システム構成が動的に変化する仮想化・クラウドの浸透により、もはや人手だけによる運用管理は難しくなっている。本特集では、ビジネス展開に即応するインフラ整備の必須要件、運用自動化のポイントをツール面、設計面などあらゆる角度から掘り下げていく。
経営環境変化が速い近年、俊敏なビジネス展開を支える上で、ITインフラ整備のスピードと柔軟性が強く求められている。仮想化、クラウドはその大きな武器となったが、一方でインフラの複雑化を招き、運用管理の負担を増大させている。
特に、もはや当たり前となった仮想環境では、以前のようなハードウェアの監視だけで安定運用を担保することは難しい。パッチ当てやサーバーのヘルスチェックといった従来からの業務に加え、各仮想マシンのリソース配分や稼働状況の管理、ニーズに応じた仮想サーバーのプロビジョニング、動的に変わるシステムの構成管理など、仮想環境特有の作業も含めて正確・迅速にこなせなければ、仮想化のメリットを享受することはできない。
しかしコスト削減という命題の下、運用管理スタッフの数が削減され、リソース・スキル不足に悩む企業も多い。結果として、そのメリットが得られないどころか、かえって逆効果になってしまった例も少なくない。システムインフラが複雑化している中で、人的ミスを確実に抑止しながら、仮想化・クラウドのスピード・効率というメリットを引き出すためには、もはや人手中心の運用管理では限界があるのだ。
こうした中、今あらためて「運用自動化」が注目されている。2009年、日本におけるサーバー仮想化の黎明期にも一度は注目されたが、当時、運用自動化ツールを導入したのはデータセンター事業者など一部の企業に限られていた。だが現在は、以上のような仮想環境の運用課題に悩む企業が増えたことや、自動化が効率的なリソース運用の鍵を握るプライベートクラウドの認知度向上などを受けて、導入企業は一般企業にまで広がっている。
ツールも充実している。国産・外資の統合運用管理ツールベンダーから運用自動化ツールが出そろっている他、「Zabbix」「JobScheduler」といったオープンソースソフトウェア(以下、OSS)を導入する企業も増えている。@IT編集部が2014年7〜8月に行った読者調査でも、「運用管理ツールに期待する機能」として「運用プロセスの自動化」がトップを記録した。
だが言うまでもなく、ツールを導入しさえすれば運用自動化を実現できるわけではない。現在の運用プロセスの棚卸しと整備をはじめ、最適なツールの選択、適切な導入まで、複数のハードルが存在する。
ではビジネス要請に柔軟・迅速に対応できるインフラ運用を実現するためには、いったいどのように運用自動化に取り組めばよいのだろうか?――本特集「運用自動化で実現する、クラウド時代の運用スタイル」ではそうした課題認識に基づき、自動化設計の考え方から、ツールの選び方、導入のポイントまで、現場視点で掘り下げていく。商用ツールとOSSの比較、「Amazon Web Services」や「OpenStack」環境における自動化にも視野を広げ、“一般企業における運用自動化の現実解”を追求していく予定だ。
第一回となる今回は、IDCジャパン ソフトウェア&セキュリティ シニアマーケットアナリストの入谷光浩氏を取材した。ここでは同氏の言葉を軸としながら、同テーマにおける過去の取材データも織り交ぜつつ、運用自動化の現況と、自動化設計のポイントを洗い出してみたい。
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