「あなたはデータ分析のアーティスト」、支持を広げる米Tableau SoftwareTableau Conference 2014

「データ分析はクリエイティブなプロセスだ」。2014年9月9日(米国時間)に開幕したTableau Conference 2014で、CEOのクリスチャン・シャボー氏は、クリエイティブなデータ分析によって組織や社会に価値をもたらそうとするユーザーを支援していくと話した。

» 2014年09月12日 09時00分 公開
[三木 泉,@IT]

 米アップルが2014年9月9日(米国時間)、iPhone新製品やApple Watchを発表したころ、シアトルでは、米Tableau Software CEOのクリスチャン・シャボー(Christian Chabot)氏が5000人以上の聴衆を前に、データ分析はクリエイティブなプロセスだと訴え、ある種の興奮を生み出していた。

シャポー氏は、データ分析をする人々に求められるものは、アーティストにもとめられるものと同じだという

 「現代の社会や組織において、データを駆使する人たちは、クリエイティブな問題解決ができる、もっとも重要な人々として台頭しつつある。こうした人たちのクリエイティブな能力を解き放つことが、現代のビジネス・インテリジェンス戦略における最も重要なゴールだ」。

 Tableauの製品は、BIツールに分類されている。だが、必ずしもデータウェアハウスを前提とした、フロントエンドとしての目的しか持たないツールではない。データウェアハウスがなくとも、Excelスプレッドシート、ソーシャルメディアデータ、オープンデータなど、あらゆるデータを取り込んで、これらのデータと会話し、試行して、ビジネスや研究における問題を解決できるツールだと同社はいい、実際にそうした機能を当初から提供し、その後も拡張してきた。

 だから、Tableauが製品開発の中心的なターゲットとしているのは、企業の情報システム部門ではない。データアナリスト(データサイエンティストに限定されない)と呼ばれる人々、さらにマーケティングやセールスなど、ビジネス部門でデータ分析を武器にしたいと考える人々だ。Excelなどでデータを「まとめる」のではなく、関係のあるデータを集め、組み合わせ、視覚化して俯瞰し、あるいはドリルダウンして、ビジネスアクションの可能性を見出そうとする人々を想定している。

 Tableauは、これらの人々を「data rock star」「data artist」などと形容する。今回のカンファレンスでは、基調講演のステージや会場ロビーに来場者の写真やTwitterフィードをちりばめ、「あなたたちが主役なのだ」と伝えている。data rock starたちのために、会場には常にロックが流れ、2日目の夜には5ステージに13ものアーティストが登場する野外ライブが開催された。

あなたたちがヒーローなのだとメッセージを送る

 「データ分析とアートは正反対の存在だと考える人もいるが、この2つはとても似通っている。どちらも、新しいものを作り上げていくことが仕事だ、アーティストは真実を明らかにし、意味を見出す。そして世界には違う見方があるということを伝えようとしている。あなたたちも同じだ。データ分析とアートはどちらも高度な観察力、好奇心、クリエイティブな問題解決を必要とする」(シャボー氏)。

 これからのBIプラットフォームには、クリエイティブツールと同様なものが求められると、シャボー氏は主張した。具体的には次の4つだ。

  • 容易に試行ができること:「どんな分野の発明家も、有効な問題解決には高速なプロトタイピングの繰り返しが不可欠だと知っている」
  • 高速な処理ができること:「もし、アーティストの紙に描くものが見えるまでに数分掛かってしまったら、仕事にならない」
  • 表現力を生かせること:「BIソフトウェアは何年も、テンプレート、ダイアログボックス、ウィザードで、私たちの考え方を制約してきた。Tableauは革新的なことをするためのキャンバスを提供する」
  • ユーザー自身がコントロールできること:「良い考えが浮かんだら、あなたの頭の中にあるものを、自分自身で外に引き出すしかない。ダ・ヴィンチは申請書を書いて傑作を完成させたわけではない」

 「あなたの組織に、クリエイティブ・アナリティクスの文化をもたらすための、手助けをしたい、誰もが力を与えられ、満足感を得られ、最高の自分を引き出せるような世界を実現したい」とシャボー氏は話した。

開発中の数々の機能を披露

 Tableauは、今後2年間に、これまでの合計よりも多額の研究開発投資を行うという。基調講演では、次のような新機能を開発中だとアピールした。

  • 視覚化しているデータの計算式中の変数を変えると、その場で結果がグラフに反映されることで、シミュレーション作業を効率化する機能
  • 視覚化しているデータの計算式に、別のデータソースのデータをドラッグ・アンド・ドラッグで組み込み、結果を即座にグラフに反映できることで、次々に条件を変えてデータを探索できる機能
  • トレンドラインなどの分析オブジェクトを、ドラッグアンドドロップで追加できる機能
  • CPUのベクトル命令セットの活用による高速化
  • ライブ接続している複数データソースへのクエリを並列化することによる高速化
  • Tableau Serverからの読み出しキャッシュの共有化により、いずれかのユーザーが開いたダッシュボードを他のユーザーが即座に開ける機能
  • 分析のためのデータ準備の作業として、データ文字列に含まれる規則性を検出し、自動的に複数の項目に分割できる、「Split」と呼ばれる機能
  • Excelスプレッドシートを分析に利用するためのデータ準備の作業として、スプレッドシート内の不要なヘッダやマージされたセルの扱いなど、クリーニングを自動的に行う機能
  • 簡単なJavaScriptを書くことで、Webサービス上のデータをTableauに取り込むためのWebコネクタ
  • セキュリティではケルベロス認証、スマートカードをサポートする
  • Tableau Serverにおける、ユーザーの各種権限の確認、制御を容易にする
  • Tableau Serverでは、その機能を外から呼び出せるAPIをすでに提供し始めているが、これを拡大し、Tableau ServerでできることはすべてAPI経由でできるようにしていく
  • Tableau Online(Tableau Serverをクラウドサービスとして提供しているもの)で、Redshiftなどの他のクラウドサービスとのライブ接続を実現
  • OAuthのサポートで、Salesforceなどのクラウドサービス上のデータにアクセスし、Tableauに自動的に取り込む機能
  • オンプレミスのデータベースやExcelスプレッドシートを、定期的にTableau Onlineと同期するエージェントを提供する
  • Tableau Mobileで、計算式の適用をはじめとする分析がすべてできるようにしていく
  • モバイル端末がオフラインでもダッシュボードを見られるようにするスナップショット機能
Project Elasticでは、タブレット端末でCSVからちょっとした分析ができる世界を目指している

 Tableauは、Project Elasticという新ソフトウェアの開発プロジェクトを進めていることも明らかにした。これはタブレット端末用のアプリ。電子メールに添付、あるいはクラウドスストレージに保存されたCSVを開き、スワイプ、ピンチ、ズームなど、タブレットならではの操作方法を生かして、簡単に分析ができるツールだという。

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