OpenStack12番目のリリース、Libertyの技術的注目ポイントは?コンテナー、ネットワークへの取り込み目立つ

 OpenStack Foundationは2015年10月15日(米国時間)、OpenStackの12番目のリリース、OpenStack Libertyの提供開始を発表した。その技術的なハイライトを、OpenStackコアデベロッパーである元木顕弘氏の監修に基づき紹介する。

» 2015年10月20日 07時30分 公開
[三木 泉@IT]

*本記事は、OpenStackのコアデベロッパーの一人であるNECの元木顕弘氏の監修を受けています。

 OpenStack Foundationは2015年10月15日、OpenStackの新たなリリース、OpenStack Libertyの提供開始を発表した。OpenStack Libertyは、全般的にパフォーマンス、拡張性、安定性、管理性の向上のための、おびただしい数の改善および新機能を搭載している。特にコンテナーおよびネットワーキングへの取り組みが目立つ。以下では、そのうちの一部を抽出して紹介する。

コンピュート

 Novaでは、大規模運用を容易にするため、仮想インスタンスをcellという、より小さな単位にグルーピングすることができる。このcellグルーピングの正確性とメンテナンス性を向上するNova Cells v2が開発中だ。そのリリースに向け、Libertyでは必要な変更が組み込まれた。

コンテナー関連

 コンテナー関連では、MagnumがLibertyで最初のリリースを迎えた。これは、仮想マシンあるいはベアメタルサーバーへの、コンテナーオーケストレーション環境の導入を自動化できる機能。Libertyリリースでは新たに、Kubernetes、Docker Swarmに加えてMesosをサポートした。また、Kubernetesのマルチマスター構成による導入に対応することで、その可用性を向上できるようになった。

 コンテナーでは、ネットワーキングも重要な課題となっている。NeutronのサブプロジェクトとしてKuryrが誕生し、コンテナーとOpenStackの橋渡しをしようとしている。Dockerでは、libnetworkというシンプルなAPIが提供されるようになった。Kuryrでは、このlibnetwork APIとNeutron APIを連携させる働きをし、コンテナーと仮想インスタンスが同じ形でネットワークに接続されているように見せる。これにより、Neutronに対応したネットワーク製品は、自動的にDockerに対応できるようになる。

 Kuryrにより、OpenStackが目指している、仮想インスタンス、 ベアメタル、コンテナーを同一のAPIで扱えるという世界が、ネットワークにおいても実現されると期待できる。

ストレージ

 ブロックストレージのCinderでは、仮想イメージのキャッシング機能が追加され、高速なボリューム作成が可能になった。また、ボリューム移行に関する様々な改善が実施された。バックアップでは、ボリュームの利用を継続したままでバックアップを実行できるオプションが加わった。オブジェクトストレージのSwiftでは、特に低速ドライブが存在する場合のパフォーマンスが向上した。また、イレイジャーコーディングに改善が加えられた。

ネットワーキング

 ネットワークプロジェクトNeutronでは、上述のKuryrをはじめ、レイヤー2ゲートウエイ、Service Function Chainingなど、さまざまなサブプロジェクトが積極的に生み出されるようになった。これは「Neutron Stadium」と呼ばれている。

 Neutronでは、QoS APIの提供が開始された。その最初の機能となっているのが帯域制御機能。仮想インスタンス単位で帯域幅の上限を設定できるようになった。ただし、これはまだ実験的機能の色彩が強い。

 IPアドレス管理では、多様なIPアドレス管理機構を切り替えて使えるようになった。また、ロールベースのアクセスコントロール(RBAC)で、ネットワークを「テナント専用」「全体で共有」の二者択一ではなく、そのネットワークを共有するプロジェクトを指定できるようになった。

 さらに、スケーラブルな負荷分散機能の開発を目指すプロジェクト「Octavia」が実験段階を終え、最初の本格的な実装がリリースされた。Neutron LBaaS v2 APIと統合されており、LibertyリリースからはOctaviaがLBaaS v2のデフォルトのバックエンドとなっている。

 既存機能の改善も着実に実施されており、IPv6やレイヤー3 HA機能などの実用性が向上している。また、OVSエージェントの再起動がデータプレーンのトラフィックに影響を与えずに行えるようになった。

 また、Neutronに関連して、「Astara」というプロジェクトが生まれている。これはレイヤー3以上を対象とするネットワークオーケストレーションのプロジェクト。それ自体がルーター、負荷分散、ファイアウオールの機能を備えるが、他のルーターなどとも連係する。レイヤー2ネットワーク、すなわちOpen vSwitch、Linux Bridge、およびレイヤー2オーバーレイには関与しない。つまり、Neutronには、各種ネットワークサービスが個々にエージェントを通じてプラグインするが、Astaraはそのうちレイヤー3以上のネットワークサービスのエージェントを代替する。実質的に、一部のSDNコントローラーの機能を代替する側面がある。

OpenStackデプロイメント

 新プロジェクト「Kolla」は、コンテナー技術を用いて、OpenStackの各種サービスコンポーネントを提供することで、OpenStackの導入やアップグレードを簡単にすることを目指している。つまり、OpenStackの各種サービスをコンテナーとして動かすようになっている。現在はDocker、Kubernetesを使っているようだ。

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