Docker、そしてCloud FoundryとPaaSの価値とはJames Watters氏に聞く(1/2 ページ)

Docker人気を踏まえたとき、Cloud Foundryはどのように位置付けられるのか。PaaSの最終的な価値とは何なのか。AWSとの競合とは。Cloud Foundryの責任者である米PivotalのJames Watters氏に聞いた。

» 2015年02月26日 19時00分 公開
[三木 泉@IT]

 James Watters氏は、2010年9月から、Cloud Foundryに関わってきた。現在では米Pivotalのクラウドプラットフォーム事業担当バイスプレジデントとして、Cloud Foundry、Spring Source、Rabbit MQ、Redisを含む製品群の責任者を務めている。

 この人の目には、「Dockerブーム」がどう映っているのか。また、Cloud Foundryはどのような点で差別化を続けていくのか。2014年12月に開催されたPivotalジャパンサミットのため来日したWatters氏に聞いた。

Dockerは革新的だが、インフラレベルの革命にとどまる

―― 急速に人気を集めてきているDockerを、どうとらえていますか?

 Amazon Web Services(AWS)などにおける、仮想インスタンスの構成・設定は手間の掛かる作業でした。Dockerで非常に重要なのは、仮想化環境上のフル機能のOSとコンテナーの間の構成作業を、大幅にシンプル化したことです。つまり、Dockerは「IaaS(Infrastructure as a Service)」に対する人々の考え方に、革新をもたらしたのです。これは、とてもいいことだと思います。

―― しかし、当初はイメージ形式として広まりましたが、Dockerは最近、オーケストレーションなどに活動範囲を広げていますよね。

 そこにDockerの、会社としての問題があります。

 世界は、あらゆるシステムで使える、シンプルなイメージ形式を必要としていました。だからDockerはここまで広がってきました。そして今、多額の資金を獲得した同社は「イメージ形式だけでなく、オーケストレーションも私たちの方法でやるべきだ」と言い出し、コミュニティとの関係を難しくしています。問題は、オーケストレーションにはオープンさと多様性の確保が必要だということにあります。例えば私たちは、Dockerよりもはるかに強力でオープンな方法で、オーケストレーションを提供しています。

米Pivotalのクラウドプラットフォーム事業担当バイスプレジデント、James Watters氏

 Dockerは興味深い時期を迎えています。シンプルなイメージ形式を標準化するプロジェクトから企業への変化を進める中で、これまでの人気を維持しながら、支持者を怒らせることなく活動を広げていけるのか、が課題になっています。象徴的なのはCoreOSのRocketに関する発表です。彼らは、オーケストレーションについて、よりモジュラーなアプローチを推進しようとしています。

 Dockerは素晴らしい動きです。ただし、Dockerを使ったからといって、ソフトウエアデリバリのための包括的なシステムが提供できるわけではありません。すでに述べたようにこれはプラットフォームレベルではなく、インフラレベルの革命です。

 プラットフォームレベルの機能は、インフラ関連の設定負荷から開発者を解放するだけではありません。Cloud Foundryは、2011年の初期リリースこそシンプルなものでしたが、今では多様な機能を統合的に提供しています。メトリックス、ヘルスマネジメント、スケジューリング、HAサービス、MySQLサービス、モバイルサービスなど、どんどん進化しています。ですから、私は「(Dockerなどによって)インフラがさらにシンプルになり、(Cloud Foundryなどによって)プラットフォームがさらに強力なものになってきた」という見方をしています。

 4、5人の優れた開発者で構成された小さなチームなら、Dockerを使うだけで十分という場合があるかもしれません。しかし、大規模な金融機関なら、私が先ほど挙げたような機能を網羅するプラットフォームが必要です。

―― しつこいようですが、Dockerに対して何の脅威も感じないということですか?

 感じません。Dockerはインフラであり、Cloud Foundryはプラットフォームです。われわれが小規模なスタートアップ企業のためのソフトウエアを作っていたなら脅威に感じたかもしれませんが、Cloud Foundryには多数の支持者がいて、大企業における導入も進んでいます。逆に、Dockerにとって、これからどうビジネスとして進めるべきかが課題になると思います。私が、Dockerは標準的なイメージ形式のためのオープンソースプロジェクトにとどまるべきで、企業になるべきではなかったと考える理由はここにあります。

―― Cloud FoundryではDiego(次期ランタイム環境)でDockerイメージの稼働を本格的にサポートし、さらにKubernetesへの参加などの活動をしていますね。

 Kubernetesに関しては、少しだけ参加しています。

―― あまり興味はないということですか?

 私たちは、グーグルとオープンなクラウドの標準に関して相互協力することに関心を持っています。Kubernetesの活動に、直接関わることにはあまり関心がありません。理由は、KubernetesがCloud Foundryのランタイムマネージャに必要な機能を全て備えてはいないからです。

 今は、面白い時期だと思います。誰もが変化に気付いていて、そのため多数のプロジェクトが始まっています。一方、Cloud Foundryでユニークなのは、大規模な企業群に支えられた基盤があり、顧客の長期的な期待に応えられるものになっていることです。

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