先に説明した通り、マイナンバーの活用領域は当初「社会保障」「税」「災害対策」の三分野となっており、それ以外の目的への利用は禁じられています。ですが一方で「法律施行(=2015年10月)の3年後をめどに、民間利用について検討を進めていく」と、民間活用の道を開いているのも事実です。
そもそも個人番号カード自体、いずれは法や条例に基づいて、図書館カードや印鑑証明、e-Taxなど、「社会保障」「税」「災害対策」以外の分野に活用していく方針が示されています。
2015年3月10日、政府は番号法の改正案を決定しました。この案では、個人の資産を把握しやすくし、税務調査などに役立てることを目的として、マイナンバーを預金口座に適用することとしています。2018年から口座開設者などに任意でマイナンバーの登録を促し、その3年後には義務化も視野に入れているといいます(関連リンク)。
加えて、改正案には医療分野への適用も盛り込まれました。メタボ健診や予防接種の履歴をマイナンバーで管理し、引っ越し先などでも参照できるようにするというものです。ただし、病歴に関する情報は、個人に関する情報の中でも特にセンシティブなもの。慎重な取り扱いを求める声も根強くあります。
他に、電気やガス、水道といった公共サービスでマイナンバーを利用し、引っ越し時の手続きを容易にする、生命保険会社が迅速に保険金を支払うためにマイナンバーを活用するなど、民間側は多様な領域での適用に期待しているようです。
より効率的に、より便利になるというメリットに目が行きがちなマイナンバー制度ですが、一方で、情報の安全な取り扱いやプライバシーへの配慮は欠かせません。
先の内閣府調査によると、ユーザーがマイナンバー制度の個人情報の取り扱いに関して最も懸念しているのは「個人情報が漏えいすることにより、プライバシーが侵害されるおそれがあること」と「マイナンバーや個人情報の不正利用により、被害にあうおそれがあること」で、いずれも3割以上となりました。
セキュリティに関しては、いくつかの安全管理措置が挙げられています。システム面での保護措置としては、アクセス制限・管理や通信の暗号化といった対策に加え、「情報連携を行う際はマイナンバーを直接用いるのではなく符号を用いる」「一元集中ではなく分散データベースとする」といった措置を通じて、安全性を高めようとしています。特に行政機関や地方自治体に対しては、セキュリティやプライバシーに関するリスクを分析し、軽減するための適切な措置を講ずるよう宣言する「特定個人情報保護評価」を実施することになっています。
一方プライバシーに関しては、法律施行1年後をめどとして「情報提供等記録開示システム」(マイポータル)を設置する予定です。このシステムでは、行政機関が持っている自分の特定個人情報について確認したり、自分の特定個人情報をいつ、誰が、なぜ提供したのかを確認でき、自分の情報とその使われ方について透明性を確保していく予定です。
さらに一連の手続きにおいて特定個人情報が適正に取り扱われているかどうか、特定個人情報保護委員会が監視を行います。同委員会では法令に反する行為に勧告や命令を下したり、個人からの苦情についてあっせんを行うこととなっています。
とはいえ、漏えいと名寄せの不安は常につきまとうことでしょう。民間利用が可能となっている米国の社会保障番号などは、これまでもたびたび漏えいが報じられてきました。過去の事件を踏まえ、どれだけ対策していても漏えいは発生し得るという可能性を頭に入れた上で、マイナンバー、ひいては個人情報がどのような領域に適用されるのかを注視していく必要があるでしょう。
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