デル インフラストラクチャ・コンサルティング・サービス本部 データベース・プラットフォーム ストラテジック・ソリューション・マネージャ 山口永記氏のプレゼンテーション「ビッグデータ時代におけるデータベース・ソリューション」では、デルが提供するデータベース高速化ソリューション・サービスの紹介が行われた。
「各種の調査によれば、企業はインメモリデータベース技術に大きな期待を寄せているものの、同時にその導入にかかるコストや投資対効果の面で不安を抱えていることが分かる。こうした不安を払拭(ふっしょく)するには、アセスメントサービスで現状の課題を可視化し、インメモリデータベース導入の投資対効果を数値として示すことが効果的だ」
山口氏によれば、デルが提供するアセスメントサービスはまさにこうしたニーズに最適だという。また製品面においても、同社はハードウェアとソフトウェアの双方でデータベース高速化に効く製品を数多く提供している。
中でもサーバー製品は第13世代の新製品が発表されたばかりで、新世代のCPU/メモリの採用や各種アーキテクチャの刷新により大幅な性能向上を果たしている。特に山口氏が強調したのが、フラッシュメモリコントローラーの新規格「NVMe(NVM Express)」*に対応したPCIe接続のフラッシュメモリカードである「Dell PowerEdge NVMe Express Flash」だ。
「NVMeに準拠した世界初の製品で、PCIe SSDドライブをホットスワップでフロントアクセスできる。パフォーマンスも既存製品を大幅に上回るが、容量当たりの単価はむしろ安くなっている。これからサーバー内蔵型SSDを選ぶのであれば、もうこれ一択でいいほど投資対効果に優れている」
デルではこの他にも、SSDをキャッシュメモリに転用することでデータベース性能を効率的にアップできる「Fluid Cache」やストレージ自動階層化技術「Fluid Dataアーキテクチャ」なども提供している。また、ハードウェアでは、前述の「Dell PowerEdge NVMe Express Flash」だけでなく、オールフラッシュに対応した外付けストレージ製品「Compellent」も持つ。
「これら各種ハードウェア製品と、アセスメントを含めたコンサルティングサービスをパッケージにしたメニューも用意しているので、フラッシュストレージを使ったデータベース高速化に興味のある方は、ぜひ気軽にお問い合わせいただきたい」(山口氏)
*NVMe(NVM Express) SSD向けのストレージコントローラーインターフェース。従来のディスクドライブを前提としたインターフェースである「AHCI」と比較してSSD向けに最適化されていることから、高速なデータ伝送が期待できる。セミナーで山口氏は、AHCIを使ったSLC型フラッシュストレージよりも、PCIe Gen3でNVMeを使ったMLC型フラッシュストレージの方が高速であるとした。
インサイトテクノロジー 取締役 CTO 石川雅也氏は、「超高速データベース専用サーバ Insight Qube ─SSDを搭載するだけでは速くならない」と題したプレゼンテーションで、同社が開発・提供するデータベースアプライアンス製品「Insight Qube」の紹介を行った。
インサイトテクノロジーといえば、もともとは腕利きの技術者によるデータベースコンサルティングサービスや、自社開発のデータベース管理ツールで広く知られる企業だが、2012年より自社開発のハードウェア製品「Insight Qube」の提供も始めている。石川氏によれば、同製品の設計思想は「とにかく、データベース高速化に特化していること」だという。
「データベースのボトルネックは多くの場合、ディスクI/Oにあるため、HDDをSSDに置き換えるだけでもある程度の高速化は実現できる。しかしI/Oが速くなると、今度はCPUやネットワークがそのスピードに追い付けなくなり、新たなボトルネックとなる。そこでInsight Qubeでは、ボトルネック要因となり得るI/O、ネットワーク、CPU、メモリの全てにわたって満遍なく高速化を施した」
その結果、Insight QubeはOLTP処理では他社のデータベース専用アプライアンスと同等の性能を、そしてバッチ処理ではそれ以上の性能を達成しているという。それでいながら、コストは逆に他社製品よりかなり低く抑えられるため、「圧倒的なコストパフォーマンスを達成している」(石川氏)。
複数のデータベースソフトウェアに対応しているのも同製品の大きな特徴で、Oracle DatabaseはEnterprise Editionの他にStandard Editionが利用できる。また、Microsoft SQL ServerやOSSのRDBMSであるMySQLもサポートしている。これらに加えて、DWH専用データベースソフトウェア「Actian Vector/Matrix」を使うことで、DWH用途では極めて高いパフォーマンスを発揮するという。
同製品の保守は、全国にサポート拠点を持つ東芝ITサービスが受け持っており、万全の体制を築いている。製品そのものの信頼性に関しても、「ハードウェアレベルとシステムレベルの双方において冗長化設計となっており、これまでOracle RAC構成の全ての導入実績において、システム稼働後にサービスが停止したケースは一度もない」(石川氏)と、信頼性の高さを示した。
セミナー最終セッションは、登壇者全員でのパネルディスカッションを開催、セッション本編で語り切れなかった点について、さらなる議論を行った。モデレーターはブレインハーツ 谷川耕一氏だ。
データベースの高速化を軸にしたセミナーではあるが、来場者の関心が高いであろう、導入に向けて検討すべき事項や知識獲得のヒントとなる情報を聞けた。
例えば、現段階ではHDDと比較してフラッシュストレージはまだまだ高価だ。来場者から「データベースを高速化する手段として有効であることを理解していても、導入が難しい」という意見が多く挙がった。これについて、秋山氏は「実は、フラッシュストレージ導入と同時にデータベースソフトウェアのライセンスコスト削減を実施し、むしろランニングコストを低く抑えるケースが少なくない」と、導入時のシステム企画の在りかたを指南する。この見解については他の登壇者も賛同するところであった。
秋山氏によると、フラッシュストレージを導入する際、集約やデータ圧縮などと併せてパフォーマンスが高まる分、サーバー台数を削減できるケースも少なくないという。特に商用製品で、CPUコア当たりライセンスがかかっている場合、導入と同時に集約を実施することで効果的にコストを削減できる可能性が高いという。
また、一口にフラッシュストレージといっても、各社プレゼンテーションで見てきたように、ストレージOSの仕組みや採用するNANDメモリの違いなどもある。「どのような場面での採用で効果が期待できるのか」との問いに、岡本氏はViolin Memoryのパフォーマンスの高さを強調。「自社顧客の80%がデータベースのストレージとして採用している」と信頼性・性能への高い自信が感じられるコメントが聞けた。登壇企業の中では比較的高価なデバイスではあるが、直近ではMLCを採用した低価格モデルも投入しており、選択の幅が広まっている。
一方の杉山氏は、Pure Storageについて、ユーザビリティと汎用性の高さを示し「当社製品はいわばオールラウンダーを指向している。国内ユーザーの半数はデータベース環境に適用している一方、サーバー統合やVDIを目的とした採用も半数を占める。ストレージ環境運用コスト面でも有効」とした。Pure StorageはLUNもRAIDもない(RAID-3Dという独自の実装が代替する)シンプルな構成で、導入してすぐに使える、という特徴がある。
山口氏は「コストバランスを評価する視点を持つことが重要。CPUやメモリの性能も理解した上で組み合わせていく必要がある。全てのストレージ装置がフラッシュになるとは思っておらず、HDDとの組み合わせ方のバランスも考えるべき。アセスメントサービスを有効に使ってほしい」とし、同社が蓄積している体系的な「組み合わせのノウハウ」を「アセスメントサービスを介して広く伝えたい」との考えを示した。
石川氏は、来場者から事前に寄せられていた「チューニング職人の知識はいらなくなるのか?」という問いに対して、「データベースチューニングそのものの知識や、チューニングパラメーター操作のノウハウは今後も廃れることはないだろう。ただし、メモリやストレージ環境が変化してきたことから、パラメーターに対しての感覚値は変わってくる。既存の知識に対して新しいハードウェア特性の知識を追加していくことでより深い知識にすることができる」と、チューニングのプロとしての知見を披露した。これには登壇していた山崎氏も呼応。所属する楽天社内での業務標準化や“チューニング職人”の知見を生かした組織作りについての話も聞けた。
(文責/@IT編集部)
フラッシュストレージアレイの登場、最新バスやストレージコントローラー規格の登場、大容量メモリの普及など、データベースと記憶装置にまつわるハードウェア事情はここ数年で大きく変化しつつある。運用やチューニング環境を考える上では、こうしたハードウェアの進化はもちろん、製品実装技術にも深い理解が必要だ。編集部主催セミナーを基に、多様化するデータベース周辺のハードウェアのうち、フラッシュストレージとの組み合わせ方についての最新情報を紹介する。
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