米EMCは、2015年5月4日より、米ネバダ州ラスベガスで開催している「EMC World 2015」で、同社の既存ストレージ製品を生まれ変わらせる、各種の取り組みを説明した。キーワードはフラッシュ、ソフトウエア化、クラウドだ。
米EMCが、同社の年次カンファレンス「EMC World」で打ち出してきたテーマは、2012年以来、基本的には変わっていない。それは、ビジネスとITの関係が大きく変わりつつあり、同社の顧客である一般企業は、生き残るために、従来とは全く異なるITの活用を進めていかなければならないということだ。そして、EMCは、顧客のIT変革を支援していきたいという。
だが、顧客のIT変革を支援できるためには、EMC自身も変わっていかなければならない。同社は過去5年近くにわたり、これを二正面作戦で行ってきたとアピールする。つまり、同社のストレージ/データ管理/ITインフラ製品のうち、既存の社内ITサービスやアプリケーションを支えるものは、従来との連続性を保ちながら刷新し、一方で「新しいアプリケーション」を触発するようなものを次々に投入する、ということだ。
では、EMCが2015年5月4日より、米ネバダ州ラスベガスで開催している「EMC World 2015」で、同社は既存アプリケーションを支えるストレージ製品をどう生まれ変わらせたか。キーワードはフラッシュ、ソフトウエア化、クラウドだ。
まず、オールフラッシュストレージの「EMC XtremIO」が主役に躍り出てきた。
EMCは今回XtremIOで、「データベースやVDI(仮想デスクトップ)だけでなく、基幹システムを含めた高速性が求められるアプリケーションを幅広くカバーする」という役割を明確に打ち出した。一方、VMAX3は、これまで基幹システム用のストレージとして最適な選択肢という位置付けだったが、データ階層制御やバックアップなど、「各種データサービスのためのハブ」としての機能が強化された。XtremIOを一次ストレージとして用い、その背後でVMAX3がデータサービスを提供する使い方が考えられるようになった。
具体的には、2015年第1四半期中に受注開始のXtremIO 4.0で、容量とパフォーマンスの両面での拡張性を強化。また、XtremIOのストレージ容量拡張は、ストレージノード間のデータ自動平準化機能などにより、アプリケーションのダウンタイムなしにできるようになった。
さらに、重要なアプリケーションへの、XtremIOの適用を助けるデータ保護機能については、レプリケーションソフトウエアの「EMC RecoverPoint」を新たに統合し、XtremIO間、およびRecoverPointに対応した他のストレージ製品との間でのレプリケーションを実現。RPO(Recover Point Objective:目標復旧時点)を1分前に抑えることも実現可能という。
VMAX3のデータサービス関連機能強化の概要は次のとおり。
EMCは、ハードウエアとソフトウエアの分離を進めてきた。新しい製品は、フラッシュ製品などの例外はあるが、ほとんど全てがソフトウエアとして提供されている。また、ハードウエア込みのボックスとして提供されてきた既存製品についても、仮想アプライアンスとして提供する取り組みを進めている。
EMC World 2015では、エントリストレージの「EMC VNXe」の仮想アプライアンス版「vVNX Community Edition」を提供開始したことが発表された。また、バックアップストレージの「EMC Data Domain」では、ソフトウエア版を2015年中に提供開始するという。
vVNX Community Editionは、「VNXe3200」相当の機能を備えた仮想アプライアンス。VNXe3200とのレプリケーションも可能。最大容量は4TBに制限され、サポートも提供されないが、フル機能のストレージを無償で利用できる。EMCは、開発/テスト環境などでの利用を想定している。
ハードウエアとソフトウエアの分離という観点では、EMCは2014年秋に「EMC RecoverPoint for VM」という製品を提供開始している。RecoverPointは、同社のストレージ装置のレプリケーション機能だが、独立したソフトウエア製品としても提供されている。RecoverPoint for VMは仮想アプライアンスとしてVMware ESXi上で動作。仮想ディスク単位でレプリケーションを行える。レプリケーション先も、RecoverPoint for VMでいい。これは、従来物理的なストレージ装置にひもづいていた機能を切り離すことで、柔軟な活用が可能になるいい例の1つだ。
一方、EMCは、クラウドサービスをデータのバックアップ先として活用できる選択肢を増やしている。
上記のCloudArrayはその一つ。これは、クラウドストレージゲートウェイとして機能するソフトウエアだ。
社内からは、iSCSI、NFSなどでアクセスできる一般的なストレージに見えるが、クラウドサービスのオブジェクトストレージのキャッシュとして機能する。キャッシュの割合を100%に設定すれば、CloudArrayに保存されたデータをクラウドにバックアップすることになり、1%などに設定すれば、クラウドにデータを移行できることになる。人手によるバックアップ作業なしに、低コストなクラウドストレージを使ったデータ保護が実現できる。
CloudArrayは多数のクラウドストレージサービスに対応している。データはクラウドへの送信中、送信後ともに、暗号化ができる。日本国内では、2015年5月1日に販売開始された。ソフトウエア、仮想アプライアンス、ソフトウエアをサーバーに導入済みの物理装置の3形態で提供される。
EMCはまた、Spanningという企業も買収している。SpanningはSaaSのデータをバックアップするサービスを提供している。サービス自体は、Amazon Web Serviced上で動いている。バックアップ対象は、現在のところGoogle Apps、Salesforce、Office 365。「Spanning Backup for Office365」は、EMC World 2015で発表された。データを従業員が誤って消したり、解雇されたことへの報復として、自分のメールなどのデータを意図的に消し、引き継ぎを妨害するような場合に備えることができるという。
Spanningのようなサービスの展開は、EMCがハードウエアあるいはソフトウエアのストレージ製品以外に、サービスとしてのデータ管理へも踏み出そうとしていることを象徴している。
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