。
3つ目は、nexacro platformがUI/UXに特化しており、メインフレームシステムやデータベース、ERPパッケージなど、いろいろなバックエンドシステムと連携する点である。nexacro platformが提供する「X-API」を通じてバックエンドシステムのデータを取得、新たなUI/UXを持ったシステムとして再構成できる。X-APIはJDK/JREの1.4以上のJSP/サーブレットで活用可能だ。
実際、XPLATFORMではSAPやAS/400システムのUI構築を行った事例があるという。
4つ目は、業務効率向上を考えたコンポーネントの存在である。UX StudioにはGridやTab、Buttonといったコンポーネントが幾つも搭載されている。それらのデザインや機能は過去の開発案件で挙がってきた要望を取り入れて磨き上げたもので、手を入れることなくそのまま使えるところに利点があるとしている。
日本ネクサウェブ 取締役 兼 第一事業部長 崔彰桓氏は、新製品説明の中でこう語った。
「当社が顧客対象としているのは、複雑な業務処理を必要とするBtoBビジネス企業。nexacro platformはOS、ブラウザー、スクリーンの違いを吸収するプラットフォームの役割を果たし、これにより開発工数を20〜30%は削減できる。またUI/UX構築についても自信があり、1〜2日といった単位で業務処理短縮効果を上げられると確信している」
確かに、モバイル環境の活用は企業競争力を上げる上で大きなテーマとなっている。こうしたプラットフォームの導入で、展開先にかかわらず体制を1本化し、工数やコスト負荷を低くしてWebアプリケーションを開発・運用することに、企業は魅力を感じるだろう。しかし、モバイル端末やブラウザー周りは環境変化が激しい。企業がそれらに迅速に対応できるかどうかは、開発プラットフォームがそれらに迅速に対応するかどうかに掛かってきそうだ。
nexacro platformのライセンス体系は3パターン。サーバーの仕様によるコア数とアプリケーションの数を基準に課金する「Server Plus」、エンドユーザーの最大ユーザー数によって課金する「Named User」、年間ベースで課金する「Subscription」(最低3年契約)だ。RUNTIME VERSIONとHTML5 VERSIONを混在させて利用する場合は、「Duo Pack」というライセンスが用意されている。Named Userの場合で50ユーザー100万円から。
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