RDBでデータを操作する言語が「SQL」です。その仕様は国際標準となっており、RDBの普及を強く支えています。今でも進化を続け、次期版の標準となる予定の「SQL2016」はどうなるのか。“ドクターSQL”こと日本データベース学会副会長の土田正士氏に話を聞きました。
RDB(リレーショナルデータベース)でデータを操作する言語、「SQL」は国際標準として定められており、改訂された年表記を組み合わせて「SQL92」「SQL:2008」などと表記されます。RDB製品ならば、どのSQL標準に準拠しているのかが仕様として明示されています。
このSQL標準は現在も進化を続けており、次期版の「SQL2016」も2016年のリリースが予定されています。SQL2016は何が変わるのでしょう。今回は、日本における策定のキーパーソン、“ドクターSQL”こと土田正士氏と日立製作所の小寺孝氏に注目ポイントを聞きました。
「SQL標準は、ISO(国際標準化機構)とIEC(国際電気標準会議)の第一合同技術委員会“JTC 1(Joint Technical Committee 1)”で進められます。このISO/IEC JTC 1は情報技術分野の標準化を行うための組織ですが、その中のデータ管理および交換に関する規格を議論する“SC 32(Subcommittee 32)”の参加者が新たな機能を提案し、協議し、投票を経て、SQLの標準機能に組み込まれます」(土田氏)
2015年10月、次期版の会議が東京で開催されました。2015年12月現在、この次期版の最終仕様がほぼ固まった段階にあるといいます。2016年に制定されるので、この次期版は「SQL2016」として発表される見込みです。
参加者は、RDBベンダーのいずれかに所属していることが多いようです。日本からは日立製作所 IT基盤ソリューション本部DB部の土田正士氏(情報・通信システム社 ITプラットフォーム事業本部 サービスイノベーション統括本部)や小寺孝氏(同)らが参加しています。ちなみに土田氏は日本データベース学会副会長も務め、SQLに精通する“ドクターSQL”と呼ばれる世界的なスペシャリストです。小寺氏はSQLファミリ規格のSQL/MM(Multimedia and Application Packages)のプロジェクトエディターを務めています。投票は国ごとに1票が割り当てられます。米国には、IBMやオラクル、マイクロソフトなどのRDBの超大手ベンダーがありますが、投じられるのは同じく一国1票だそうです。
SQL標準は時代背景を反映しています。近年は、Javaやオブジェクト指向、XML、ビッグデータなどの処理に適するよう機能を追加しています。また、現場からの要請を考慮しているのも特徴です。
「標準や規格というと、標準的な機能として定まったものが製品へ実装されるイメージがあるかもしれませんが、SQL標準は必ずしもそうではありません。先行して製品へ機能を盛り込んだベンダーからの意見を取り入れて、それが標準として追加されるケースもあります。現場の需要や使用実績のある機能がSQL標準に盛り込まれ、他社の製品にも波及するという流れです」(土田氏)
例えば、マイクロソフトの「SQL Server」。土田氏は「標準策定メンバーにマイクロソフトはいませんが、次期バージョンのMicrosoft SQL Server 2016に(現時点で最新のSQL標準である)SQL2011の機能が盛り込まれると聞いたときはうれしかったです」と話していました。他にもオープンソースのRDBでは「PostgreSQL」が積極的にSQL標準を取り込んでいます。
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