ウィンドリバーがIoTデバイス/ゲートウエイ向けOSに加え、クラウドベースの開発・テスト環境を無償で提供。デバイス管理プラットフォームの利用拡大を狙う。
ウィンドリバーは2015年11月3日、IoT向けプラットフォームの拡充を発表した。
具体的には、IoT機器向けのフットプリントが小さなリアルタイムOS「Rocket」、IoT機器とクラウド環境を接続するゲートウエイ機能を提供するOS「Pulsar Linux」の二つの新しいOSに加え、既存クラウド環境でデバイス管理を行う「HelixCloud」にSaaS型の開発環境「Helix App Cloud」、テスト環境「Helix Lab Cloud」を追加した。いずれも無償で提供される。
Rocketは、インテルおよびARMのMCUに対応するリアルタイムOS。フットプリントは4Kバイトの「Nano Kernel」と8Kバイトの「Micro Kernel」から選択できる。シリアル接続、イーサネット接続やBluetooth、Wi-Fi接続機能を標準で持っており、Helix App Cloudを始め、クラウドプラットフォームへの接続が容易な点が特徴。
Pulser Linuxは、Wind River Linuxをベースに、バイナリで提供される(ユーザーが独自にソースコードからバイナリ生成することも許容している)。こちらは32ビットMCUから64ビットCPUまで対応する。Pulser Linuxではユーザー空間にアプリケーションコンテナーを持つことができる。このため、どのターゲットデバイス向けのアプリケーションであっても、コンテナー上で動作させられるとしている。
両OSは、プラットフォーム非依存であるとし、インテルの「Galileo Gen2」の他、フリースケールの「Freedom-K64F」にも直近で対応予定。将来的にはRaspberry Piなどにも対応する予定だとしている。
IoTプラットフォームを考えたとき、大量のデバイスへのアプリケーションデプロイは効率化すべき点の一つだ。Helix Cloudのうち、既にリリースされていたHelix Device Cloudは、こうしたIoT機器のプロビジョニングやアプリケーションデプロイを、セキュリティを担保した上でクラウド環境で一括管理するサービスとして位置付けられる。2014年に発表したHelix Device Cloudでは、IoTデバイスを管理する際、ルールエンジンを使った設定が可能になっている点が特徴。
今回新たに発表されたHelix App Cloudは、SDKなどを含む開発環境をWebアプリケーションとして提供する。これにより、例えばグローバルな開発体制を採る組織や、外部のデベロッパーとの共同作業が効率的に行えるようになる。
また、Helix Lab Cloudは、大量のデバイスを使ったテスト環境を物理的にセットすることが難しいというIoTならではの課題を解消する意味を持つ。実際のIoT機器にアプリケーションをデプロイする前に、複数の機器を使った動作をシミュレートできる。こちらも、組織を越えた共同作業が可能だ。
Helix Cloudに含まれる三つのサービスはオンプレミス環境に導入し、独自に運用することができる。
今回、ウィンドリバーがOSや開発・テスト環境の無償提供に踏み切った背景には、「IoTプラットフォームの普及を目指し、Helix Device Cloud上での管理デバイスを拡大し、市場シェア獲得を図る狙いがある」(米ウィンドリバー プロダクトマネジメント担当副社長 ディニア・ダスツール氏)という。
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