インテルの超小型コンピューター「Edison」の国内販売スタート間近のいま、IoTブームも現実的な実装をソフトウェアエンジニアが考えられる状況がそろいつつあるようだ。プロトタイピングがはかどる開発環境や、クラウドサービスと連携したアプリケーション開発のための環境も。
2014年10月15〜17日、東京ビッグサイトを会場に「ITpro EXPO 2014」が開催された。本稿ではこの中でもエンタープライズやWeb系のソフトウェア開発者と組み込み機器を結び付ける興味深い展示が見られた「IoT Japan 2014」コーナーに出展した企業ブースを紹介する。
インテルブースは何といっても「Edison」が注目の的だ。
Edisonはインテルが間もなく(2014年10月25日)日本国内でも発売する開発プラットフォーム。コンピューターを構成する大体の機能を「切手サイズのモジュール」に格納した超小型コンピューターである。具体的にはデュアルスレッドのAtom CPU(500MHz)とMPU「Quark」を搭載、メモリ1GB(LPDDR3)、eMMCのストレージ4GBに加え、デュアルバンドのWi-FiとBluetooth Low Energyも搭載している。GPIOは40種類。SDKは既に配布されており、WindowsやMac OS環境にも対応している。チップ単体でも使えるが、Arduinoなどのボードに搭載して利用するための環境も用意されている。
展示ブースでひときわ目を引いたプロトタイプを身に着けていたのが彼(写真)だ。
「これはソーシャルコミュニケーションロボットとして考えたもの。肩に乗せると、人間と視界が同じになるだろう? 相手の表情や声、動作を僕と同じ目線で見ることができるんだ」
実はこのロボット、まだプロトタイプ。そのため、目なども作り込んでいるが、実際の映像はのど元に仕込んだカメラモジュールで撮影している。目に関していうと、彼がもっとも腐心したのが「眉毛」に相当する部分の作り込みだという。
「人間の顔の中でも目、特に眉の動きはとても多くの感情を表現できる。だからソーシャルコミュニケーションロボットとしては眉の動きが重要だと考えたんだ」
デモ中は、声を発することはなかったものの、口をパクパク動かしたり、眉を動かしながら首を傾ける動作をするため、実物は写真以上に愛くるしい。
スマートフォンとの連携もできる。「今はまだプロトタイプなので、スマートフォンアプリ経由で写真を撮影する程度の機能だが、将来的にはコミュニケーションに参加したり、相手の感情を認識して会話したりするような機能も実現可能だろう」
もう一つの展示は、Parrotの「AR.Drone」に似た機能を持つ個人用、産業用ロボットヘリコプターだ。形状はAR.Drone同様、四つのプロペラで駆動するものだが、こちらは3Dロボティクスが提供しているもの。
3Dロボティクスは2014年9月に米インテルと業務提携を発表、現在Edisonをベースにした製品開発を進めている。搭載カメラを使って、動画を撮影しつつ、GPSデバイスを持った撮影対象を追跡し続けることができる「Follow Me/3PV」モードを持っている。
「このモデルはプロトタイプ。デモのために一定の強度を持たせているのでやや重量がある。このためバッテリの重量は少なめ。このモデルの場合は連続飛行時間は15〜30分程度」(ブース説明員)だという。もちろん、筐体を軽量化し、バッテリ容量を増やせばその分、飛行時間を延ばすこともできる。
残念ながら、会場の制約上、実際の飛行は見られなかったが、会場では自転車で走行する少年の背中をスナイパーばりに追跡するデモムービーを流していた。
最近では、大規模デモの様子を中継するカメラになったり、あるいは将来的に宅配サービスで使われるようになったりする、といった話題もあるロボットへリコプター。プロペラや筺体の設計には一定の工学的な知識が必要ではあるが、動作制御や機能モジュールの操作はEdisonを軸に汎用のカメラやUSB接続のモジュールなどを追加するだけで、多くの部分をソフトウェアで開発できる。
こちらは、IDF2014でデモした際の、6足歩行ロボットのデモ動画だ。
Edisonでは、こうしたプロトタイプを、ごく小さな、しかしコンピューターとして十分にリッチな性能を持った環境で制作できる。米インテルのWebサイトでは、Arduino IDEを使ったクロス開発の手順について、ボードにチップを載せるところから分かりやすく解説するページも用意している。
アプリケーション開発用にはiotkit-commライブラリ(Node.jsバージョン)が公開されており(この他にC言語バージョンもある)、英語だがドキュメントやサンプルソースも閲覧できる。
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