「HPE、Microsoft Azureでマイクロソフトと提携」の文脈Cloud Service Brokerサービスも発表

米ヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)は2015年12月1日、同社が開催したイベント「Discover 2015 London」で、Microsoft Azureを優先パブリッククラウドサービスとすると発表した。だが、この発表は、文面ほど単純ではない。

» 2015年12月07日 08時00分 公開
[三木 泉@IT]

 米ヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)は2015年12月1日、同社が開催したイベント「Discover 2015 London」で、HPEがMicrosoft Azureの販売を強化することで、米マイクロソフトとの新たな提携を結んだと発表した。

 発表文では、「パートナーシップを拡大し、Microsoft AzureをHPEの顧客にとっての優先(a preferred)パブリッククラウド提供者とし、一方でHPEはマイクロソフトのハイブリッドクラウド製品のためのインフラ提供で、優先(a preferred)パートナーとなる」と表現されている。

 これに関連して、HPEは「HPE Hyper-Converged 250 for Microsoft Cloud Platform System Standard(以下、HC 250 for Microsoft CPS Standard)」というハイパーコンバージドインフラシステムを発表した。ただし、今回の提携の象徴としてのこの製品自体の意味が、非常に大きいとはいえない。

 Microsoft CPSとは、Azureと連携してハイブリッドクラウドを構築するためのコンバージドインフラシステムとして、マイクロソフトが提唱する設計。具体的には、Windows Server 2012 R2、System Center 2012 R2、そしてAzureと同一のユーザーインターフェースを提供するポータルソフトウエアのMicrosoft Azure Packを搭載するものだ。「CPS Premium」と「CPS Standard」がある。Premiumは4ラックまで拡張できる中〜大規模向け製品で、Standardは16コンピューターノードまで拡張できる、小〜中規模向け製品。

 HC 250 for Microsoft CPS Standardは、その名の通り、CPS Standardに基づく製品だ。だが、米デルはすでに、CPS Standardに基づく製品を販売している。つまり、CPS Standard製品としてHPEは初めてではない。ただし、デルはストレージに「Dell Power Vault MD 1400」という外付けのストレージ装置を使っている。一方、HC 250 for Microsoft CPS Standardは内蔵HDD/SSDを利用する、いわゆるハイパーコンバージドインフラシステムで、この点が異なる。また、デルはCPS Standardに加え、CPS Premiumに準拠した製品を販売している。従って、CPS対応という点で、現時点ではデルのほうが勝っているという言い方もできる。

HC 250 for Microsoft CPS Standardは、HP ConvergedSystem 250-HC StoreVirtualと同一

 また、HC 250 for Microsoft CPS StandardのHPE側のハードウエアおよびソフトウエアは、マイクロソフトのために新たに開発したものではない。すでにVMware vSphereを搭載して販売している「HP ConvergedSystem 250-HC StoreVirtual」を転用したものだ。新製品はソフトウエアとして、ハードウエアに関する設定(プロビジョニング)の自動化、統合監視などの機能を提供する「HPE OneView」というツールを基にした「HPE OneView for Microsoft System Center」を搭載するが、OneViewはOpenStack、VMware vCenterとも連携している。Puppet、Ansibleなどとの連携も進めている。そして、vSphere用のHP ConvergedSystem 250-HC StoreVirtualには、OneViewのvCenterプラグインを搭載している。

5000人のAzureクラウドアーキテクトを追加養成

 今回の提携発表では、他に注目できるポイントがある。

 第一はHPEのグローバルサービスで、今後5000人ものAzureクラウドアーキテクトを養成するとしていること。第二は、あらゆるサーバーで、Azureの利用を拡大するとしていること、第三は、Azureに加え、Microsoft Enterprise Mobility Suite(EMS)、Office 365を販売していくとしていることだ。

HPEはクラウドサービスブローカーのサービスも発表

 一方で、オンプレミスのWindows Server/System Centerと、Azureの組み合わせだけがハイブリッドクラウドではないということを理解している証拠として、HPEは今回のイベントで「HPE Helion Managed Cloud Broker」というサービスを2016年に提供開始すると発表した。

Managed Cloud Brokerサービスでは、オンプレミス、社外クラウドの各種環境を統合運用できる

 これはHPEが提供するクラウド統合運用支援サービス。複数のオンプレミス環境、社外クラウド環境を統合的に運用できる。単一のポータルを通じた各種の環境の操作、各環境の利用状況やパフォーマンスの把握、セキュリティの統合管理、コンプライアンス管理、カタログ/契約管理などが一括してできるという。

 同サービスの管理対象としては、VMware vSphere、HPE Helion CloudSystem、HPE Helion OpenStackなどのオンプレミス環境、HPE Managed Private Cloud、Azure、AWSなどが挙げられている。関連して、HPE Managed Private Cloudでは、OpenStackのベータ提供が開始されている。これについては別記事をお読みいただきたい

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