雑音に惑わされず、自社にとって最適なクラウド利用の解を見つけるには安易な「クラウドファースト」を超えて

「クラウド」は複雑で流動的だ。結局のところ、クラウドサービス利用に「正解」などない、「クラウド利用戦略」も成立しないのではないか。ガートナーのトム・ビットマン氏に聞いた

» 2014年12月24日 09時00分 公開
[三木 泉,@IT]

 「クラウドサービスを、どう利用するのかしないのか」で悩んでいる企業のIT担当者は多いはずだ。

 とにかく、雑音が多すぎる。「クラウドサービスこそトレンド」「クラウドサービスを拒否する人は保身しか考えていない」などという人がいる。「クラウドファースト」という言葉は、「クラウドサービスを使えないかをまず検討する」という意味なのに、「全てをクラウドサービスに移行することを目指す運動」と都合よく解し、これを押しつける人々がいる。

 一方で、物知り顔に「ハイブリッドクラウドが正解」と言いながら、どんなハイブリッドクラウドが「正解」なのか説明できない人がいる。

 このトピックは、非常に複雑だ。まず、「クラウドサービス」といってもさまざまだ。事業者やサービス品目によって、サービス内容は多岐にわたる。IaaSからSaaSまで、多種多様なサービス形態があり、IaaSに限っても選択肢は幅広い。さらにやっかいなのは、各サービスが急速に進化しており、新サービスも続々登場してくるということだ。まさに「動く標的」であり、昨日の判断が今日は正しいと言えないこともあり得る。

 クラウドサービス利用に関する「正解」は、企業・組織の使うアプリケーションの種類や、これまでのIT利用体制によっても異なる。極論すれば「企業の数ほどクラウドサービス利用の正解はある」ともいえる。

 上記を考え合わせると、結局のところ、クラウドサービス利用に「正解」などない、「クラウド利用戦略」も成立しないのではないか、という気にもなってしまう。

 そこで、仮想化・クラウドコンピューティングに深い知識と経験を持つ、ガートナー リサーチ部門 バイス プレジデント兼最上級アナリストのトム・ビットマン(Thomas Bittman)氏に、関連するさまざまな質問を投げかけてみた。

結局、情報システム部門はどう対処すればいいのか

情報システム部門のクラウドに関する活動の指針になるようなものは存在しないのか。IT INSIDER No.37 「【決定版】情シスのための、クラウドに関する行動指針」では、ガートナーのアナリスト、ビットマン氏にとことん聞きました

 ビットマン氏は、クラウドファーストの先駆的な事例ともされる米国連邦政府の取り組みは失敗だったという。それでも、情報システム部門は、自社内の個々のアプリケーションやITサービスについて、クラウドサービスの効果的で確実な活用方法を、業務部門に提案できるようになっていくべきだという。それが、「クラウドブローカー」になるということだという。

 情報システム部門がやるべきことは、第1に、業務部門が適切なクラウドサービスを、できるだけ早く利用できるように助けること。第2に、業務部門の(クラウド利用に関する)作業負荷を減らし、クラウドを使いやすくすること。第3に、セキュリティや利用ポリシーに関するガイドラインを提供することだと、ビットマン氏は話した。

 「当初、情報システム部門はどちらかと言えば受動的な立場かもしれませんが、そのうち能動的な立場にしていくべきです。クラウドサービス事業者とのやり取りを一任されるかもしれません。利用情報をモニタリングする役割を担うようになるかもしれません。重要なのは、業務部門に価値を提供することから始め、徐々に積極的な役割を果たすようにすることです。これこそが、業務部門の心をつかむ唯一の方法です」。

 この、ビットマン氏へのインタビューを、IT INSIDER No.37 「【決定版】情シスのための、クラウドに関する行動指針」に収録しました。お読みいただければ幸いです。

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