「もうオールフラッシュストレージベンダーではない」、米ピュア・ストレージビジネスモデルはSaaSを指向

オールフラッシュストレージを開発・販売する米ピュア・ストレージとピュア・ストレージ・ジャパンは2015年4月7日、東京都内で同社の事業を説明し、オールフラッシュストレージ市場を席巻することがゴールではないと説明した。

» 2015年04月08日 14時03分 公開
[三木 泉@IT]

 2014年には年率300%以上の売上成長を達成し、「ITシステム企業として、歴史上最も急速に成長している」と、米ピュア・ストレージのCEO、スコット・ディーツェン(Scott Dietzen)氏は説明する。同氏のプレゼンテーションの中に、他のオールフラッシュストレージの新興企業の名は、1つとして出てこない。

 「この市場(オールフラッシュストレージ市場)は、事実上当社とEMCの一騎打ちだ。ガートナーのマジッククアドラントでも、リーダーに属するのはEMCとピュア・ストレージだけだ」。

注:ガートナーは「Solid State Array」というカテゴリ名称で、該当する調査を実施している。確認できるのは2014年8月に発表された「2014 Magic Quadrant for Solid-State Arrays」で、EMC、ピュア・ストレージに加え、IBMがリーダーとして分類されている。

米ピュア・ストレージのCEO、スコット・ディーツェン氏

 また、同社の事業活動の焦点は、「オールフラッシュストレージ」というニッチ的な響きのある市場におけるリーダーシップの維持だけではなく、既存の一次ストレージ市場におけるマーケットシェアの拡大だと、ディーツェン氏は強調する。従って、同氏のプレゼンテーションの内容の大半は、既存ブロックストレージとの比較が占め、ますますEMCの名前が登場する機会が多くなる。

 「EMCは今や、VMAXやVNXの代わりに、XtremIOを推進するようになった。また、フラッシュストレージ関連のスタートアップを2社買収した。どっちらもピュア・ストレージに対抗するためだ」。

 ピュア・ストレージの最大のキャッチフレーズは、「ディスクストレージよりも安いフラッシュストレージ」だ。重複排除およびデータ圧縮といった機能を生かし、実効容量でギガバイト単価1ドルを目指している。その上で、性能、信頼性、データ管理機能を提供し、一般企業がフラッシュメモリ技術を採用する際の課題を全て解決していると、ディーツェン氏は訴える。

 また、あらゆる企業が、クラウド的な運用を指向している時代には、「ストレージ製品はシンプルでなければならない」(ディーツェン氏)。同社の製品はスナップショットやレプリケーションの機能をあらかじめ備え、これを分厚いマニュアルなしに使えるようにしているという。

 以上を一言でまとめると、ピュア・ストレージはフラッシュメモリという新世代の記憶媒体を一般企業が活用できるように、ソフトウエアで多様な工夫を凝らした製品だということになる。「既存のストレージベンダーは、まだムーアの法則に逆らおうとしている」とディーツェン氏はいう。ほとんどのストレージ製品は、ハードウエア的には事実上、インテルのCPUを使ったコンピュータなのに、製品ユーザーはインテルCPUの急速な進化のメリットを享受できないという意味だ。

 「業界を変革するには、技術だけでは不十分だ。ビジネスモデルの変革が必要だ」(ディーツェン氏)。このためにピュア・ストレージが提供しているのが「Forever Flash」というプログラム。一般的な製品では、製品価格に3年といった期間の保守料が組み込まれているが、この期間を過ぎると、保守料が大幅に上昇し、ユーザーは新製品を購入するよう促されることになる。

 一方、ピュア・ストレージの「Forever Flash」プログラムでは、ユーザーが毎年保守料を払っていれば、3年ごとに最新のコントローラが無償で提供され、アップグレード作業にもほとんどコストがかからない。このため、減価償却期間を延長する企業も登場してきているという。

 「当社はSaaSのビジネスモデルに近づこうとしている」とディーツェン氏は表現している。

日本では全社業務システムをターゲットに

 ピュア・ストレージ・ジャパン代表取締役の山田秀樹氏は、日本国内では当初こそ顧客の信頼を得られず苦戦したが、自身でシステムを構築できる事業部レベルの人々を中心に採用が進み、高いリピートオーダー率にも支えられて、業績が伸びているという。販売パートナーは、Oracle Databaseに強い新日鉄住金ソリューションズが加わるなど、7社に拡大した。

 これからは、一般企業の全社的な業務システムや全社仮想化基盤のためのストレージとして導入してもらうことに、力を注ぐと山田氏は話した。

 このための今後1年の施策としては、販売パートナーをさらに拡充。また、ソリューションを提供するため、エンジニアなど、日本法人の人的リソースを2倍に増員すると話した。さらに、市場認知度向上、販売機会創出のための活動を強化していくという。

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