運用自動化、ツールの種類やOSS/商用の違いを問わない運用設計の作り方、進め方特集:運用自動化ツールで実現する、クラウド時代の運用スタイル(1)(4/4 ページ)

» 2014年08月27日 18時00分 公開
[内野宏信@IT]
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システムのゴールを見据えた自動化設計が大切

 というのも、仮想環境の運用自動化を突き詰めると、「必要なときに、必要なリソースを、ユーザーがセルフサービスで調達/廃棄できる」、NIST(米国国立標準技術研究所)定義におけるプライベートクラウドの実現に自ずとつながっていく。そして、今運用自動化を導入/検討している企業も、単なるコスト・工数の削減だけではなく、その先にあるプライベートクラウドの完成を念頭に置いている例が多い。もちろん、全ての企業にプライベートクラウドが必要なわけではないが、運用プロセスの標準化・自動化の達成度が、インフラ整備のスピード、ひいてはビジネスの競争優位を直接的に左右することはほぼ間違いないためだ。

 入谷氏は仮想化によるリソースのプール化が入り口となる、プライベートクラウド実現に向けたロードマップを提示する。図中の円グラフは仮想化を導入している企業、約500社のうち、「プライベートクラウドを構築している」と答えた134社を対象にした各レベルの達成度の調査結果だ。

ALT 図5 仮想化からプライベートクラウドに至るロードマップと、各要件の達成率(IDCジャパン調べ/2014年発表)

 入り口となるリソースのプール化が100%なのは当然として、提供するITサービスの標準化、サービス提供のための運用プロセスの標準化・自動化については、半数以上がオーケストレーターなどの導入によってすでに達成している。ただ、ユーザーがサービスポータルからリクエストすると、サービスが全て自動的に配備される「サービスポータル化」となるとさすがに達成率は低く、“本当の意味でのプライベートクラウド”を構築できている企業はまだ非常に少ないようだ。

 「だが標準化・自動化の達成度や、プライベートクラウドに向けたインフラ構築の意識の高さには、注目する必要がある」

 入谷氏はこのように述べ、「まずは自社システムの現状を可視化し、ビジネス要請に応じて、プライベートクラウドなのか、仮想環境とパブリッククラウドのハイブリッドなのか、システムの方向性を見極める。その上でゴールに最適な全社の運用プロセスを設計し、そこに近付けていく形で個々の運用プロセスを標準化・連携させていく。(運用自動化ツールを段階的に導入していくにしても)、中期的な視点を持ってツール導入に当たった方が効果は大きいと考える」とアドバイスする。

 運用自動化に伴う各作業項目の標準化、それらを連携させた一連のプロセスの標準化は、つまるところITILに倣うことになる。だが、インフラが複雑化し動的に変化し続けている今、たとえITILを導入していても、プロセスがいつしか属人的になっていたり、形骸化していたりする例は多い。その点、運用自動化ツールの導入を前提にプロセスを見直すことは、現在の弱点の発見につながる。また運用自動化ツールを導入して定型作業から人の手を解放することで、人的ミスやガバナンスの乱れを防止できるとともに、人がより高度かつ創造的な本来業務に集中しやすい環境が整う。

 開発分野でもスピード・柔軟性が求められている今、それを稼働させるインフラも、ビジネスの動きにリニアかつ安全に連動していかなければならない。これを受けて仮想化、クラウドという新しいインフラを導入したものの、「運用管理の基本スタイルは従来からあまり変わっていない」ということはないだろうか? 冒頭で述べた仮想化、クラウドが逆効果になってしまうパターンは、そうした“インフラと運用スタイルの乖離(かいり)”に起因する例が多い。自社の場合はどうなのか、あらためて検証してみてはいかがだろう。場合によっては「人ごと」「まだ先のこと」であった運用自動化が、がぜん現実味を帯びてくるのではないだろうか。

 次回は「個々の作業項目の自動化」に焦点を当て、その手段として注目を集めている「Zabbix」「JobScheduler」「Sensu」など、運用・監視系の主要OSS、10種類の特徴、使い方などを徹底解説する。

特集:運用自動化ツールで実現する、クラウド時代の運用スタイル

インフラ整備に一層のスピード・柔軟性が求められている今、仮想化、クラウドは企業にとって大きな武器となった。ただ運用管理を人海戦術で行うスタイルでは、そのメリットを生かし切ることは難しい。サーバー配備や監視など、あらゆる定型業務のミスを抑止し確実・迅速に行える「運用自動化」を取り入れることが、仮想化・クラウドを生かす大前提となるのだ――本特集ではツール導入の要件からOSS/商用ツールの使い方、ツール同士の比較まで、「運用自動化」を徹底的に深掘りする。




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