―― Cloud Foundry Foundationを設立したわけですが、例えばOpenStackのように、多様なコントリビューターが参加するプロジェクトになっていくのでしょうか?
現在のところ、コントリビューションの95%はPivotalによるものです。Pivotal社内でCloud Foundryに関わるエンジニアは150人を超えようとしています。当社は今後も開発を主導していくと思います。
私たちは、OpenStackよりも強力なメカニズムを通じて、統一性を保っていきたいと考えています。このため、最初から、Cloud Foundryのディストリビューションと呼ばれるために満たすべき要件を明確に提示し、認証を進めます。多様な人々が参加して多様なプロジェクトを始めることを避けるため、オープンソースプロジェクトに厳格なプロジェクト管理を持ち込もうとしています。Cloud Foundryは1000人規模のプロジェクトに育つかもしれません。しかし、明確な認証の仕組みに基づき、そのままで本番環境に投入できるようなコードを提供していきたいと考えています。
―― Cloud Foundryの(他のPaaS製品に対する)差別化を支える主な要因には何がありますか?
率直にいうと、予算規模が違います。150人のエンジニアが2年半にわたって開発を続けています。その活動は基礎的なことにとどまりません。インフラ自動化のBOSH、パッケージ/リリースシステム、ヘルスマネジメント、マルチクラウド間のポータビリティ、Linuxコンテナ技術、動的ルーティング、Herokuとの協力によるBuildpackの仕組みなどに広がっています。
PaaS基盤製品で、Cloud Foundryほどリソースが費やされた製品は他に見当たりません。従って、これが事実上の標準だということを否定する人はほとんどいません。
唯一の欠点は、インストールするプロジェクトとしての規模が大きいということです。このため、顧客には時間とエネルギーを費やせる大企業が多いのが現状です。一方で、1、2人で小さなことをやっている人たちにも使ってほしいと思っています。2015年の早い時期に、Cloud Foundry全体ではなく、個別のコンポーネントとして開発者が便利に使えるような製品を提供しようと考えています。
―― では、Cloud Foundryが標準であり続けるために欠かせない要素とは何ですか?
PaaSの価値とは、統合環境をすぐに使えるような形で提供することです。スケジューラーとして動くMesosだけではありません。イメージを提供するDockerだけではありません。軽量OSを提供するCoreOSだけでも、Javaランタイムを提供するIBMのLiberty profileだけでもありません。負荷分散機能を提供するnginxだけでもありません。デプロイメントを支援するPuppet、Chefだけでもありません。Cloud Foundryはこれら全ての機能を、1つのユニットにまとめ上げて提供できるのです。
PaaS製品でビジネスしようとする、小規模なスタートアップにとっての課題はここにあります。今後もPaaSは、「事前に多様な機能が統合された形で利用できる」ということの価値を、提供し続けると考えます。同時に、全ての機能において、最高の機能を提供し続けなければなりません。
例えば、アプリケーションのメトリックスを統合する機能を、Cloud Foundryは備えています。単にコンテナアプリケーションをデプロイするだけでなく、デプロイしたアプリケーションをスケールさせ、稼働状況を管理できます。モニターしたエラー率を基に、システムの稼働を制御できます。一般企業でDevOpsを実践している人たちから、「これは自分たちでは作れない」とよく言われます。
PaaSはこうした点で今後も魅力を発揮し続け、大規模な企業の間では、新しいアプリケーションの投入における標準的なやり方になっていくと思います。
―― 大企業といえば、フィリップスがDigital Health PlatformでCloud Foundryを採用していると聞いて、驚きました。「AWS re:Invent 2014」の基調講演では、フィリップスが全面的にAWSを採用すると自ら宣言し、システムを説明していましたから。
フィリップスは当初、AWSを全面的に採用するつもりでした。しかし、AWSの上でCloud Foundryを使うことになりました。同社が持つドイツやインドのデータセンターに、アプリケーションをいつでも動かせるようにするためです。
AWSとCloud Foundryは、ある意味では直接の競合ではありません。例えば日本では、AWS上でCloud Foundryを使うケースが増えてくると思います。プライベートクラウドだけでなく、パブリッククラウドで使えることで、Cloud Foundryは普及していくのだと思います。一方で、私たちはユーザー組織に選択肢を提供できます。AWSがいつの日か値上げし始めたり、革新性の魅力が薄れたりしたら、いつでも他に移れるわけです。
一方、Cloud FoundryにとってAWSは唯一の競合だとも表現できます。全てのものが統合的に提供できるのがPaaSの価値だと説明しましたが、これはまさにAWSにも当てはまります。Dynamo DBがElastic MapReduceにマップされ、これがHBaseテーブルにつながるといったように、AWSも「統合性」のゲームを戦っています。ただし、AWSは「私たちのデータセンター上でしか動きませんよ」と言っています。
AWSとCloud Foundryは「高度に統合されたサービス」という世界で競争しています。AWSは現在のところリードしています。ただし、企業の社内や他のクラウドサービス上では動かないという限界があります。私たちは後から追いかけていますが、オープンソースのエコシステムという追い風があります。
その意味では、私たちはAWSと同じように、1000〜2000人の開発者を抱えるような規模に拡大しなければならないと考えています。そうでないと、追い付くことができませんから。
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