2014年12月2日、SAPジャパンは「SAP HANA SP9」を提供開始しました。プラットフォームとして、よりシンプルに使えるような機能整備が目立ちます。SAP HANA SP9の最新情報をSAPジャパン ソリューション&イノベーション統括本部 リアルタイムプラットフォーム部長 大本修嗣氏がSAP HANA SP9における新機能を「Accelerate(加速)」「Innovate(革新)」「Simplify(簡素化)」の三つに分類して解説しました。
仮想化技術LPAR(論理区画)対応、対応クラウドサービスの拡張でクラウドサービスへの移行が促進できるようにしています。SGI UV、シスコ・システムズ、IBMなど、対応するハードウェアの拡張、非本番機のアプライアンス制限が緩和されるなど、ハードウェアリソースの選択肢も広がっています。
目玉はマルチテナントデータベースコンテナ(MDC)です。MDCはテナントデータベースやアプリケーションを一つのシステムIDで稼働しつつ、データやシステムリソースを確実に分離します。従来、MCOS(Multiple Components, One System)やMCOD(Multiple Components, One Database)で似たことが実現できていつつも複雑さや制限がありました。MDCならより現実的、拡張性に優れ、何よりもTCOが削減できるなど運用上のメリットが期待できそうです。
他にもデータ処理がより現実的に、実務に沿う形で機能強化されています。例えば公共や金融など利用する業界ごとの系列データ機能、Apache Hadoop(Hadoop)統合機能の拡張、地理空間情報機能の拡張などです。
Hadoopに関してSAP HANA SP9ではデータフェデレーション用の新しいユーザー定義関数、HDFSへ直接アクセス可能、vUDFをSQLに埋め込み可能となるなど、データを取得するだけではなく処理レベルでもHadoopとの連携性が高まりました。より高度な連携でビッグデータ処理が可能となりそうです。
データ量の増大やマルチテナントでコンソリデーションが進むと、使用するメモリ量が増えてきます。しかしメモリは高価ですから効率的に使わなくてはなりません。そこでSP9ではダイナミックティアリングというデータ管理機能が追加されました。
メモリにある使用頻度の高いホットなデータと、ディスクにあるやや使用頻度が落ちるウォームなデータをアプリケーションからは同じSAP HANAのテーブルとして透過的に見えるようにするのがこのダイナミックティアリングです。Pバイト級のデータ規模でも可能とのこと。
SAP HANAというと「インメモリ」というイメージが強いですが、「(インメモリでない)ディスクのデータも透過的に使える」のであれば発想として画期的ではないでしょうか。
後日、SAPジャパンはSAP HANAで稼働する会計ソリューション「SAP Simple Finance」を発表しました。SAP HANA SP9だけではなく、いまのSAPは「シンプル化」がキーワードとなっているようです。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.